調停で離婚について合意できたものの,親権者について合意ができない場合の対応

【質問】

現在,調停で離婚の話を進めています。

離婚することについては夫と合意できたのですが,夫は一人息子の親権者は自分だと言って譲りません。

ですが,私も子どもの親権を渡したくはありません。

今後,どのように進めればよいのでしょうか。

 

【回答】

夫婦が離婚する際には,未成年者の子の親権者を必ず定めなければなりません。

親権者の指定のない離婚届は受理されません。

これは,調停離婚であっても同様です。

したがって,ご質問のケースのように,離婚だけ合意しても,子どもの親権者が決まらない以上,調停離婚は成立しないとして,改めて離婚訴訟を提起することも考えられます。

ですが,このような方法は煩雑であるとして,当事者双方に異議がなければ,合意している離婚のみを調停で成立させ,離婚した後に,親権者については家庭裁判所の審判で定めてもらい,親権者指定届けを提出するという方法もあります。

考えられる方法を整理すると,以下のように分類できます。

 

① 離婚調停を一括して不成立として,離婚訴訟を提起する方法

離婚調停で親権について合意できない以上,離婚調停を成立させる余地がないとして,あるいは当事者が離婚と親権者指定を分離することを望まない場合などには,調停そのものを全部不成立として終了させ,改めて離婚訴訟を提起し,附随処分として親権者の指定を求めることになります。

この方法は,争点ではない離婚原因などを改めて公開の場で審理することになり,紛争の実体とかけ離れた解決を当事者に求めるものであり,当事者の意思に反するばかりか,訴訟経済上も望ましいことではありません。

その上,親権者の指定につき深刻な対立がある場合の審理は,訴訟手続きよりもむしろ家庭裁判所の後見的機能による処理により適しているとも考えられます。

 

② 離婚について審判(24条審判)による方法

次に,家庭裁判所が家事調停委員の意見を聴き,調停の経過なども反映させて,職権で調停に代わる離婚の審判をし,その中で子の親権者を指定することが考えられます(家事審判法24条)。

実務でも,この方法をとる例があります(大阪家審昭50・3・17家月28・3・83)。

この方法であれば,①で述べた問題点は解決できますが,24条審判は,異議の申立によってその効力を失います(家事審判法25条1項・2項)。

異議申立がされれば,せっかく合意している離婚についての効力まで否定され,結局,訴訟で解決せざるを得ません。

 

③ 離婚手続きと親権者指定の手続きを分離する方法

次に,調停の当事者が離婚と親権者指定を分離してもよいとの意向を有している場合には,離婚についてだけ調停を成立させ,親権者指定については調書に審判で定める旨を記載して,後日審判で指定をするという方法も考えられます。

具体的には,調停条項として,「申立人と相手方とは,調停により離婚する。当事者間の長男(長女)○の親権者については合意ができないので,後日○家庭裁判所の親権者指定の審判によりその指定を受ける。」旨記載します。

 

このように,いくつかの方法が考えられますが,いずれの方法によるべきかは具体的な事案によって異なりますので,慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

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