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【コラム】離婚の動機・事由2 不貞行為の定義と種類
1 不貞行為とは
不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を持つことをいいます。一般的には、「浮気」や「不倫」と呼ばれる行為のことです。
不貞行為と「浮気」「不倫」の違いは、不貞行為が民法770条第1項第1号に定められている法律用語であるのに対して、不倫・浮気はそうではないといった点です。
また、その他の点での違いは、例えば、異性と食事をした程度でも「浮気」「不倫」と捉えられることもありますが、不貞行為は性的関係を持っていることが前提になります。
従って、配偶者が自分以外の異性と手をつないだ、ハグをしたというだけでは不貞行為にはあたらないことになります。
2 種類
不貞行為にはどんな種類があるのでしょうか。以下、具体的にご説明いたします。
(1)酔った勢いでの性的関係
酔った勢いで一度だけ配偶者以外の異性と肉体関係を持っただけでも、不貞行為となります。恋愛感情を持つことなく、お酒の勢いで行為に及んだとしても、貞操義務に反した行為をしていることには違いがないからです。
ただし、裁判で不貞行為を離婚理由として認めてもらうには、ある程度継続的に不貞行為を行っている事実がなければ難しく、1回のみの不貞行為を理由に、離婚が認められたケースはほとんどありません。
(2)風俗店での性的関係
風俗店での性的関係も不貞行為にあたりますが、酔った勢いでの性的関係と同様に1回のみで、離婚が認められることはほとんどありません。
ただし、何度話し合っても風俗通いをやめてもらえない場合などには「婚姻を継続し難い事由」になり離婚請求ができる可能性があります。
(3)肉体的な関係を伴わない異性との関係
配偶者が自分以外の異性と肉体関係を伴わずに精神的な結びつきを築いているような場合は不貞行為にはあたりません。
このような関係の方が、受けるダメージは大きいかもしれませんが、肉体関係を伴わない異性との関係は、不貞行為が対象としている範囲には含まれないので、不貞行為を理由とした救済はされないということになります。
しかし、「悪意の遺棄」や「婚姻を継続しがたい事由」として、救済の可能性があります。
(4)同性愛の場合
同性愛の場合は、不貞行為にはあたりません。不貞行為はあくまで異性間での性的行為が対象になっており、「性交」を行うことができない同性間での性的行為は不貞行為に該当しないということになります。
ただし、この場合も他の理由で救済を受けられる可能性があります。
(5)強姦の場合
強姦された場合については不貞行為とはなりませんが、強姦した場合は、不貞行為になります。
なお、強姦ではありませんが、強引に誘われて断りきれずに性的関係を持ってしまったような場合は、強要されたとは言えず不貞行為にあたる可能性があります。
(6)同棲中に浮気した場合
原則として不貞行為にはあたりません。不貞行為は、婚姻関係にある男女の貞操義務に違反する行為を指しますので、単に交際中の男女の場合には、不貞行為は発生しないことになります。
ただし、その男女関係が、婚姻届を提出していないだけで、実質的に婚姻関係と同様の関係(内縁関係)となっていた場合は別です。
このような内縁関係が成立している場合は、法律上、婚姻同様の権利・義務が課されますので、貞操義務も課され、不貞行為となります。
(7)別居後の性的関係
別居後の性的関係は、不貞行為になる場合とならない場合があります。
夫婦関係が完全に破綻して別居に至っている場合は、別居後に不貞行為をしたとしても離婚原因となることはありません。
しかし、夫婦関係が完全に破綻しているとは言えない場合、例えば相手がまだやり直せると考えて夫婦関係を修復しようとしていた場合などは、不貞行為だと判断されることになります。
尚、関連条文は以下のとおりです。
民法第770条(裁判上の離婚) ①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
②裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。 |
3 まとめ
実際に不貞行為に該当するかどうかの判断が自分だけはできない場合もありますし、不貞行為該当するとなった場合、次にどうのようなアクションを起こせばいいのかわからないこともあると思います。
また、裁判になった場合に、不貞行為を証明するためには「性行為の存在を確認ないし推認出来る証拠」を確保する必要がありますが、何をどのように収集したらかわからないこともあるでしょう。
そのような場合、一人で悩まずにまずは弁護士にご相談ください。
当事務所では茨城県全域に渡り対応しております。安心して地域の弁護士にお任せください。
【コラム】離婚の動機・事由1 典型的な離婚理由
1 離婚になる理由
仲の良かった夫婦が離婚を決意するには、何らかの理由があります。統計によっては多少の男女差はあるものの大体が以下のような理由になります。
(1)性格の不一致
一番多いのは、性格の不一致になります。
相手が何か悪いことをしたわけではないけれど、どこか許せない、趣味も合わず会話も面白くなく、一緒にいることが苦痛である等、性格が合わないと感じる要因は様々です。
恋人同士でいる間は楽しかったけれど、いざ家庭を作り一緒に暮らしてみたら、金銭感覚、教育方針、親族づきあい等の感覚や意見が合わないことがわかったということもあります。
こういった感覚や意見のずれがあると喧嘩が多くなり、夫婦間の溝がどんどん深くなる恐れがあります。
(2)配偶者からの暴力(肉体的な暴力、精神的な暴力)
日常的に繰り返される暴力はもちろん、たった一度であっても離婚の理由になることがあります。
裁判になった場合には、暴力の程度や動機、その他の言動など様々な要素を考慮して判断していきます。
なお、暴力とは、殴る蹴る等の肉体的な暴力だけはありません。相手の心に深い傷を負わせるような言葉の暴力(モラルハラスメント)や、その他の手段で相手に対して精神的なダメージを与える場合も含まれます。
(3)配偶者以外の異性との関係
浮気や不倫など、配偶者以外の異性との関係も離婚の理由として挙げられます。
配偶者が自分以外の異性と性的な関係を結んでいたような場合は、相手のことが信じられなくなりますし、どうしても許せないとなると婚姻を継続していくことが難しくなってしまいます。
そのため、浮気や不倫が夫婦の一方にあったことが発覚すると、その夫婦関係を破綻させかねない重大な問題になります。
(4)お金の問題(生活費を入れてくれない、配偶者の借金問題、浪費癖等)
夫婦の場合、財布が一つになっている場合もありますし、妻側が専業主婦である場合などは夫が生活費を入れてくれないということは死活問題になってしまいます。
また、配偶者が度重なる借金をしているような場合、払いきれずに取り立て屋に追い回されたりして自分自身の生活も脅かされることがあります。
配偶者の責任で最低限の生活すらできないとなると、夫婦関係も悪化し、婚姻生活の継続も困難になります。
(5)親族関係
嫁姑関係など、配偶者の親族との折り合いが悪いということも、よく聞く問題です。
はじめは配偶者の親族とだけうまくいかなくても、配偶者がこの問題に無関心であったり、自分の親族の話だけを聞くような姿勢だったりすると、円満な夫婦関係を継続することができず、離婚の理由になったりします。
2 裁判で認められる離婚原因
お互いに話し合って円満に夫婦関係を解消する協議離婚の場合は、当事者同士の合意によるものになりますので、理由が何であれ離婚をすることができます。
相手が離婚を受け入れてくれない場合には、家庭裁判所での調停を経たうえで裁判により解決していくことになります。
では、裁判になった場合に認められる離婚原因としては、どのようなものがあるのでしょうか。
(1)法定離婚事由
民法第770条第1項によると、裁判所で離婚が認められるためには、下記の事由(法定離婚原因)が必要とされています。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
(2)各事由について
1 不貞行為
不貞行為とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。
不貞行為は、配偶者に秘密に行われることが多いので、立証は容易ではありません。証拠収集作業としては、写真、録音、メール、電話の履歴の収集がありますが、方法によってはプライバシーの侵害にあたったり、違法な証拠収集となったりしますので、注意が必要になります。
2 悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく、同居・協力・扶助義務を履行しないことをいいます。
正当な理由は、別居した目的、相手方の生活状況、送金状況、別居の期間等を総合的に考慮して判断されることになります。
3 3年以上の生死不明
3年以上の生死不明とは、3年以上ずっと生きているか死んでいるのかわからない状態が続いていることをいいます。
4 強度の精神病
強度の精神病とは、その精神障害の程度が夫婦の相互協力義務を果たせないのほどに達している場合をいいます。
5 その他の重大事由
婚姻関係が破綻して、夫婦としての共同生活の回復の見込みがないことを意味しますが、具体的には以下のような場合が挙げられます。
- 暴行・虐待等
- 重大な病気・障害
- 宗教活動
- 勤労意欲の欠如・借金等
- 犯罪行為等
- 性交不能等
- 親族との不和
- 性格の不一致等
いずれの場合であっても、状況や程度、回復の見込みの有無等、様々な要素を総合的に考慮して判断されることになります。
3 まとめ
「まだ、離婚するかどうかはわからない」「自分たちで円満に解決したい」とお考えであっても、不安なことがあれば一度ご相談ください。早めに弁護士に相談することで、正しい知識と安心を手に入れることができます。離婚手続だけはなく、話し合いや証拠収集についてもアドバイスすることが可能です。
離婚は人生の中でも大きな問題になりますので、安易な解決をして後々後悔しないよう、落ち着いて適切な方策をとっていくことが重要です。
また、些細なことでも相談できるよう身近な法律事務所を選択することをお勧めします。茨城県で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。