歯科医師に特有の離婚問題

歯科医師の特徴

離婚問題は、家族関係の精算だけではなく、財産関係の精算という面もあります。

財産関係の精算という観点からは、夫婦それぞれの職業が影響することが少なくありません。

夫婦のいずれかが歯科医師の場合、歯科医師特有の離婚問題を検討する必要があります。

そもそも、歯科医師は、一般的な会社員よりも平均年収が高い傾向にあります。

統計データによっても異なりますが、歯科医師の平均年収は1200万円前後とされるものもあります。

近年は歯科医師数の増加に伴い、競争が激化し、平均年収も減少傾向にあると言われてはいますが、なお一般会社員等と比較すれば高水準であるといえます。

さらに、歯科医師で開業に成功し、インプラント等の専門性の高い分野に精通することができれば、より高い収入を得ることも期待できます。

 

歯科医師特有の離婚問題の留意点

1 医療法人を運営している場合の財産分与

独立開業している歯科医師の方の場合、医療法人を設立して歯科医院を経営していることもあります。

このように、歯科医師個人が歯科医院を経営しているのではなく、医療法人が経営している場合には、離婚の当事者である歯科医師個人と医療法人は異なるため、医療法人名義の財産が財産分与の対象となるわけではないことになります。

したがって、医療法人に多額の財産があるとしても、原則として医療法人名義の財産が財産分与の対象になるわけではないということに注意しなければなりません。

もっとも、歯科医師個人が理事長として医療法人に多額の金員を貸し付けていたり、出資持分を有したりしている場合には、貸付金や出資持分は歯科医師個人の財産にあたるため、財産分与の対象となります。

 

2 財産分与の寄与度の修正

財産分与の分割割合は、一般的には2分の1ずつの折半となります(いわゆる「2分の1ルール」)。

もっとも、財産分与の分割割合は常に2分の1となるわけではなく、個別の事情によって修正されることもあります。

例えば、夫が高収入であったために多額の資産を形成することができた場合には、夫側により多くの財産が分与されるように財産分与の割合が修正されることがあります(福岡高判昭和44年12月24日)。

 

3 退職金制度の有無

歯科医師は個人事業主であるために、退職金制度はないと思われる方も少なくありません。

しかしながら、医療法人を設立しているような場合には、節税対策の観点から、理事長である歯科医師にも退職金制度を設定していたり、退職金代わりに保険金を掛けたりしているケースもあります。

したがって、歯科医師であるからといって、退職金制度がないものと決めつけず、事前に調査をしておく必要があります。

 

4 配偶者の雇用関係の問題

歯科医師のように事業主として歯科医院を経営している場合、配偶者を歯科医院の従業員として雇用していることも少なくありません。

このようなケースでは、離婚に伴い当然に歯科医院での雇用関係も終了すると思われる方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。

夫婦間の離婚問題と、歯科医院との雇用関係(労働関係)は全く別個の問題です。

したがって、夫婦が離婚したからといって、他方配偶者を解雇することは許されませんので注意が必要です。

もっとも、離婚後も同じ職場で働き続けることは、双方にとって負担が大きいことが一般的です。

できれば、離婚とともに、雇用関係についても精算できるように話し合っておく必要があります。

 

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