夫婦のどちらか,または両方が公務員である場合の離婚については,会社員の方の場合とは違った問題があります。
それは,民間の会社員の場合に比べて,公務員は収入等が安定していることから,財産分与等でより多くの財産を獲得することができる可能性が高いということです。
財産分与
財産分与は,婚姻期間中に夫婦で築いた財産の清算です。
一般的には,民間の銀行やゆうちょ銀行の預貯金が主な財産分与の対象となります。
一方,公務員の場合には,共済組合に加入しますので,共済組合の貯金を利用することができますが,この共済組合の貯金の利率が民間の銀行に比べてとても高いことに注意が必要です。
たとえば茨城県市町村職員共済組合の場合には,年利1.68%です。
一般の都市銀行やゆうちょ銀行の1年ものの定期預金では0.01%ですから,これは相当に高い利率であることが分かります。
このように,公務員と離婚する場合には,共済組合の貯金を財産分与の対象とすることを必ず検討しなくてはいけません。
退職金
退職金の性質は給料の後払いです。そのため,退職金も原則としては財産分与の対象となるといえます。
ただ,将来の退職金については,勤務先の倒産,経営不振による減額,本人の事故や病気等,不確定な要素があるため,実際に受け取ることができるかどうかは確実ではありません。
そこで,将来退職金を受け取る蓋然性が高い場合には,財産分与の対象となるとされています。
公務員の場合には,雇い主は国または地方公共団体ですから,将来倒産してしまうことはまず考えられません。
そのため将来退職金を受け取る蓋然性が高いといえます。
ただ,問題は,何年先の退職であっても財産分与の対象となるのかです。
これについては裁判所の判断に委ねられており,一概に言うことはできませんが,退職が10年以上先の場合であっても財産分与の対象とされた例もあります。
この点については,弁護士と相談して確認しておくべき事項といえます。
年金
一般の会社員の場合は厚生年金が分割の対象となりますが,公務員の場合には国家公務員共済年金や地方公務員共済年金が対象となります。
そのため,年金分割のために必要な情報通知書の請求は,各共済組合になります。
この点も間違えないようにする必要があります。
まとめ
以上のように,公務員の離婚の場合には,一般の会社員の場合とは異なる特殊性があるといえます。
当事者のいずれかが公務員の場合には,その特徴を踏まえて,事前に弁護士に相談しておくことをおすすめします。