離婚の手続き

第1 離婚の種類

離婚の種類には,①協議離婚,②調停離婚,③審判離婚,④裁判離婚(和解離婚,請求の認諾)があります。

① 協議離婚は,夫婦がその協議で離婚するものです。

② 調停離婚は,家庭裁判所の調停によって離婚するものです。

③ 審判離婚は,調停が成立しない場合に,家庭裁判所が行う調停に代わる審判(家事審判法24条)によって離婚するものです。

④ 裁判離婚は,調停が不成立になり,離婚審判もされなかった場合に,家庭裁判所の判決によって離婚するものです。

これらの離婚の中でもっとも多いものが①協議離婚(全体の約9割)になります。
以下,②調停離婚,④裁判離婚,③審判離婚と続きます。
なお,実務上,③審判離婚はほとんどありません。
審判離婚は,当事者が2週間以内に異議申立をすると失効してしまうため,実効性に疑問があるからです。
また,④裁判離婚も,多くは和解による解決であり,判決による離婚は前離婚事件の約1%程度にすぎません。

第2 調停前置主義

人事訴訟事件は,調停前置主義がとられています。
したがって,調停を経ずに離婚訴訟を提起した場合,まずは付調停になります(家事審判法18条2項)。
なお,仮に以前調停を一度していたとしても,不調で終了した時期が数年前という場合には,付調停となるので注意しましょう。
調停が不成立となると,訴訟が再開されます。

但し,調停前置主義にも例外はあります。
調停に付すことが適当ではないと認められる場合,例えば相手方が生死不明や行方不明だったり,心神喪失の状態にあったりする場合は,調停を経ずに,直接訴えを提起することもできます。
調停が取り下げで終わった場合も,調停で実質的に離婚の話合いがなされていれば,調停前置の要件を満たしたと認められ,離婚訴訟を提起することができます。

第3 各離婚手続のメリット・デメリット

1 協議離婚のメリット・デメリット

協議離婚のメリットは,夫婦が合意すれば法定離婚事由(民法770条1項各号)が不要な上,費用もかかりません。

一方,デメリットとしては,当事者間での話合いとなるため,中立・公平性に欠ける合意となるおそれがあること,面接交渉権や財産分与,慰謝料等,離婚条件についての取決めが不十分なまま合意してしまい,後日紛争が蒸し返されるおそれがあります。

2 調停離婚のメリット・デメリット

調停離婚のメリットは,夫婦の合意は必要ですが,法定離婚事由は不要であるということです。また,協議離婚と違い,調停には調停委員会が関与するので,不当・不公平な離婚を避けることができます。さらに,調停調書の記載が債務名義になるため,現実に離婚条件を守ってもらえることが期待できます。加えて事案に応じた柔軟な取決めも可能です(例えば,夫婦が協力して得た唯一の財産がオーバーローンの不動産の場合,判決では財産分与の対象はゼロですが,調停では当事者がどのように決めることも可能です。)。

一方,調停離婚のデメリットは,結局お互いの合意ができなければ不成立で終わってしまう,ということです。また,協議離婚と異なり,調停手続きを利用するための経済的・時間的負担が生じます。

3 裁判離婚のメリット・デメリット

裁判離婚のメリットは,法定離婚事由があれば,相手方と離婚について合意できなくとも離婚ができるという点です(なお,相手方と離婚の合意ができなくとも離婚する方法として,「審判離婚」があります。ですが,「審判離婚」は実務上ほとんど利用されないため,割愛します。)。

また,調停離婚同様,判決や裁判上の和解が債務名義になるため,現実に離婚条件を守ってもらえることが期待できます。

裁判離婚のデメリットは,他の方法と比べ,経済的・時間的負担が大きいことです。また,他の方法よりも,柔軟な解決が図りにくい,ということが挙げられます(但し,この点については裁判上の和解を利用することでカバーすることができます。)。

協議離婚 調停離婚 裁判離婚
メリット 法定離婚事由不要
時間的・経済的負担 小
法定離婚事由不要
調停委員会の利用
債務名義の取得
柔軟な解決
合意 不要
債務名義の取得
デメリット 中立・公平性欠く
紛争蒸し返しのおそれ
合意 必要
経済的・時間的負担 中
経済的・時間的負担 大
柔軟性欠く

第4 協議離婚

当事者双方に明確な離婚意思があり,離婚に向けた協議を進めることがご希望である場合は,財産分与,慰謝料,養育費等を取り決めるため相手方配偶者と示談交渉を進めます。

合意ができた場合は,離婚協議書を作成し,養育費や離婚後扶養など分割払いの給付がある場合は,履行確保のための公正証書を作成します。

より詳しく知りたい方は,「協議離婚の流れ」をご参照ください。

第5 調停離婚

協議離婚の合意ができない場合は,夫婦関係調整調停の申立をします。
場合によっては夫婦関係解消調停ではなく,夫婦関係円満調整調停の申立をします。

どちらも夫婦関係調整調停であるため,円満調整調停を申し立てても,調停中に夫婦関係解消に変えることはあり得ます。

より詳しく知りたい方は,「調停離婚の流れ」をご参照ください。

第6 審判離婚

調停を試みたものの成立しない場合には,調停に代わる審判離婚を求めるという方法もあります。
但し,実務上,審判離婚が行われることはあまりありません。

第7 裁判離婚

調停が成立しなかった場合は,離婚原因が存在すること,立証方法があることを確認した上で,離婚訴訟を家庭裁判所に提起することになります。

離婚訴訟提起と同時に離婚に伴う附帯処分として,財産分与や慰謝料,養育費を請求することができます。

より詳しく知りたい方は,「裁判離婚の流れ」をご参照ください。

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