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不貞慰謝料 ②慰謝料請求の相場と判例

2018-08-01

1 不倫による慰謝料請求の相場

配偶者に不倫をされてしまい、慰謝料を請求する場合、実際にはどの程度の金額を請求できるのかは、関心の強いテーマかと思います。

もっとも、慰謝料の金額は、法律で決まっているわけでもなければ、明確な基準も存在するわけでもありません。

したがって、当事者間で合意できるのであれば、原則として慰謝料の金額は自由になります。当事者間で合意できない場合は、訴訟で解決を図っていくことになりますが、おおよそ「不倫が原因で離婚に至った場合」は、100万~300万円程度、「離婚には至らなかった場合」は、50万~200万円程度が相場であると言われています。なお、個別の事情によって増減がありうることはご了承ください。

 

2 裁判ではどのような事情が考慮されるのか

当事者間で合意できず、訴訟になった場合、裁判所は、様々な事情を総合的に考慮して、慰謝料の金額を算定しています。

では、どのような事情が考慮されるのでしょうか。以下では、いくつかの判断要素を整理いたしました。

 

(1)夫婦間の事情に関するもの

① 夫婦の婚姻期間の長さ

婚姻期間が長いほど、慰謝料は金額が高くなる傾向にあります。

 

② 夫婦の間に未成年の子どもがいるかどうか

夫婦の間に未成年の子どもがいることは、慰謝料の金額を増額事情として考慮されることがあります。

 

③ 夫婦関係が円満であったかどうか

不倫(不貞行為)以前に夫婦関係が破たんしていた場合には慰謝料請求は認められません(平成8年3月26日最高裁判例)。

 

④ 不倫が夫婦関係に与えた影響

不倫(不貞行為)が直接の原因となって夫婦の別居や離婚という結果に至った場合には、別居や離婚に至らなかった場合よりも慰謝料の金額が増額されることがあります。

 

(2)不倫をした当事者間の事情

① 不倫の期間

不倫(不貞行為)があった期間が長いほど、慰謝料の金額は増える傾向にあります。

 

② 不倫の回数

不倫(不貞行為)の回数が多いほど、慰謝料の金額が増えることが多いといえます。

 

③ どちらが主導的であったか

不倫相手の方が主導的・積極的だった場合には、慰謝料を増額する事情として考慮されることもあり、逆に配偶者の方が主導的・積極的だった場合には、減額する事情として考慮されることもあります。

 

(3)不倫が発覚した後の事情

① 不倫が発覚して、やめるように言われても関係を続けていた場合

夫婦の一方から、不倫をしている配偶者に対して不倫相手との交際をやめてほしいと申入れがあったにも関わらず関係を続けているような場合には、増額の事情として考慮されることがあります。

 

② 別れるという約束を破った場合

夫婦間で、不倫をした配偶者が不倫相手とは別れると約束をしたにも関わらず約束を破った場合には、慰謝料を増額されることがあります。

 

3 実際の判例

では、実際の判例にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

(1)平成4年12月10日東京地方裁判所

関係

夫の職場の部下である不倫相手の女性に妻が慰謝料請求

状況

夫が不倫関係を主導していた。不倫解消後、夫婦関係は修復していた。不倫相手は、職場を退職するなど社会的制裁も受けている。

慰謝料

請求:500万円 認められた慰謝料額:50万円

 

(2)平成10年7月31日東京地方裁判所

関係

妻と不倫していた男性に対して夫が慰謝料請求

状況

妻はスナック勤務に勤務していた。妻は夫に対して不満があり、妻が不倫関係に積極的だった。婚姻関係は破綻気味であった。

慰謝料

請求:800万円 認められた慰謝料額:100万円

 

(3)平成28年2月25日東京地方裁判所

関係

夫と不倫関係にあった女性に妻が慰謝料請求

状況

既に夫婦関係は悪化しており、離婚届も準備はされていた。夫は妻以外の女性と不倫関係にあった。妻は、女性に対し、慰謝料1100万円を請求。完全な破綻とまではいえないものの、破綻しつつあったという状況が考慮された。

慰謝料

請求:1100万円 認められた慰謝料額:90万円

 

4 まとめ

「不倫には我慢できない」「不倫相手に慰謝料を請求したい」と思っても一人ではなかなか動きだせないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。自分一人で不倫相手と交渉することができるのか、精神的に辛く、自分で動く気力がないなどとお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談することもご検討ください。

弁護士に依頼することで、不倫相手と直接交渉をすることがなくなりますので精神的な負担も軽減できますし、その後に必要となる示談書の作成や万が一訴訟になった場合の手続きもスムースに行うことができます。

当事務所は、茨城県内に複数の事務所を構えており、県内全域のみならず、県外からも離婚問題や不貞慰謝料請求のご相談・ご依頼を多数受けてきた実績があります。

離婚問題や不貞慰謝料請求のことでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

不貞慰謝料 ①離婚せずに慰謝料請求することの留意点

2018-07-31

1 離婚しなくても慰謝料請求はできるか

配偶者の不倫(不貞行為)が原因で離婚する場合に、不倫をした配偶者やその不倫相手に対して慰謝料を請求するのはよくあることです。離婚しなければ慰謝料を請求することはできないのでしょうか。

そもそも慰謝料は、不倫(不貞行為)という不法行為によって精神的損害を被ったことの損害賠償であるため、離婚をするか否かに関わらず請求することが可能です。

 

2 慰謝料の請求相手は誰か

では、慰謝料の請求相手は誰になるのでしょうか。不倫をした配偶者でしょうか?それとも不倫相手でしょうか?

この点、不倫は、不倫をした配偶者と不倫相手の共同不法行為になりますので、どちらに対しても請求をすることができます。とはいえ、離婚しない場合に、夫婦間で慰謝料のやり取りをしたところで、家庭内でお金が動くにすぎず、あまり意味がありませんので、不倫相手に請求することが多いといえます。

 

3 慰謝料請求の流れ

不倫による慰謝料の請求は以下のような流れで行います。

 

(1)不倫の証拠を集める

慰謝料を請求するには、不倫をしていたという事実が確認できる証拠が必要になります。

 

(2)交渉

証拠がそろったら、慰謝料請求の交渉を開始することになります。

交渉方法は法律等で決まってはいないため、どのような方法を選択するかは、事案に応じて検討する必要があります。

不倫相手に対し、請求者の意思を示すとともに、慰謝料請求をしたという事実を残すためには、内容証明郵便を利用し、慰謝料を支払ってほしい旨とその金額を記載した書面を送ることになります。

慰謝料請求の内容証明郵便に対し、相手がこれに応じるようであれば、示談書等を作成して慰謝料の金額を取り決め、期日までに支払ってもらうようにします。

 

(3)訴訟

当事者同士での話し合いで慰謝料の支払いについて合意に至らない場合は、裁判を起こして慰謝料を請求していくことになります。裁判を起こすには、不倫の内容や、それによって婚姻生活がどのように破壊されたか等を主張し、慰謝料の金額等を記載した訴状と証拠を提出する必要があります。その後、双方で準備書面を提出しあい、主張と反論を繰り返した後、裁判官が判断を下します。

 

4 不貞行為があれば慰謝料が認められるか

不倫の場合ではどんな場合でも慰謝料の請求が認められるのかというと、そういうわけではありません。以下の条件に該当する必要があります。

 

(1)不法行為に当たる必要がある

不倫と言っても、各自の価値観によってイメージはまちまちかもしれません。慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償になりますので、不倫が不法行為に当たる必要があります。

 

(2)不法行為に当たるための要件

基本的には次の3つの要件全てを満たす必要があります。

 

① 不貞行為があること

不貞行為とは、配偶者のある人が配偶者以外と肉体関係を持つことが典型例となります。

 

② 不貞行為に故意又は過失があること

不貞行為のときに相手が婚姻関係にあることを知っていた(故意の場合)か、知らなかったとしても知らなかったことに落ち度がある(過失の場合)ことが求められます。

 

③ 不貞行為よって権利の侵害があること

婚姻期間中に、配偶者の一方が他の異性と肉体関係を持てば、夫婦の平穏や円満を保持するという権利・利益が侵害されることになります。

 

5 離婚しない場合の慰謝料の相場はどれくらいか

慰謝料の金額に決まりはありませんので、当事者同士が合意できるのであれば数十万円から数百万円まで幅広い金額が考えられます。当事者同士での合意が難しい場合には、裁判所の判決に従うことになります。過去の判例をみてみると、離婚しない場合の慰謝料の相場は50万円〜から100万円程度ということもあるようです。

 

6 離婚せずに慰謝料請求をする場合のメリット・デメリット

離婚せずに配偶者の不倫相手に慰謝料を請求する主な目的の一つには、不倫相手と配偶者との関係を断つことが挙げられます。

離婚せずに不倫相手に対する慰謝料請求をするメリットとしては、①金銭的な賠償請求をする、②不倫をした配偶者との繋がりを断つこと、が挙げられます。

もっとも、離婚せずに不倫相手に対する慰謝料請求をするデメリットとしては、①不倫相手と接触する必要がある、②他方配偶者(不倫した配偶者)が不倫相手から求償される可能性がある、ということが挙げられます。

 

7 まとめ

配偶者に不倫されたために、精神的に多大な苦痛を受けた方にとっては、不倫相手に対して慰謝料請求をすることは、精神的な慰謝だけではなく、経済的な慰謝、そして他方配偶者との婚姻生活の平穏を回復するための手段といえます。

もっとも、不倫相手に慰謝料を請求することは、必然的に不倫相手との接触が生じる上、他方配偶者と不倫相手との不倫の状況を確認する必要もあるため、より大きなストレスを被ることにもなりません。

一方、不倫相手に対する慰謝料請求を弁護士に依頼することで、弁護士が依頼者の代理人として、不倫相手との交渉や、証拠の整理等を対応することになるため、慰謝料請求に伴うストレスを軽減することが期待できます。

茨城県で、離婚問題や不倫相手に対する慰謝料請求にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

 

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