質問
別れる相手に財産を渡したくないために財産を隠したり、処分をされないようにするためには、どのような手続きをする必要があるのでしょうか。
回答
財産保全の措置をとる必要があり、調停前の仮の処分、審判前の保全処分、民事保全手続があります。
解説
調停前の仮の処分は、調停委員会(または裁判官)が、調停のために必要であると認める処分を命ずるものです。調停前の処分を命じることができるのは、家事調停事件が係属している間と定められています。
審判前の保全処分とは、調停の成立や審判の確定を待っていては、権利が実現できないおそれや、権利者が重大な損害を受けるおそれがあるなど、早急に対処して欲しい事情がある場合に、権利の対象を保全できる処分になります。審判や調停の申立て前から利用できる手続ではありませんが、審判や調停の申立てと同時に審判前の保全処分を申し立てることは可能です。
民事保全手続とは、長期に渡る裁判の間に、債務者が財産を隠匿したり、勝手に処分したりすることで債権者が損害を被ることのないよう、現状を保全したり、債権者の権利や地位を暫定的に認める制度です。民事保全手続は、仮差押え(民事保全法第20条)、係争物に関する仮処分(民事保全法第23条1項)、仮の地位に関する仮処分(民事保全法第20条4項)に分けられます。
これらの保全処分ができる要件は、①保全処分を行える権利者であること、②保全処分を行う必要性があること、③これらの事実について疎明できること、です。また、保全処分は、万が一不当な申立てであれば、相手方が損害を被る可能性がありますので、一定額の保証金を供託しなければなりません。
また、たとえば仮差押えの保全命令が出されたとしても、自動的にその手続が進むわけではなく、別途仮差押命令を実行する手続すなわち執行の申立てが必要になります。保全執行手続は、保全命令手続で出された保全決定の内容を具体的に実現する手続です。保全命令送達から2週間経つと、保全執行をすることができなくなってしまいますので注意が必要です。保全命令を無駄にしないよう、速やかに執行の申立てをするようにしましょう。
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