財産分与では、共働き夫婦でも一方が専業主婦(主夫)であっても、原則として2分の1での割合で分与されます。これを実務上2分の1ルールと呼んでいます。かつては妻の財産形成への貢献度は低いものとされていましたが、男女平等の要請や家事育児等の内助の功を重視し、2分の1の割合で分与する運用がかなり強固に定着しています。
しかし、このルールはあくまで原則です。そもそも財産分与は夫婦共有の財産を離婚を機にそれぞれのものとして清算することが目的ですから、共有財産形成に対する寄与、婚姻中の双方の協力関係及び助け合いの程度その他一切の事情を考慮して定めるべきです。したがって、2分の1とは異なる割合で分与される事が例外的にあります。
裁判例をみてみますと
・夫が医療法人を経営する医師で、4億円の資産を有しており、妻が専業主婦であったケースで、共有財産を1億円と認定し分与の割合を8対2としたもの
・夫は酒に浸り暴力をふるっていた一方、妻がガスの販売事業を行っていたケースで割合を3対7としたもの
・夫婦がそれぞれ芸術家として活動していたケースで、それぞれの名義で活動した収入は共有財産とならないとしつつ、夫対妻を4対6としたもの
・夫が大企業の役員であり共有財産が220億円のケースで、割合を95対5としたもの
などがあります。
一般化しますと、
① 一方が特殊の資格・地位を有し、又は努力をした
② 共同財産が比較的高額である
③ 他方の貢献度が低い
このような場合に2分の1と異なる割合を主張することができると言えます。
医師についてこれを見てみますと、①当然、医師という資格は特殊な能力であると言えます。医師の資格を取るに至る間に他方の助力があった場合には、資格自体を共有財産とみるべきとする見解もありますが、日本ではこのような見方に対しては否定的です。また、医療法人を経営するなどして、自己の才覚を発揮なさっている方は、特殊な努力によって収入を得ていると言えるでしょう。
次に、②医師の収入は高給ですので、若年離婚の場合は別として、共同財産は高額となっている事が多いと思われます。
問題は③です。開業医の場合、夫婦の他方が事務や理事、看護師などの形で収入増に助力している場合、他方の貢献具合が問題になります。どの程度の貢献があったといえるか、勤務時間や医院の規模などから厳密に考える必要があるでしょう。
上述の裁判例では、他方が専業主婦であった場合でも2割の貢献を認めていますので、それ以上の割合になることは予想されます。