医師に関する報酬トラブル事例

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はじめに

医師として働く方のなかには、医師免許を活かして非常勤や業務委託など、多様な働き方をしている方も少なくありません。離婚時には、この複数の勤務先報酬体系が原因で、報酬トラブルに発展するケースも見受けられます。また、相手方(配偶者)からは「医師免許があるのだから高収入だろう」と決めつけられ、過大な慰謝料や養育費を請求されるリスクもあります。

本稿では、医師が多様な働き方をしている場合に起こりやすい報酬トラブル事例と、その対処方法を解説します。医師免許ゆえに生じる離婚時の問題点や、円滑に離婚手続きを進めるための対応策をまとめました。

Q&A

Q1:非常勤先の業務委託契約で報酬を得ていますが、離婚時に「年収が偽装されている」と主張されるかもしれません。どうすればいいでしょうか?

業務委託契約書や報酬明細を整理し、実際の収入額を客観的に示す資料を用意するのが重要です。経理処理や源泉徴収票などの公的書類があれば、配偶者の不当な主張を否定できます。

Q2:医師免許を利用すれば高収入なのだから、慰謝料や養育費は高額にすべきだと妻(夫)から言われています。どう対処すれば?

医師免許があるからといって、実際の収入が当然に高いわけではありません。勤務形態や科目、勤務先によって収入は大きく異なるため、客観的な給与明細や契約書を提示し、算定表をベースに適正額を説明する必要があります。

Q3:病院やクリニックのアルバイト先を複数掛け持ちしている場合、離婚時に給与計算はどう扱われますか?

原則として、婚姻期間中に得た全ての収入が夫婦共有財産の形成に貢献したと見なされます。掛け持ち先からのアルバイト報酬も、年間トータルでどれだけの収入があったかを示し、財産分与や養育費算定の参考にされます。

Q4:複数の勤務先との契約形態が曖昧で、月ごとに報酬が変わります。どのように離婚協議を進めればいいですか?

過去数年分の収入平均を算出し、当面の将来予測を踏まえたうえで協議する方法が一般的です。契約書の更新時期や稼働スケジュールの変化も考慮し、弁護士が客観的に説明することで過大請求を防止できます。

Q5:不正請求や報酬の過少申告など、医師免許に絡む違法行為を配偶者に指摘された場合、どうすればいいですか?

医療報酬の請求ルールや業務委託契約の内容を再度確認し、事実無根であるなら書面や記録を提示して反論します。もし違法行為が疑われる場合は、弁護士に相談して早期にリスクを把握し、対応策を検討する必要があります。

解説

医師免許と多様な報酬形態が引き起こすトラブル

業務委託契約による不安定な収入

  • 常勤医師と異なり、業務委託契約や非常勤勤務を複数掛け持ちしている医師は、月によって収入が変動する。
  • 離婚時に配偶者側が「隠れ収入があるのではないか」と疑念を抱きやすい。

医師免許自体の価値を過大評価される

  • 配偶者が「医師免許があるなら将来どれだけでも稼げる」と思い、慰謝料や養育費を過剰に請求。
  • 実際には診療科目や勤務実態で収入に大きな差があるため、正確な説明が必要。

不正請求・違法行為の疑い

  • 大学病院と開業医のダブルワーク、業務委託先での保険点数算定、カルテ管理など、法令遵守が厳しく求められる分野。
  • 離婚時に恨みを買った配偶者から違法行為をリークされるリスクがあり、医療機関や厚生局の調査につながる可能性もある。

報酬トラブルを避けるためのポイント

契約書や報酬明細の整理

  • 各勤務先との契約形態(正社員・非常勤・業務委託)の確認と契約書の保管
  • 毎月の収入を源泉徴収票請求書の写しなどで可視化し、過去の実績を整理しておく。

収入の平均化と将来見込み

  • 年収ベースで把握し、月々の変動を慮って平均値を算出。
  • 将来的な勤務形態変更(転職や開業など)が確定しているなら、その影響も考慮した数字を提示。

専門家との連携

  • 税理士・会計士に相談し、報酬に関する会計処理を適切に行う。
  • 離婚協議で弁護士が客観的な書類を整えて主張することで、不当な請求を退けやすい。

想定事例と対応策

事例A:非常勤勤務を複数掛け持ちの医師

  • 配偶者が「実際にはもっと稼いでいる」と疑いをかけ、高額な慰謝料を要求。
  • 対策:過去数年分の勤怠記録・報酬明細を提出し、変動や稼働時間を丁寧に説明。弁護士を通じて合理的な額に整理する。

事例B:業務委託契約での保険請求が疑われる

  • 配偶者が「不正請求があるのでは」と行政や保険者に通報する可能性。
  • 対策:契約内容を再確認し、弁護士に早期相談。万が一違法リスクがあるなら是正手続きを行い、離婚に影響しないよう管理。

事例C:高額報酬を法人化して受け取るケース

  • 一部の医師が業務委託収入を自らの医療法人(または一般社団法人)で受け取り、給与として最小限に設定している。
  • 対策:法人への入金と個人所得を明確に分け、法的に認められる範囲で節税。離婚時には法人資産が分割対象とならないよう定款・契約を整備。

弁護士に相談するメリット

複雑な報酬体系を法的に整理

  • 弁護士が医療法人や業務委託先との契約書、会計処理を確認し、財産分与や慰謝料算定における正当な数字を構築。
  • 変動収入や臨時収入なども包括的に考慮して、過大・過少請求を防ぐ。

不正疑惑やリークへの備え

配偶者から違法行為を指摘された場合、弁護士が法的根拠と事実関係を整理して真偽を判断。証拠を揃えて反論する。

裁判所や相手方への説明

  • 医師免許の価値や複数契約の収入管理などを、専門用語を噛み砕きながら裁判所や相手に説明。
  • 結果的に紛争の長期化を防ぎ、合理的な離婚条件を得やすくする。

精神的負担の軽減

  • 弁護士が間に立つことで、相手方との直接交渉や書類作成から解放され、医師として本業に専念できる。
  • 将来の不安やリスクを整理し、長期的なキャリアプランも見据えたアドバイスを受けられる。

まとめ

  • 医師免許を活用した多様な働き方(業務委託・非常勤・複数病院掛け持ち)で報酬を得ている場合、離婚時に「収入隠し」や「潜在的高収入」などを指摘されやすい
  • 客観的な契約書や報酬明細の整理、過去数年の平均収入の算出により、配偶者からの過大請求を回避する
  • 医師免許自体は財産分与対象とはならないが、収入やキャリアポテンシャルが大きいと見なされ、慰謝料や養育費が高額化する可能性あり
  • 弁護士と協力すれば、不当な疑惑を晴らしつつ、法的根拠に基づく適正な分与・養育費・慰謝料を実現し、医師としてのキャリアを守れる

医師免許は有用な資格である一方、離婚時には相手から「高収入がある」と錯覚されてしまうリスクもあります。実際の収入形態や勤務状況を正確に説明し、不要なトラブルを避けるためにも、弁護士による法的サポートを活用することもご検討ください。

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