1 アスペルガー症候群とは
(1)症状
アスペルガー症候群には、(1)社会的に適切に振る舞うことが難しい、(2)円滑なコミュニケーションが難しい、(3)こだわりが強く、柔軟な対応が難しいという3つの症状があります。
(2)原因
アスペルガー症候群の原因は解明されていませんが、先天的な脳の機能障害が原因であると考えられています。また、症状や障害の程度も個人差が大きく、原因は一つではなく、様々な原因が絡み合って症状が出ていると考えられます。
(3)治療
根治が期待できる画期的な治療方法はありませんが、社会生活がうまくいくことをサポートするような心理療法やストレスケアに効果のある薬物療法を取り入れて治療を進めていきます。
2 配偶者がアスペルガー症候群だったら
配偶者がアスペルガー症候群の場合、コミュニケーションを円滑にすることができないため、言葉どおりに物事を受け止めてしまったり、不適切な言葉を使って相手を傷つけてしまったりすることがあります。
また、相手の気持ちを読み取って、理解し寄り添った対応をすることも難しいため、相手としては「自分を理解してくれていない」と感じることもあります。
もちろん、夫婦で支え合って病気と向き合っていけるのが一番ですが、このような状況が長く続くと、支える側も心身が不調になることが多くあります。追い詰められて深刻な状況になる前に離婚をお考えの場合は、早めに専門家に相談するようにしましょう。
3 アスペルガー症候群を理由に離婚できるか
(1)協議離婚・調停離婚
協議離婚の場合は、夫婦で話し合い、離婚に合意ができればすぐに手続きをすることが可能です。
協議離婚の合意ができず、なかなか話が進まない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをし、調停委員の関与のもと、夫婦で話し合いをすることになります。調停を通じてお互い合意ができれば離婚することができます。
(2)裁判離婚
裁判離婚とは、協議離婚、調停離婚いずれも成立しなかった場合に、訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚するものになります。離婚裁判を起こすには、民法で認められている離婚の理由(「法的離婚事由」)が必要になります。
(3)「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」に該当するか
まず、基本的には、夫婦であればお互いに扶け合いながら夫婦生活を維持する責任と義務がありますので、配偶者が病気になってしまったからといって一方的に離婚を申し立てることはできません。ただし、配偶者が強度の精神病にかかってしまい回復が見込めない場合には、民法第770条第1項第4号による離婚を申し立てることができます。
では、配偶者がアスペルガー症候群であることが、この条項に該当するかどうかですが、アスペルガー症候群であることだけでは、ここには該当せず離婚の理由とすることは難しいと思われます。
(4)「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか
前述のように、アスペルガー症候群であるということだけでは、民法第770条第1項第4号には該当しない可能性が高いですが、症状やこれまでのエピソード等、様々な要素を検討し、民法第770条第1項第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」により離婚できる可能性があります。
4 まとめ
以上のとおり、配偶者との離婚についての合意が無い限り、アスペルガー症候群だからといって、直ちに離婚が認められるわけではありません。
そのため、配偶者がアスペルガー症候群であることを理由に離婚を考える場合には、専門家である弁護士に相談し、離婚請求が認められる見込みがあるかどうか、離婚を認めてもらうにはどのようにすればよいかなどの点についてアドバイスをもらうのが良いでしょう。
茨城県全域に対応している当事務所には、経験豊富な弁護士が数多く所属しています。お困りのことがあれば、ぜひ一度当事務所にご連絡ください。