不倫・不貞慰謝料請求の争点① 不倫・不貞行為はなかった

はじめに

不倫・不貞相手に対する慰謝料請求をするにあたって、相手方が不倫・不貞行為を認めてくれればよいのですが、争う姿勢を示してきたときには、不倫・不貞行為に基づく不法行為責任が成立することを立証する必要があります。

不倫・不貞相手に対する慰謝料請求における主な争点は、以下の4つがあります。

争点① 不貞行為の有無

争点② 既に婚姻関係は破綻していた

争点③ 既婚者(不倫・不貞)とは知らなかった

争点④ 消滅時効

本稿では、争点①不貞行為の有無についてご説明するとともに、不倫・不貞慰謝料請求をする側にとって注意すべき点について解説します。

不貞行為とは

第1の争点は、そもそも不貞行為に該当するかどうか、という問題です。

この点、「不貞行為」とは具体的にどのような行為を指すのかを確認する必要があります。

この点、「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」判例タイムズNo1278・45頁以下によれば、「不貞行為」とは、以下の3つであると整理しています。

① 性交又は性交類似行為

② 同棲

③ 上記の他、一方配偶者の立場に置かれた通常人の立場を基準として、一方配偶者・他方配偶者の婚姻を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流・接触

このように、慰謝料請求原因となる「不貞」は、性交に限定されず、それよりも広い概念であるということができます。

肉体関係を持ったことは不貞行為(上記①)に該当することは明らかですが、肉体関係を有するまでに至らない場合であっても、「不貞行為」に該当することがありうるといえます。

肉体関係以外の行為が不貞行為と認められるか

この点、参考となる裁判例として、以下の事例が挙げられます。

1 東京地裁平成17年11月15日判決

「第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえない」と判示しています。

かかる判示からすれば、肉体関係(性行為)以外であっても、婚姻共同生活を破綻に至らせる蓋然性のある行為も加害行為となりうるといえます。

2 東京地裁平成22年12月21日判決

「継続的な肉体関係がなくとも、第三者の一方配偶者に対する行為が、他方配偶者の婚姻共同生活の平和を毀損するものであれば、違法性を有するというべきである。」と判示しています。

かかる判示からも、肉体関係(性行為)以外であっても、加害行為となりうるといえます。

3 東京地裁平成20年12月5日判決

「YはAとの間で、婚姻を約束して交際し、Aに対し、Xとの別居及び離婚を要求し、キスをしたことが認められ、これらの事実は…Xに対する不法行為を構成すべきである。」と判示しています。

以上の参考裁判例からも、不法行為の対象となる不貞行為とは、肉体関係に限られないと考えられます。

性的不能の場合における不法行為責任の有無

ところで、実務上、不貞相手や他方配偶者から、不貞行為の不存在を主張するために、性的不能だったという主張がなされることがあります。

もっとも、前記のとおり、そもそも不法行為の対象となる不貞行為とは、肉体関係(性行為)に限られないことから、性的不能であったことは、不貞行為を否定する理由にはならないといえます(但し、肉体関係(性行為)にまでは及んでいないという意味では、反論にはなりうるとも考えられます)。

この点、東京地裁平成25年3月25日判決や東京地裁平成25年5月14日判決によれば、性的不能であり性交に至らなかったとしても、不貞相手と他方配偶者の行為は、不貞行為に該当すると判示していることが参考となります。

最後に

以上が不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の争点①「不貞行為の有無」に関する解説となります。

実務上、不貞行為の有無が問題となる場合には、肉体関係の有無が第一義的に争われることになりますが、仮に肉体関係の存在が立証できなかったとしても、その他の行為が不貞行為に該当すると判断される可能性があります。

したがって、不貞行為の有無が争点となる場合には、関連裁判例も調査した上で、慎重に検討する必要があります。

具体的な主張・立証にあたり不安がある方は、お気軽にご相談ください。

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