協議離婚の手続
1 離婚協議書の作成
交渉の結果,協議離婚の条件が決まった場合,離婚協議書を作成し,離婚の条件を書面にしておくべきです。離婚協議書の形式に決まりはありませんので,任意の書式で離婚の条件を整理した離婚協議書を作成し,当事者双方から署名・捺印(割印)をもらうことで,後日の紛争を防ぐための証拠を作成することができます。
2 公正証書の作成
但し,離婚協議書はあくまでも証拠になるにすぎず,これだけでは債務名義にならないことから,後日相手方が離婚協議書の合意に違反した場合,直ちに強制執行等の法的手段をとることはできません。
そこで,債務名義を取得するために,離婚協議書をもとに,公正証書を作成しておくことも検討するとよいでしょう。
この場合,公正証書作成にあたっての実費が発生するため,公正証書作成の実費は誰が負担するのかも話し合いで決める必要があります。
3 協議離婚の届出
なお,離婚協議書を作成するだけでは,離婚したことにはなりません。
市町村役場に対し,離婚届を提出する必要があります(なお,協議離婚の届出は,口頭でも可能ですが(民法764条・739条2項),大半は書面でなされています)。
そこで,離婚協議書の作成とともに,離婚届出書の作成も並行して進めるべきです。
なお,離婚届出書を作成して,相手方に預けてしまうと,後日気が変わったとして,提出されないリスクもあります。
このような事態を避けるために,離婚届出書を2通作成して双方で保管するか,少なくともご自分で保管するようにすべきです。
協議離婚の内容の決定
協議離婚の交渉にあたっては,主に以下の点について決めていく必要があります。
① 離婚に応じるかどうか
② 親権者はどちらがなるか
③ 面会交流の条件はどうするのか
④ 婚姻費用・養育費は月額いくらで,いつまでにするのか
⑤ 慰謝料はどうするのか
⑥ 財産分与はどうするのか
⑦ 年金分割はどうするのか
この点については,交渉を通じながら,一つ一つ書面でまとめていくと,後日蒸し返されることを防ぎやすくなります。
離婚不受理申出制度の利用
ところで,離婚届の審査は,形式審査であり,書面が提出されれば,形式面に不備がない場合には受理されることになります。
したがって,相手方が離婚届を偽造し,無断で提出してしまう可能性も否定できません。
このような心配がある場合には,協議離婚の不受理申出書を本籍地の市区町村の役場に提出しておくことで,離婚届を受理されないようにしておくことができます。
なお,現在は不受理申出書を一度提出すれば,本人からの取り下げがない限り不受理期間が続くことになっています。