離婚原因としての悪意の遺棄

【質問】

仕事の都合で茨城県への転勤を命じられました。

妻も当然来てくれるものだと思っていたのですが,妻は東京の実家で暮らしたいと言い張り,結局,私は単身赴任することになりました。

妻が実家で暮らしていることもあり,妻には生活費を送らずに過ごしていました。

ところが,妻は,私が生活費を送らないことは,「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)にあたるとして,家庭裁判所に離婚の調停を申し立ててきました。

このような妻の請求は認められるのでしょうか。

 

【回答】

法定離婚事由の一つである「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)とは,正当な理由なく,夫婦の同居義務,協力義務,扶助義務(民法752条)に違反する行為を言います。

なお,ここで言う「悪意」とは,単に遺棄の事実ないし結果の発生を認識しているだけでは足りず,夫婦関係の廃絶を企図し,またはこれを容認する意思と解されています。

 

ご質問の場合,あなたの転勤地へ一緒に行くことを拒んだ妻に対して生活費の仕送りをしないあなたに,「悪意の遺棄」を問うことができるかどうかということは,他の事情も加えて判断されますが,その他の事情によっては「悪意の遺棄」に該当すると判断されることもあるでしょう。

したがって,妻の調停申立には一応の理由があると言えます。

もっとも,別居について夫婦間に合意があったのであればともかく,あなたの仕事上の必要から住居の変更が生じたのですから,正当な理由なく妻が同居を拒んだのであれば,妻の側に同居義務違反があると考える余地もあります。

いずれにせよ,あなたが離婚する意思がないのであれば,離婚調停においてしっかりとその旨の主張をしていただく必要があります。

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