離婚にともなう財産関係の精算では,慰謝料が問題となります。
以下では,慰謝料と税金の問題を解説いたします。
1 慰謝料をもらったら税金が発生するのか
【質問】
私は夫と離婚するときに,慰謝料として100万円を支払ってもらうことになりました。
この慰謝料100万円にも税金は発生するのでしょうか。
【回答】
慰謝料に対しては,原則として課税されないため,税金は発生しないことになります。
【解説】
慰謝料は,不法行為に基づく損害賠償であり,所得税法上非課税とされています(所得税法9条1項17号)。
したがって,離婚に伴う慰謝料は,もらう側にも,支払う側にも課税はされないことになります。
また,慰謝料は不法行為責任に基づく損害賠償債務として支払うものですから,債務がないのに財産を渡すという贈与にはあたらないため,贈与税も発生しないことになります。
以上のとおり,慰謝料に対しては,原則として課税されないことになります。
2 慰謝料に対して税金が発生する場合
【質問】
夫と離婚する際,慰謝料として1億円を支払ってもらうことになりました。
慰謝料に対しては課税されないと聞いたのですが,この場合でも大丈夫でしょうか。
【回答】
慰謝料に対しては原則として課税されませんが,相当な範囲を超えたと認められる場合には課税されることになります。
慰謝料として1億円ももらった場合には,通常の慰謝料の相場(300万円前後)を大きく上回っていることから,課税されることが考えられます。
【解説】
慰謝料については原則として非課税とされていますが,以下の場合には贈与税が課せられることになります(相基通9-8,所基通33-1の4)。
1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
→ その多過ぎる部分に贈与税がかかる
2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
→ 離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかる
ご質問のケースでは,通常の慰謝料の相場を大きく上回る金額の慰謝料をもらうことになるため,課税されることは想定すべきでしょう。
3 慰謝料の代わりに不動産を譲ってもらった場合の課税
【質問】
離婚するときに,夫からは慰謝料ではなく自宅の土地・建物をもらうことになりました。
この場合には実質的に慰謝料ですから,課税されることはないのでしょうか。
【回答】
不動産取得税が課される可能性があります。
【解説】
不動産を取得した場合には,所得者には不動産取得税が課されることになります。
もっとも,不動産が婚姻後に取得されたものであり,夫婦共有財産の精算のために行われた財産分与の場合には,不動産取得税が減免される可能性があります。
また,不動産取得税が課される場合にも,いくつかの軽減措置を利用できることがあります。
このほかに,不動産の所有権移転登記に際して登録免許税が発生します。
一方,不動産を譲渡する側は,慰謝料として不動産を譲渡する場合,譲渡所得による所得税が課せられる場合があります。