医師に特有の離婚問題 離婚を理由とする配偶者の解雇の可否

開業医の方が自分の配偶者を従業員として雇用している、または医療法人の理事に任命している場合は多いと思います。このような夫婦が離婚した場合、医師の方は相手方配偶者を継続雇用しづらいでしょう。この際に離婚を理由として相手方配偶者を解雇又は解任できるでしょうか。

この点、離婚と雇用とは別個の契約です。雇用関係については別途、客観的・合理的な解雇事由があり、かつ、社会通念上相当な理由がなければなりません(労働契約法16条)。離婚により、勤務態度が多少悪くなったというだけでは、解雇は認められ難いものがあります。離婚前に、雇用関係について話し合っておく必要があるでしょう。

なお、離婚の原因が相手方配偶者の医院内での不倫であって、それを理由とする解雇を有効とした裁判例があります。このような場合は、解雇について合理的な理由があると言えます。

次に、元配偶者が医療法人の理事である場合です。理事という地位は、やはり婚姻とは別個のものですので、解任したければ、法的手続きに則りその任を解く必要があります。

この点、医療法には解任手続きについての規定がありません。当該医療法人の個別的な定款又は寄附行為に規定がある場合を除いて、民法の委任の規定(民法643条)に従うことになります。すなわち、相手方の債務不履行に基づき医療法人と理事の間の契約の解除を行わなければなりません。これによる解任は困難なものがありますので、2年毎の改選時に再任しないという選択が妥当かと思われます。

これらの方法によらずに元配偶者を法人運営から排除してしまうと、損害賠償をされてしまうことも考えられます。

また、医療法人の設立に際して配偶者又はその実家から出資を受けていた場合、出資をした配偶者あるいは親族の方は医療法人の社員(出資者)となっています。出資者としての地位は法的に排除できるものではありませんので、財産分与において譲受の話し合いをしなければなりません。

医師の離婚はややこしい問題が多数生じます。悩ましくお感じになられる方は、専門家にご相談下さい。

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