【質問】
私たち夫婦は東京で生活していましたが,夫と価値観があわず,現在は北海道の実家に戻っています。
離婚したいのですが,調停をどこの家庭裁判所に申し立てればよいのでしょうか。
できれば,北海道の実家に近い家庭裁判所に申し立てたいと考えているのですが,可能でしょうか。
【回答】
1 家事調停事件の土地管轄
家事調停事件の土地管轄は,①相手方の住所地の家庭裁判所のほかに,②当事者が合意で定める家庭裁判所,とされています(家事審判規則129条)。
したがって,本件では,①夫のいる東京家庭裁判所(またはその支部)か,②夫との合意が成立すれば,あなたの住んでいる北海道の家庭裁判所(またはその支部),で調停を申し立てることになります。
2 管轄違い事件の自庁処理
このように,夫との合意が成立しない場合には,あなたのいる北海道の家庭裁判所(又はその支部)で調停申立をすることはできないことが原則です。
もっとも,夫との合意が成立しない場合でも北海道の家庭裁判所で調停を申し立てる方法としては,「自庁処理」を求める,という方法が考えられます。
管轄違い家庭裁判所に申し立てられた家事調停事件について,その家庭裁判所が,事件を処理するために必要があると認められるときには,その事件を他の家庭裁判所に移送し又は自ら処理(自庁処理)することが認められています(家事審判規則4条1項但書)。
この「事件を処理するため特に必要があると認めるとき」とは,本来の土地管轄によって処理すると,当事者の経済力等からして一方に著しい負担をかけ,不当不公平とみられる場合や,事件処理に多くの時間や費用を要するとみられる場合などです。
このような事情がある場合には,事件の迅速妥当な処理のために土地管轄の原則が緩和され,管轄権のない家庭裁判所に移送し,または管轄権のない家庭裁判所で自庁処理することができます。
この移送または自庁処理は,調停の申立を受けた裁判所が裁量によって行います。