【2分の1ルール】
財産分与では,対象財産の調査やその評価だけでなく,どのような割合で分割するのか,ということも問題となります。
一般的には,財産分与の割合は「2分の1」と説明されることが多いかと思われます。
実務上でも,夫婦の財産形成に対する寄与度を原則として2分の1として考えられる傾向にあります(いわゆる「2分の1ルール」)。
但し,これはあくまでも「原則」であるということに注意が必要です。
つまり,個別事情を考慮して,財産分与の割合が修正されることがあるのです。
【修正されるケース】
実際に財産分与の割合が修正されたケースには以下のような事例があります。
① 夫が医療法人の理事長として医療施設を経営している事案(福岡高判昭44年12月24日)
夫が多額の資産を有するに至ったのは,夫の医師ないし病院経営者としての手腕・能力によるところが大きいこと等を理由に2分の1を基準としなかった。
② 妻が婚姻後家計を助けるためにプロパンガスの販売を始め,業績を順調に伸ばしていった事例(松山地西条支判昭50年6月30日)
妻の営業は順調に伸びていき、支店を設けるまでに発展させたのに対し,夫は勤めをやめ,この営業に加わったが,やがて酒色におぼれ、妻子に暴力を振るうようになり,妻は長女・長男を連れて夫と別居し,子どもたちを独力で養育した。
妻側の寄与を評価し,営業財産を含む共有財産の7割を妻に分与した。
③ 夫婦がそれぞれ芸術家として活動していた事例(東京家審平6年5月31日)
妻と夫は芸術家としてそれそれぞれの活動に従事するとともに,妻は家庭内別居の約9年間を除き約18年間もっぱら家事に従事してきたこと、および当事者双方の共同生活についての費用の負担割合、収入等を総合考慮して、6割を妻に分与した。
④ 夫が一級海技師の資格を持ち、1 年の大半を海上勤務していた事例(大阪高判平12年3月8日)
夫がその努力により取得した資格を活用した結果および海上での不自由な生活を耐えた上での高収入であったとして、夫の寄与度を7割と評価した。
【経営者の方へ】
このように,個別事情を考慮して財産分与の割合が修正されます。
会社経営者の方は,ご自分の才覚によって会社を大きく発展させるケースも少なくありません。
ご自分のケースでは果たして2分の1ルールを適用することが妥当かどうか,一度検討してみてはいかがでしょうか。
より詳しい相談をご希望の方は,当事務所へご連絡ください。