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離婚時の財産分与と退職金の扱い方
はじめに
離婚を考える際、夫婦が協力して築いてきた財産をどのように分けるか――いわゆる「財産分与」は非常に重要な問題です。その中で、「退職金」の扱いは多くの方が疑問に思われるポイントのひとつでしょう。実際、定年退職が間近に控えている場合だけでなく、まだ退職金を受け取る予定がまだ先という状況でも、退職金は財産分与の対象になり得ます。しかし、退職金は「将来もらう可能性があるお金」であるがゆえ、実際に分与の対象になるかどうかはケースバイケースで異なるのが現状です。
本記事では、退職金が財産分与の対象となる理由や考え方、そして実務上どのように扱われるのかについて、解説いたします。さらに、弁護士に相談することで得られるメリットや、円滑に財産分与を進めるためのポイントについても触れていきます。離婚に伴うお金の不安や疑問を少しでも解消し、将来の生活設計に役立てていただければ幸いです。
Q&A
Q1. 財産分与の対象に退職金は含まれますか?
基本的には退職金も財産分与の対象になります。
ただし、退職金は「将来的に支給されるもの」であるため、まだ確定していない場合や早期退職制度の活用、会社独自の退職金制度などによって扱いが複雑になるケースもあります。
Q2. どの時点を基準に退職金を財産分与として考えればよいのでしょうか?
婚姻中の「夫婦が協力して形成した財産部分」に限られるのが一般的です。
夫婦が婚姻関係を維持している間に積み上げた勤続年数分の退職金が対象となるのが基本ですが、実際に具体的な金額をどのように算定するかは、退職時期が近いか遠いか、退職金が確定しているかどうかなどによって異なります。
Q3. 実際に退職金をまだ受け取っていない場合でも、財産分与の対象になるのですか?
退職金が将来支払われる見込みがある程度高いのであれば、対象になる可能性があります。
ただし、退職金の支給が不確実な場合や、途中退職するリスクが高い場合には分与の対象から除外されることもあるため、個別事案ごとに判断が分かれます。
Q4. 退職金の分与割合は、どのように決まるのですか?
一般的に、財産分与の割合は「2分の1ずつ」が基本となります。
もっとも、婚姻期間が極端に短い場合や、夫婦間の事情によって公平性を考慮する必要がある場合には、必ずしも1/2で分けるとは限りません。また、退職金の額が高額になるほど、詳細な検討が必要になることもあります。
Q5. 退職金以外に財産分与の対象になる代表的なものは何がありますか?
預貯金、不動産、株式、車、保険の解約返戻金などが代表例として挙げられます。
これらは夫婦が婚姻中に共同で築いた財産として、基本的には財産分与の対象になります。
解説
ここからは、退職金が財産分与の対象になりうる理由や、実務上の判断方法、注意点などについて掘り下げて解説していきます。退職金というと「夫婦で共同して形成した財産」というイメージがあまりない方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上は賃金(給与)の一部が将来に繰り延べられたものとみなされることが多く、そのため財産分与の対象に含まれると考えられているのです。
1. 退職金が「婚姻中に形成された財産」とみなされる理由
退職金は、会社に長年勤務した功労に対する「賃金の後払い」との性質を持ちます。そのため、婚姻期間中に相応する勤務実績によって積み上げられた部分は、夫婦が共同で築いた財産と捉えることができるのです。日本の法律上、夫婦が協力して形成した財産は財産分与の対象となるため、退職金も対象に含まれるのが通説です。
2. 将来の退職金が確実に受け取れるかどうか
もっとも、退職金は定年まで働くことを前提とした制度であるため、将来の退職金が現実に支給されるのかどうかが不確定なケースもあります。特に、会社が倒産してしまう可能性がある場合や、早期退職を迫られる場合などは、実際の受給額が大きく変わる場合も考えられます。したがって、裁判所が財産分与の対象として認めるかどうかは、「現在の時点で退職金がもらえる可能性がどれだけ高いか」を個別に判断することになります。
3. 退職金算定の具体的基準
退職金が将来的にもらえることがほぼ確定していると判断された場合、では実際にどのように計算するのでしょうか。一般的には以下のような手順を踏みます。
- 試算をもとに退職金額を推測
会社の退職金規程や、勤続年数、役職などから、仮に定年退職を迎えた場合の退職金額を計算します。 - 婚姻期間中の寄与分を取り出す
婚姻期間全体を勤続年数としてどの程度占めるのかを算定し、その割合を婚姻中に形成された財産部分とみなします。 - 公平な分配割合を決定
一般には2分の1ずつ分けるのが原則ですが、夫婦間の事情により割合を増減することもあります。 - 現実には退職金をどの時点で分けるかを検討
実際に退職金を受け取るのは定年退職時などになるため、すぐにまとまったお金として支払えないケースもあります。離婚時には、将来受け取る分の一部を金銭請求権として取り決める、あるいは現在ある他の財産の配分で調整するなどの方法がとられることがあります。
4. 早期退職や退職時期が近い場合の注意点
- 早期退職
会社の都合や自己都合で早期退職を行う場合、退職金の減額や加算など、通常とは異なる制度が適用される場合があります。そのため、いったん算定した退職金が実際には大きく増減することもあり得ます。この点については、早期退職制度の内容や会社の規程を十分に確認し、慎重に金額を試算することが必要です。 - 退職時期が近い場合
夫婦の一方がすでに退職間近であれば、退職金の金額が具体的に算定しやすいというメリットがあります。逆に、若くして離婚する場合は、定年までまだ長い期間があるので、退職金の将来見込み額をどのように扱うかが問題となりやすく、実際には一部を財産分与から除外するなどの対応が必要になることもあります。
5. 離婚協議書や公正証書で取り決める重要性
退職金について、離婚時にすぐ支払いが発生しないケースも多々あります。そのため、口頭だけの合意で終わらせると、後になって「支払わない」「そんな約束はしていない」というトラブルが起こるリスクが高まります。将来の退職金の分与をきちんと受けるためにも、離婚協議書や公正証書などの文書で詳細な取り決めを残しておくことが推奨されます。
弁護士に相談するメリット
離婚時の財産分与は、夫婦の共同財産をどのように分けるかというシンプルな問題のように見えますが、実際には退職金や不動産、株式、保険など多岐にわたります。特に退職金は、将来的な見込みや制度の複雑さからトラブルに発展しやすいポイントです。ここでは、弁護士に相談するメリットをいくつか挙げてみます。
- 的確な法律知識に基づいたアドバイス
退職金をはじめ、財産分与の算定方法や分与割合の決定は、裁判所の判断例など法律の理解が欠かせません。弁護士に相談すれば、過去の事例や判例を踏まえて客観的かつ的確なアドバイスを受けられます。 - 交渉・調停をスムーズに進めるサポート
財産分与で意見が対立した場合、当事者同士の話し合いでは平行線をたどることも少なくありません。弁護士が代理人として間に入ることで、適切な法的根拠に基づいた交渉が可能になり、話し合いをスムーズに進められるメリットがあります。 - 将来にわたるトラブルを予防できる
離婚協議書や公正証書を作成するときに、退職金分与について明確に条項を定めておけば、将来的に「言った、言わない」の争いが生じにくくなります。弁護士は法律文書の作成の専門家であり、漏れなく・曖昧さの少ない条文を作ることで、離婚後のトラブルを防ぐことができます。 - 相続問題や年金分割など、関連分野まで一貫してサポート
離婚に伴う手続きは財産分与だけではなく、年金分割や慰謝料請求など多岐にわたります。また、離婚した後の生活設計や、将来的な相続問題との兼ね合いまで考慮する必要がある場合もあります。弁護士に依頼すれば、離婚をめぐるあらゆる問題についてサポートが受けられます。
まとめ
離婚に際して問題となる財産分与の中でも、退職金は「将来的に受け取るお金」であるがゆえ、その取扱いが曖昧になりがちです。しかし、退職金は婚姻中に形成された財産とみなされる可能性が高いことから、離婚時においてもしっかりと算定し、取り決めを行う必要があります。特に、実際の受給額が不確定だったり、退職がまだ先だったりするケースでは、詳細な計算や条項作成が要求されるため、専門家の力を借りることが有益です。
また、離婚後の生活基盤を安定させるうえでも、退職金を含む財産分与は非常に重要な意味を持ちます。口約束だけでは、後で「そんな話は聞いていない」と揉める原因にもなりかねません。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、多くの離婚事例を取り扱っており、退職金や年金分割を含む財産分与の問題についても豊富な経験を有しておりますので、安心してご相談ください。
解説動画のご紹介
離婚にまつわる各種問題について、さらに詳しく解説した動画を公開しています。退職金以外にも、年金分割、慰謝料、親権など、離婚で押さえておきたいポイントを網羅的に扱っていますので、ぜひご活用ください。
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子どもを守るために知っておきたい離婚と虐待対策のポイント
はじめに
本稿では、子どもへの虐待が疑われる状況や、DV(ドメスティック・バイオレンス)が家庭内で起きている場合に、どのように対応すればよいか、そして離婚を考えるにあたってどのような手続・準備が必要かを解説いたします。
児童虐待やDVは、当事者である配偶者だけでなく、お子さんや周囲の家族にも深刻な影響を与えかねません。特に「子どもの前で暴力がふるわれる」「子どもの目の前で夫婦喧嘩が起きている」などの面前DVは、心理的虐待として大きな問題となっています。
家庭内でのトラブルは、いざというとき、どこに相談すればいいのか分からずに孤立してしまうケースも少なくありません。しかし、法律上の手続だけでなく、行政機関や児童相談所などのサポート体制が充実してきています。適切な手段をとることで、子どもや自分自身を守りながら離婚手続きを進めることが可能です。
本資料は以下の流れで、皆さまが抱える不安や疑問を解消し、安心して一歩を踏み出すためのポイントをまとめました。どうぞ最後までお読みいただき、ご自身やお子さんの安全を守るために、ぜひお役立てください。
Q&A
ここでは、子どもへの虐待やDVに関する、よくあるご質問を先に取り上げて解説します。
Q1:子どもに直接暴力を振るっていなくても虐待になりますか?
はい、なり得ます。
子ども自身には手を挙げていなくても、子どもの目の前で親が配偶者に暴言や暴力を行う「面前DV」は、心理的虐待の一種として扱われることがあります。子どもは暴力そのものを見聞きするだけでも、大きなストレスやトラウマを抱える可能性があるため、問題行為として注意が必要です。
Q2:子どもが虐待されていることでシェルターに避難しました。これは離婚の理由になりますか?
離婚の一つの有力な理由となりますが、証拠が重要です。
シェルターへの避難事実があると「家族の安全が脅かされていた」と判断される可能性が高まります。ただし、離婚が認められるかどうかは総合的な判断となるため、写真・診断書・録音データなどの証拠を揃えておくことが必要です。
Q3:夫の暴言やモラルハラスメント(モラハラ)もDVに該当するのでしょうか?
該当する場合があります。
身体的な暴力だけがDVではありません。言葉の暴力や脅し、無視などの行為も心理的虐待として扱われる場合があります。相手からの暴言や執拗な束縛などは、精神的に追い詰めてしまうため、DVの範囲に含まれることがあります。
Q4:子どもへの性的虐待が疑われる場合、どんな罪に問われるのでしょうか?
児童福祉法や刑法の監護者性交等罪などに問われる可能性があります。
子どもの年齢や行為の具体的な内容にもよりますが、性的虐待は非常に深刻な犯罪行為です。状況によっては刑法上の罪に該当することもあるため、早期の段階で専門機関や弁護士に相談する必要があります。
Q5:夫の虐待を知っていながら何もせず放置していた場合、母親も罪に問われる可能性がありますか?
放置が認定されるとネグレクトとみなされる可能性があります。
母親が性的虐待や身体的虐待の事実を知りながら、適切な保護を行わなかった場合などは、ネグレクトとして母親自身も責任を問われることがあります。自分が加害者でないからといって安心できるわけではありませんので、必ず適切な対応を取ることが大切です。
解説
ここからは、虐待の定義や離婚手続きを進める上で押さえるべきポイントを解説していきます。
1. 子どもへの虐待は犯罪に該当する可能性がある
厚生労働省の統計によれば、令和元年度中に児童虐待相談として対応された件数は約19万件を超え、年々増加傾向にあります。児童虐待には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4種類があり、以下のような行為が該当する可能性があります。
- 身体的虐待
殴る、蹴る、激しく揺さぶる、押さえつける、やけどを負わせる、首を絞めるなど - 性的虐待
子どもに対する性的行為を強要する、ポルノグラフィの被写体にする、性的な行為を見せるなど - ネグレクト
食事を与えない、病院に連れて行かない、車内に放置する、不潔な状態にするなど - 心理的虐待
言葉による脅し、無視、差別的扱い、子どもの面前でDVをふるう、モラハラなど
子どもが虐待を受けていると感じたときは、まずはお子さんや自分の身を守るための行動を最優先に考えてください。緊急の際は警察や児童相談所などに連絡し、避難できる場所があればすぐに移動するなどの手段を取りましょう。
2. 夫の虐待を放置すると母親も罪に問われる?
子どもの保護者には、子どもを監護・保護する責任があります。夫の虐待行為が明らかにもかかわらず、母親が何の対応も取らず放置していた場合、ネグレクトに当たる可能性があります。結果として、母親も虐待に加担したと見なされるケースがあるため、見て見ぬふりは避けてください。
3. 離婚の前にすべきこと
身の安全を確保する
もっとも大事なことは、あなた自身とお子さんの安全です。身体的暴力が加わりそうな気配がある、あるいはすでに加わっている場合は、シェルターや安全な避難先を確保しましょう。自治体やNPO法人が運営する緊急のシェルター、女性専用シェアハウスなどを活用し、まずは命の確保を最優先にしてください。
行政機関・児童相談所に相談する
自治体には、DV相談窓口や子どもへの虐待に関する相談窓口が設けられています。児童相談所や警察へ連絡することで、早期の段階で公的機関からの保護やサポートを受けることが可能です。自力での対応が難しい場合でも、行政が関与することで状況が改善することもありますので、ためらわずに相談しましょう。
証拠を集める
離婚や親権争いに至ったとき、虐待の事実を立証するためには証拠が欠かせません。暴力を受けた傷の写真、医師の診断書、メールやLINEでの暴言、録音データなど、可能な限り記録を残しておきましょう。証拠が乏しいと、相手方が事実を否認した際に、苦労するケースが多いのです。
弁護士に相談するメリット
DVや子どもの虐待が関わる離婚では、感情面だけでなく法的手続が複雑に絡み合うため、専門家のアドバイスが極めて重要です。以下では、弁護士法人長瀬総合法律事務所に相談するメリットをまとめます。
1. 法的知識と経験に基づくアドバイス
弁護士は、離婚問題や虐待事案に関する法的な知識を有しているため、状況に応じた適切なアドバイスを行うことができます。たとえば、保護命令の申し立てや親権争い、慰謝料請求の可否など、専門家でなければ判断しづらい問題にも対応が可能です。
2. 交渉・裁判手続の代理
離婚協議や裁判では、相手方と直接話し合う必要が生じますが、暴力を振るう相手と顔を合わせること自体、大きな苦痛やリスクを伴います。弁護士が代理人となることで、安全を確保しつつ交渉や裁判を進めることができます。
3. 適切な証拠収集と戦略の立案
自分ではどんな証拠が必要か判断できない場合もあります。弁護士に相談すれば、どのような証拠を優先して確保すべきか、どのタイミングで公的機関に報告すれば有利になるかなど、戦略的なアドバイスを受けられます。特に、子どもへの虐待やDVの事実を証明するための証拠集めは、離婚後の親権争いにも大きく影響するポイントです。
4. 精神的なサポート
DVや子どもの虐待被害者は、精神的なダメージを負っていることが少なくありません。弁護士に相談することで、法的な助言のみならず、精神的な安定感や安心感を得られることも大きなメリットです。必要に応じてカウンセリング機関や支援団体を紹介してもらえるケースもあります。
まとめ
ここまで、子どもへの虐待やDVが原因となる離婚の基礎知識や、離婚前にすべき準備、弁護士に相談するメリットについて解説してきました。改めて要点を振り返ってみましょう。
- 子どもへの虐待は重大な犯罪に該当し得る行為であり、放置すれば保護者側も責任を問われる場合があります。
- 離婚前には身の安全を最優先し、場合によってはシェルターや行政機関を活用する必要があります。
- 離婚や親権争いでは、証拠が極めて重要です。傷の写真や診断書、暴言の録音データなど、しっかりと収集しましょう。
- 難しい手続きや相手方との交渉に直面する前に、弁護士に相談することで、安心して事態を進めることができます。
離婚は家族の人生において大きな転機となりますが、お子さんの安全やご自身の安心を守るために、適切なステップを踏んでいくことが重要です。早い段階で専門家のアドバイスを受けるほど、後々のトラブルを回避しやすくなり、心身の負担も軽くなる可能性が高まります。
解説動画のご紹介
離婚問題についてさらに詳しく知りたい方、子どもへの虐待やDVに関する具体的な手続きの流れを知りたい方は、ぜひ下記の解説動画もご参照ください。実際にかかる手続きや必要な準備などを、映像を通じて確認いただけます。
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【コラム】婚姻中でも別居後に新たに恋人をつくることは法的に大丈夫なの?(別居後の不貞行為と婚姻関係破綻の主張について)
1 別居後の不貞行為
本論考では、婚姻関係にある当事者の関係が悪化し、別居後に当事者の一方が第三者と性交渉を持ち不貞行為に及んだ場合、慰謝料請求が認められるのかという問題を論じます。
例えば、夫と妻が話合いにより別居した後、夫が会社の後輩の女性と性交渉を持った場合等です。
妻としては、二人の関係を修復するために距離を置いただけであり、離婚する意思がなく、婚姻関係が続いていることから、夫及び会社の後輩の女性に対して慰謝料を請求したいと考えます。
他方、夫としては、二人の夫婦関係は冷めきっており、喧嘩が絶えずに別居したことから、婚姻関係が破綻し、夫婦としての実態が何らないため、不貞行為にならず、慰謝料を支払う必要がないと考えます。
このような夫と妻の主張を実際の裁判例を通じて検討します。
2 裁判例の検討
本件問題に関連する裁判例の内容を抜粋し、解説します。
(1)東京地裁平成27年(ワ)第27856号
判決文の概要
解説
当該判決は、別居後、離婚調停、離婚訴訟で当事者間の婚姻関係が破綻していることを争っていても、当事者間でレジャー施設に遊びに行く、自宅に来る等で複数回会っている場合には、婚姻関係が破綻したとまでは認められないと判断しています。
したがって、離婚調停、離婚訴訟継続中であっても、婚姻関係が破綻しているから、恋人をつくって性交渉を持ってもよいだろうと安易に考えず、慎重に行動すべきです。
(2)東京地裁平成30年(ワ)第30826号
判決文の抜粋
解説
当該判決は、①別居前に離婚したい意思があること、②別居後も離婚したい意思が変わらなかったこと、③別居後、連絡を一切拒絶する態度をとったこと、④経済面、生活面で価値観の違いがあること、⑤夫婦関係が冷え切った発言をしていること、⑥別居後、一度も自宅に戻らなかったという理由があっても「婚姻関係が破綻」でではなく、「円満ではなかった」という文言で表現しています。
そのような表現理由は、破綻を認めないという結論が前提であり、その理由としては、①別居期間が2ヶ月程度、②他方配偶者が離婚に反対し、関係修復の意思があること、③配偶者は、まだ原告が好きだという気持ちがあること、④関係悪化の特別事情があったものではないこと、④離婚理由が抽象的理由にとどまること、⑤協議の場をもてば関係修復の可能性があるという理由です。
当職は、上記判示には違和感があり、別居の実情、心情を的確に捉えているとは考えられません。
そもそも、他方配偶者が好きでまだ離婚したくないんだと言えばいいのでしょうか。好きでも一緒にいられないから別れるという考えもあります。夫婦関係が悪化する特別な事情があること自体が珍しく、日々の小さな積み重ねであり、離婚理由が性格の不一致等で抽象的にならざるをえません。二人でしっかり話し合う場をもてとは、話合いにならないから裁判になっているのでしょうと判決理由には様々な疑問を感じます。
(3)東京地裁令和2年(ワ)第1468号
判決文の抜粋
解説
当該判決は、①配偶者が婚姻当初から複数の者と不貞関係を続けてきたこと、②他方配偶者が上記①が原因で体調を崩し、別居に至ったにもかかわらず、「婚姻関係は破綻の危機」と評価し、「破綻していた」とは認めませんでした。
そのような表現理由は、破綻を認めないという結論が前提であり、その理由としては、①別居後、交際開始まで1年のみの期間であること、②別居後も家族間の交流があったこと、③メールで親しげなやり取りをしていたこと、④離婚に向けて具体的な協議、裁判等がなかったことを理由としています。
婚姻期間中に複数の者と不貞をしていたという事実は、婚姻関係が破綻していたことを基礎づける重要な事実と考えられますが、あくまで、裁判所の評価としては、破綻ではなく、婚姻関係が破綻の危機に瀕していたという評価にとどまります。
また、本件では、別居後、具体的に離婚の話を進める行動に出ていなかった事実を婚姻関係が破綻していない理由の一つとしています。
通常、婚姻関係が破綻しているならば、当事者間の婚姻関係を解消するため離婚に向けて具体的な行動があるものだという経験則の価値観が根底にあると考えられるため、確かに、離婚に向けて何ら協議していない状況では、家族間で交流していた事実もふまえると、婚姻関係が破綻していたとは考え難いでしょう。
3 結語
以上をふまえると、婚姻期間中に別居した場合でもあっても、新たに恋人と付き合い、性的関係を持つことは、避けたほうが無難です。
しかしながら、別居後、新たに好きな人ができたので、付き合いたいけれど、どうすればよいかというご相談をお受けすることが多々あります。
本論考の結論では、上記裁判例を通じて検討した結果として以下の対応が考えられます。
①弁護士を選任し、離婚する意思を明確にした通知書の発送、②当然、弁護士が代理人に就任するので、当事者間の連絡は弁護士を通じてしかできないこと(別居後にも親しげな関係性を続けていることが婚姻関係が破綻していないことを基礎づける事実になるため、本人同士の直接の連絡は遮断します。)、③離婚協議の実践、④離婚調停の申立を行うということが最低限お伝えする対応方針となります。
当職は、実際にご相談者様に対して、具体的な実情(いつから付き合えますか等)をふまえてリーガル・カウンセリングを実施していますので、ぜひご相談ください。
執筆
双方が子どもを監護している場合の婚姻費用の算定方法
相談
私も子どもを監護していますが、夫も子どもを監護しています。このような場合、婚姻費用の算定はどのようになるのでしょうか。
回答
いくつか方法はありますが、標準的な生活指標を用いて算出する方法について、ご説明致します。
解説
婚姻費用算定表
婚姻費用の算定にあたって基準になるのが、婚姻費用算定表です。婚姻費用算表は、夫婦の年収を当てはめて算出する簡易的なものになるため、妻、夫のいずれか一方が子ども全員を監護しているという前提で作成されています。
そのため、夫婦の両方が、それぞれ子どもを監護しているような場合には、この算定表をそのまま使うことができなくなるため、総収入に対する標準的な割合を用いて基礎収入を算出し、標準的な生活費指数を用いて算定します。
婚姻費用の標準的な算定方法
婚姻費用の支払いにおける義務者・権利者双方の実際の収入金額を基礎(※2)とし、義務者・権利者及び子どもが同居しているものと仮定して算出します。具体的には、義務者・権利者の「基礎収入」の合計額を世帯収入とみなし、その世帯収入を権利者及び子どもの生活費指数(※2)で按分し、義務者が権利者に支払う婚姻費用を算出します。
(※1)基礎収入とは、総収入のうち自由に使える金額のことです。給与所得者の基礎収入は、総収入の概ね34~42%の範囲、自営業者の基礎収入は、総収入の概ね47~52%の範囲です。
(※2)生活費指数とは、世帯の収入を、世帯を構成するメンバーに、どのように割り振るべきかを示す指数のことです。親は100、0歳から14歳の子どもは55、15歳~19歳の子どもは90です。
夫婦双方がそれぞれ子どもと同居している場合の婚姻費用の算定方法
例えば、夫(義務者)の年収が700万円、妻(権利者)の年収が300万円、子どもA(16歳)を夫が、子どもB(10歳)を妻が、それぞれ監護している場合の婚姻費用については以下のとおりです。
それぞれの基礎年収
義務者の基礎収入:700万円× 0.37=259万円
権利者の基礎収入:300万円× 0.39=78万円
権利者である妻世帯に割り振られる婚姻費用
(259万円+78万円)×(100+55)/(100+100+55+90)≒ 151.4万円
義務者から権利者に支払うべき婚姻費用の分担額
上記結果から権利者である妻の基礎収入を控除して、義務者が支払うべき婚姻費用を算出します。
(151.4万円−78万円)÷ 12か月= 6.1万円
まとめ
婚姻費用分担については、一応算出が可能ですが、個別の事案によって状況も違いますので、早めに弁護士に相談することをお勧め致します。
茨城県で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご相談ください。当事務所には、婚姻費用分担の解決について、経験豊富な弁護士が多数在籍しています。安心してお任せください。
高所得者の場合の婚姻費用の算定方法
相談
夫が高所得者のため、収入が婚姻費用算定表の上限を超えています。その場合、婚姻費用の算定はどのように行われるのでしょうか。
回答
年収が婚姻費用算定表の上限を超える場合の考え方はいくつかあり、事例に応じてどの場合にどの考え方によるのかの基準は明確ではありません。以下で説明致します。
解説
婚姻費用算定表の上限について
婚姻費用の額は、当事者が合意によって決めることができます。当事者同士での合意ができない場合には家庭裁判所の調停や審判で決定することになります。
その際の基準となるのが、婚姻費用算定表です。ただし、婚姻費用算定表は、簡易版であるため、給与所得者については上限が年収2,000万円、自営業者については上限が所得1,409万円となっています。
高額所得者の場合の算定方法
上限頭打ち方式
この見解は、高所得者であっても、算定表の上限である年収2,000万円(自 営業者は所得1,409万円)で婚姻費用を算定すべきというものです。
基礎収入割合修正方式
標準的算定方式の枠組みは維持した上で、その中で使う基礎収入割合だけ修正するという計算方法です。
標準的算定方式では、総収入のうち自由に使える金額(基礎収入)を元にして婚姻費用の金額を計算します。
基礎収入の計算は、総収入に、一定割合(基礎収入割合)を掛けて算出します。
基礎収入割合は収入が増えるほど低下する仕組みになっているので、基礎収入割合を修正して、標準的算定方式が使うというのが基礎収入割合修正方式の考え方です。
貯蓄率控除方式
高額所得者の特徴として、貯蓄に回す金額が多いということがあります。そこで、自由に使える金額(基礎収入)を算出する際に、貯蓄に回す金額を差し引き、それ以降の計算は標準的算定方式をそのまま使うというのが、貯蓄率控除方式になります。
裁量での算定方式(フリーハンド方式)
同居中の生活レベル・生活費支出状況、現在の生活費支出状況等を個別具体的に検討し、相当な婚姻費用を裁量で算定する方式です。
まとめ
婚姻費用の分担でお困りのことがあれば、弁護士に相談しましょう。特に高額所得者の婚姻費用分担では、総収入が算定表の上限を超えるので、専門家でなければ判断をするのが難しいと言えます。
茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚や婚姻費用分担に精通した弁護士が、多数所属しています。ご相談者様のご意向に沿った解決ができるよう、安心・丁寧にサポート致します。
自営業者の場合の婚姻費用の算定方法
相談
夫と別居するにあたり、婚姻費用を請求しようと思っています。参考として婚姻費用算定表を見てみたのですが、よくわかりません。夫が自営業者の場合は、どのように婚姻費用が算定されるのでしょうか。
回答
確定申告書を参照して算定することになりますが、以下で詳しくご説明します。
解説
自営業者の年収(基礎収入)額とは
自営業者の年収、すなわち養育費算定表にあてはめる収入の計算については、確定申告書右上の「課税される所得金額」に「実際に支出していない費用」を加算することとされています。
「実際に支出していない費用」を具体的に説明すると、税法上の控除項目(現実に支出されているわけではない)である青色申告特別控除、雑損控除、寡婦寡夫控除、勤労学生障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除があげられます。また、専従者給与については、計上されていても実際には支払われていない場合もあります。
医療費控除、生命保険料控除等については、算定表で収入に応じた標準額が既に考慮されていますので、こちらも加算する必要があります。
さらに、小規模企業共済掛金控除 寄附金控除という養育費・婚姻費用の支払いに優先しない支出項目といえる所得控除も加算する必要があります。
計算方法
考え方は上記のとおりですが、実際には、確定申告書の「所得金額」の「合計」金額から、社会保険料控除額を差し引き、次に青色申告決算書・白色申告収支内訳書のうち、実際に支出していない費用を加算する方法が簡単です。
算定表へのあてはめ
自営業者の年収が確定できたら、婚姻費用算定表を使用して金額を算定します。
子どもの人数と年齢から利用すべき婚姻費用算定表を選び、婚姻費用を支払う側の年収を縦軸で確定し、婚姻費用をもらう側の年収を横軸で確定します。縦軸と横軸が交差する金額が婚姻費用の金額となります。
まとめ
婚姻費用の算定についてお困りのことがあれば、弁護士にご相談ください。婚姻費用については、算定表を利用してある程度の目安をつけることができますが、実際にどれくらいになるのかは経験豊富な弁護士に相談してみましょう。
相手方との交渉が決裂した場合でも解決に向けた支援を受けることができます。
茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚や婚姻費用の分担に精通した弁護士が、安心・丁寧にサポート致します。
子どもが私立学校に進学する場合には婚姻費用は影響される?
相談
別居後、妻と同居している子どもが私立高校に進学することになったのですが、私立高校進学にかかる費用は婚姻費用に加算されるのでしょうか。
回答
婚姻費用の算定にあたっては、算定表を用いますが、こちらで想定しているのは、公立の中学・高校を想定しています。そのため、私立学校への進学について、両親が納得しておいる場合には増額する必要があります。
解説
婚姻費用の分担
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことで、具体的には、居住費や生活費、子どもの生活費や学費をいいます。夫婦は、その収入や財産、社会的地位に応じて、それぞれが婚姻費用を分担する義務があり、この義務は夫婦である間はずっと継続します。
そのため、夫婦が別居する際には、収入の高い方が、低い方に婚姻費用の支払いをします。
婚姻費用の決め方
婚姻費用は、お互いに合意できるのであれば、夫婦で話しあって決めることができます。話し合っても合意できない場合やそもそも話し合いができないような場合は、家庭裁判所での調停や審判で決めることになります。家庭裁判所では、婚姻費用算定表を用いて算出します。
婚姻費用算定表の見方は、子どもの人数と年齢から利用すべき婚姻費用算定表を選び、婚姻費用を支払う側の年収を縦軸で確定し、婚姻費用をもらう側の年収を横軸で確定します。縦軸と横軸が交差する金額が婚姻費用の金額となります。
増額と減額について
夫婦の合意によって婚姻費用の分担を決めていた場合、夫婦で改めて減額や増額に合意できれば、婚姻費用の額を変更することができます。
婚姻費用の分担が、家庭裁判所の調停や審判で決まった場合、減額や増額を請求するには、婚姻費用の減額・増額の調停・審判を申し立てる必要があり、家庭裁判所での判断基準は、①事情の変化とその予測可能性、②婚姻費用を減額・増額することの必要性となります。
子どもの私立学校への入学
今回の事例を検討すると、子どもの私立学校への進学について、両親ともに了承していた場合には増額が認められる可能性があります。
一方で、夫は公立高校に進学させる意向を持っていたにもかかわらず、妻側が無断で子どもを私立学校に入れようとしているということであれば、増額が認められるのは難しいと言えます。
まとめ
婚姻費用の分担でお困りのことがあれば、弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、代理人としての交渉から、裁判所での手続きまで、一貫してサポートが可能です。
茨城県で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。離婚や婚姻費用に精通した弁護士が、納得の解決を目指して丁寧に対応致します。
住宅ローンがある場合の婚姻費用はどうなる?
相談
妻と別居を検討しています。私が家を出ていくことになりそうなのですが、住宅ローンがある場合の婚姻費用の分担についてはどうなるのでしょうか。
回答
基本的には、婚姻費用を算定する際にローンの支払いについて考慮するのが公平だといえます。①住宅ローンの支払額を特別経費として控除する方法、②算定表による算定結果から一定額を控除する方法など、いくつかの方法ががあります。
解説
婚姻費用の分担について
夫婦が共同生活を営む上で、必要になる生活費のことを婚姻費用といいます。民法第760条にも「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と、定められており、通常は、収入の多い方が収入の少ない方に生活費の支払いをします。
婚姻費用の算定について
婚姻費用の分担について、夫婦で協議ができる場合は、別居前の生活水準を踏まえて生活費の支払い額を決定するのが通常です。しかし、夫婦の協議が調わない場合やそもそも協議ができない場合には、家庭裁判所に調停・審判を申し立てる方法で生活費の額などを定めることになります。
家庭裁判所では夫婦間における生活費の負担を決める際に、「婚姻費用算定表」を用いて算出し、分担額を決定することになります。
住宅ローンがある場合の婚姻費用の考え方
婚姻費用は生活費のことになりますので、衣食住に関する一切の費用が含まれ、「住」に関する費用である住宅ローンも、その中に含まれるように思われます。
しかし、このように形式的に考えると、妻側がもらえる婚姻費用の額が少なくなりすぎたり、逆に婚姻費用として全く考慮しないとなると、夫が多額の支出を強いられることになったりします。
そのため、以下のようなポイントに注意して婚姻費用を算定する必要があります。
適正な婚姻費用を算定する
住宅ローンを支払っている場合の婚姻費用の事案では、婚姻費用支払い義務者の年収から住宅ローンの年間負担額を控除して、婚姻費用を算定する手法を取る調停や審判例が多いようです。そのため、まずは適正額での婚姻費用の算定が必要になります。
相手への説明を明確に行う
婚姻費用の額を一方的に決めてしまうと、相手方が納得せずに、婚姻費用の分担調停を申立てられる可能性があります。そのため、協議をする場合には、根拠を明確に出して、相手が納得できるように話を進める必要があります。
まとめ
婚姻費用の分担についてお困りのことがあれば、弁護士に相談しましょう。
特に住宅ローンがある場合などは、婚姻費用の算定そのものも素人では難しいと言えます。相手方との協議が決裂して解決が困難になる可能性もありますし、経験豊富な弁護士に相談しながら進めるのが得策です。
茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご相談ください。離婚や婚姻費用分担に精通した弁護士が多数在籍しています。経験豊富な弁護士が丁寧にサポートしますので、安心してお任せください。
妻が不貞(不倫)をした上、子どもを連れて別居した場合にも、生活費(婚姻費用)は支払わなくてはならない?(子どもがいる場合)
相談
妻が不倫をしたことにより夫婦仲が悪くなり、妻が子どもを連れて家を出ていきました。妻から生活費の請求をされているのですが、払わなくてはならないのでしょうか。
回答
婚姻費用のうち、少なくとも子どもの生活費(いわゆる養育費)相当部分は支払う必要があります。
解説
婚姻費用の分担について
民法第760条によると、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定められており、夫婦が一緒に生活をする上で必要な費用は、お互いに負担しなくてはなりません。
通常は、収入の多い方が、収入の少ない方に婚姻費用を支払います。
有責配偶者からの婚姻費用請求
夫婦である以上、婚姻費用は分担する必要がありますので、原則としては、有責配偶者であっても請求することが可能です。つまり、不貞行為等の有責性については、婚姻費用ではなく慰謝料で考慮されるべき事項ということになります。
しかし、裁判所の見解では、主として妻の側に別居の責任があるといえるような場合には、婚姻費用は減額されるとされています。
また、子どもがいる場合には、子どもの生活費相当部分については、減額をすることができません。婚姻費用の中には子どもの生活費も含まれますが、子どもには何の罪もありませんので、子どもの生活費は支払う必要があるのです。
不貞事案の婚姻費用の留意点
不貞行為の認定は容易でない
不貞行為は、本人が認めないことが多く、客観的に証明することが難しいため、不貞行為を認定することは難しいと言えます。興信所を利用したり、写真やSNS等を確認したり、ICレコーダー等で音声を録音するなどして、証拠を集める必要があります。
婚姻費用の適正な算定
婚姻費用の算定は、双方の年収をもとに行います。そのためには源泉徴収票や所得証明書で年収を確認する必要があります。
年収が確認できたら、裁判所の婚姻費用算定表を使うと婚姻費用の目安がわかります。
まとめ
有責配偶者からの婚姻費用請求でお困りのことがあれば、弁護士に相談しましょう。分担額の算定や相手の有責性によりどれくらい減額されるかについては、専門知識が必要になりますので、専門家である弁護士に相談することが早期解決の糸口になります。
茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚や婚姻費用の分担に関する問題に精通した弁護士が多数在籍しています。安心してお任せください。
妻が不貞(不倫)をして別居している場合にも、生活費(婚姻費用)は支払わなくてはならない?(子どもがいない場合)
相談
妻が不倫をしたことにより夫婦仲が悪くなり、別居することになりました。妻が生活費の請求をしてきたのですが、支払わなくてはならないのでしょうか。
回答
判例によると、不貞行為を行った有責配偶者からの婚姻費用分担請求については、信義則ないし権利濫用の見地から請求を認めないとされています。
ただし、ケースにもよるので注意が必要です。
解説
婚姻費用の分担について
民法第760条によると、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定められており、夫婦が一緒に生活をする上で必要な費用は、お互いに負担しなくてはなりません。
通常は、収入の多い方が、収入の少ない方に婚姻費用を支払います。
有責配偶者からの婚姻費用請求
婚姻費用については、婚姻を継続している限り、分担して負担しなくてはならないのが原則です。つまり、収入が多い方が、収入が少ない方に払い続ける必要があります。
ただし、裁判所の判例によると、不貞行為を行った有責配偶者からの婚姻費用分担請求については、信義則ないし権利濫用の見地から請求を認めないとされたものがあります。
有責配偶者からの婚姻費用請求における留意点
責任の程度や双方の責任を考慮する
婚姻費用の請求を認められないほどの責任があるかどうか、というのは慎重に検討する必要があります。つまり、別居の原因が、専ら婚姻費用分担を請求する側にあるのかどうか、という点を検討することになります。
双方に責任を認められる場合や婚姻費用分担を請求する側の責任が軽いような場合にまで、婚姻費用の支払いを免れることができるわけではありませんので、注意しましょう。
不倫の証明について
また、不倫については大抵の場合本人が認めませんので、そもそも不倫を証明することはかなり困難であると言えます。不倫を証明するためには、確固たる証拠を集めるようにしましょう。
まとめ
婚姻費用を分担しなくてはならないとしても、相手が不貞行為を行っての別居である場合には、請求された側としては納得がいかないのは当然です。婚姻費用の分担についてお困りのことがあれば、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士であれば、豊富な知識と経験で早期に解決することが見込めます。茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚や婚姻費用分担に精通した弁護士が、丁寧にサポート致します。
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