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1 はじめに
自由恋愛が認められているとは言え、既婚者との間で恋愛関係や男女関係に発展した場合、他方配偶者の婚姻関係を壊すことになり、不法行為責任を負うことにもなりかねません。
不倫・不貞行為に及んでしまった方、逆に不倫・不貞行為をされてしまった方、いずれも深い悩みとストレスを抱えていることと拝察いたします。
当事務所では、不倫・不貞行為に及んでしまった方、逆に不倫・不貞行為をされてしまった方、いずれからも多数のご相談を受け、解決してきた実績があります。
不倫・不貞行為の問題は、迅速に対応することが大切です。不倫・不貞行為でお悩みの方は、まずは当事務所までご相談ください。
2 不貞行為とは?
離婚における慰謝料請求の原因として、実務上よく見られるものが、「不貞」になります。
夫婦の一方の配偶者と不貞行為に及んだ第三者は、故意または過失がある限り、他方の配偶者が被った精神上の苦痛に対する損害賠償義務があります。
そして、第三者とともに、不貞行為に及んだ他方配偶者も、不法行為責任を負うことになります。
① 慰謝料の原因となる不貞行為とは
慰謝料請求の原因となる「不貞」とは具体的に何を指すのかというと、一義的に決まってはいません。
また、法定離婚原因である「不貞」(民法770条1項1号)と、慰謝料請求の原因となる「不貞」は同じかどうかという問題もあります。
「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」(判例タイムズNo1278・45頁以下)では、離婚請求と慰謝料請求では、法律効果が異なることから、民法770条1項1号にいう「不貞」と、慰謝料の請求原因となる「不貞」は、同じ意味に解する必然性はないと説明されています。
上記の判例タイムズ(No1278・45頁以下)によれば、「不貞」とは以下の3つであると整理しています。
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このように、慰謝料請求原因となる「不貞」は、性交に限定されず、それよりも広い概念であるということができます。
② 法定離婚原因となる不貞行為とは
前記のとおり、慰謝料の原因となる不貞行為と、法定離婚原因である「不貞」(民法770条1項)とは、別の概念であると考えられる解釈もありえます。
判例タイムズによれば、法定離婚原因である「不貞」(民法770条1項)は、狭義の不貞行為を指し、性交に限定される一方、慰謝料の原因となる不貞行為は、広義の不貞行為とでも整理できるでしょうか。
仮に性交までは至っていないとしても、広義の不貞行為に該当するとして、慰謝料請求は認められる余地があるといえます。
3 不倫・不貞慰謝料とは
不貞、不倫、浮気に対する慰謝料請求という言葉は、最近ではよく耳にするフレーズかもしれません。もっとも、不貞、不倫、浮気に対する慰謝料請求は、どのような場合に認められるのか、またどのような法律上の根拠に基づいて認められるのかという点については、詳しくない方も多いのではないでしょうか。
本稿では、不倫・不貞慰謝料請求が、どのような根拠に基づいて、どのような場合に認められるのかについて説明します。
① 不倫・不貞慰謝料の法的根拠
不倫・不貞行為は、民法上の不法行為に該当します。
不倫・不貞慰謝料は、「不法行為」に該当するとして、慰謝料請求が認められます。
「不法行為」とは、故意又は過失によって他人の権利を侵害することをいいます。不法行為については以下のように規定されています。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 (財産以外の損害の賠償) 第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 |
このように、民法は、他人の権利を侵害した者は、そのことによって生じた損害(財産以外の損害も含みます)を賠償しなければならないことを定めています。
② 平穏な婚姻関係の毀損(きそん)
不倫・不貞行為は、”平穏な婚姻関係の維持”という権利を侵害している。
不法行為が成立するためには、他人の権利を侵害したといえる必要があります。それでは、不倫・不貞行為をした場合には、他人のどのような権利を侵害したといえるでしょうか。
不倫・不貞行為によって侵害する他人の権利とは、平穏な婚姻関係の維持ということになります。
不倫・不貞行為に配偶者の一方が及ぶことによって、他方配偶者はパートナーから裏切られ、強い精神的苦痛を受けるとともに、それまでの平穏な婚姻関係を壊されることになります。
その結果、不倫・不貞行為に及んだ者に対して、不法行為責任に基づく慰謝料請求が認められることになります。
言い換えれば、すでに夫婦関係が冷め切り、婚姻関係自体が破綻しているような場合には、不法行為責任は追及できないことになります。
③ 不倫・不貞相手だけの責任か
不倫・不貞行為はに及んだ2人は、共同不法行為責任を負うことになります。
不倫・不貞行為が明らかになった場合、まず真っ先に法的責任を追及したい相手は、不倫・不貞相手であると思います。この点、不倫・不貞行為に及んだ相手方が不法行為責任を負うことは争いがありません。
もっとも、不倫・不貞行為は、1人だけの問題ではなく、不倫・不貞に及んだ他方配偶者にも問題があることになります。このように、不倫・不貞行為に及んだ2人は、共同不法行為責任を負うことになります。
共同不法行為については、民法上、以下のように規定されています。
(共同不法行為者の責任)
第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。 |
不倫・不貞行為をされたことがきっかけで、夫婦関係が破綻し、離婚に至る場合には、両名に対して共同不法行為責任に基づき慰謝料請求をすればよいのですが、仮に不倫・不貞行為をされた後も、子どもたちの将来等を考えて離婚しない場合には、他方配偶者に対する慰謝料請求はどうするのか、という問題が生じることになります。
③ 共同不法行為責任と不真正連帯債務
不倫・不貞相手と他方配偶者は、共同不法行為責任を負うことになりますが、この場合、2人の慰謝料支払義務は、不真正連帯債務になります。
◆ 不真正連帯責務とは?
不真正連帯債務とは、連帯債務のうち、各債務者が全額についての義務を負うものの、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視し得る事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しない債務をいいます。
例えば、不倫・不貞をされた配偶者の慰謝料が300万円と認められた場合、不倫・不貞相手と他方配偶者が、2人で合計300万円を支払わなければならないということです。
この場合、不倫・不貞をされた配偶者は、それぞれに150万円ずつ請求することもできますし、不倫・不貞相手に対してだけ300万円全額を請求することも可能です。
但し、不倫・不貞をした他方配偶者に対しては支払を免除して、不倫・不貞相手に対してだけ300万円を請求した場合、免除の効果が不倫・不貞相手にも及ぶかどうかという問題が生じます。
また、仮に免除の効果が及ばないとしても、共同不法行為責任である以上、全額を支払った不倫・不貞相手は、不倫・不貞をした他方配偶者に対して求償請求できないかが問題となります。
この点は慰謝料請求に関する悩ましい問題であり、どのように対応すべきかはケースバイケースといえます。
④ 不倫・不貞行為≠肉体関係?
どこまでが不倫、不貞、浮気にあたり、どこからが不倫、不貞、浮気に当たらないのかははっきりとしません。
この点、男女関係・肉体関係(性交渉)にまで及んでいれば、不倫、不貞、浮気にあたるということは違和感はないと思います。
では、親しくメールや電話をしていたりすることはどうでしょうか。この程度であれば、不倫、不貞、浮気にはあたらないといえそうです。
一方、手を繋いだり、キスをしたり、さらに性交渉には及ばないものの、同棲するようになったりした場合はどうでしょうか。
この程度まで発展してきた場合には、仮に男女関係・肉体関係(性交渉)にまで及んでいないとしても、既婚者からすれば、婚姻関係を毀損する行為に該当する余地も出てくることになります。
詳細については、「不貞・不倫行為とは」の項目でも記述していますが、不倫・不貞行為と、肉体関係とは同義ではないということにご留意ください。