弁護士に特有の離婚問題

弁護士の特徴

離婚問題は、家族関係の精算だけではなく、財産関係の精算という面もあります。

財産関係の精算という観点からは、夫婦それぞれの職業が影響することが少なくありません。

夫婦のいずれかが弁護士の場合、弁護士特有の離婚問題を検討する必要があります。

そもそも、弁護士は、一般的な会社員よりも平均年収が高い傾向にあります。

統計データによっても異なりますが、弁護士の平均年収は1000万円前後とされるものもあります。

近年は弁護士数の増加に伴い、競争が激化し、平均年収も減少傾向にあると言われてはいますが、なお一般会社員等と比較すれば高水準であるといえます。

弁護士特有の離婚問題の留意点

1 弁護士法人を運営している場合の財産分与

独立開業している弁護士の方の場合、弁護士法人を設立して法律事務所を経営していることもあります。

このように、弁護士個人が法律事務所を経営しているのではなく、弁護士法人が経営している場合には、離婚の当事者である弁護士個人と弁護士法人は異なるため、弁護士法人名義の財産が財産分与の対象となるわけではないことになります。

したがって、弁護士法人に多額の財産があるとしても、原則として弁護士法人名義の財産が財産分与の対象になるわけではないということに注意しなければなりません。

もっとも、弁護士個人が代表社員として弁護士法人に多額の金員を貸し付けていたり、出資持分を有したりしている場合には、貸付金や出資持分は弁護士個人の財産にあたるため、財産分与の対象となります

2 財産分与の寄与度の修正

財産分与の分割割合は、一般的には2分の1ずつの折半となります。
(いわゆる「2分の1ルール」)

もっとも、財産分与の分割割合は常に2分の1となるわけではなく、個別の事情によって修正されることもあります。

例えば、夫が高収入であったために多額の資産を形成することができた場合には、夫側により多くの財産が分与されるように財産分与の割合が修正されることがあります(福岡高判昭和44年12月24日)。

3 退職金制度の有無

弁護士は個人事業主であるために、退職金制度はないと思われる方も少なくありません。

しかしながら、弁護士法人を設立しているような場合には、節税対策の観点から、代表社員である弁護士にも退職金制度を設定していたり、退職金代わりに保険金を掛けたりしているケースもあります。

したがって、弁護士であるからといって、退職金制度がないものと決めつけず、事前に調査をしておく必要があります。

4 配偶者の雇用関係の問題

弁護士のように事業主として法律事務所を経営している場合、配偶者を法律事務所の従業員として雇用していることも少なくありません。

このようなケースでは、離婚に伴い当然に法律事務所での雇用関係も終了すると思われる方もいらっしゃいますが、決してそのようなことはありません。

夫婦間の離婚問題と、法律事務所との雇用関係(労働関係)は全く別個の問題です。

したがって、夫婦が離婚したからといって、他方配偶者を解雇することは許されませんので注意が必要です。

もっとも、離婚後も同じ職場で働き続けることは、双方にとって負担が大きいことが一般的です。

できれば、離婚とともに、雇用関係についても精算できるように話し合っておく必要があります。

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