自衛官の特徴
離婚問題は、家族関係の精算だけではなく、財産関係の精算という面もあります。
財産関係の精算という観点からは、夫婦それぞれの職業が影響することが少なくありません。
夫婦のいずれかが自衛官の場合、自衛官特有の離婚問題を検討する必要があります。
自衛官は、国家公務員であるために、収入が安定している上、福利厚生も充実しています。
このように、自衛官は安定性があることから、近時は、自衛官との結婚も人気となっています。
もっとも、自衛官は、他の職業と異なり、複数の赴任地への配転となることが珍しくありません。
数年に一度の頻度で赴任地が変わるために、引っ越しは日常茶飯事といえます。
また、海上自衛隊や海外派遣の場合には、長期間にわたって帰ってくることができないということもあります。
さらに、自衛官には、各勤務活動によって様々な手当が支給されますが、勤務活動の終了に伴い手当の支給も終了するため、収入が安定しているとはいえ、増減がないわけではない、という特徴も挙げられます。
自衛官特有の離婚問題の留意点
1 退職金が財産分与の対象となるか
退職金制度が設計されている場合、将来入る予定の退職金が財産分与の対象となるかどうかが問題となります。
退職金が財産分与の対象となるかどうかは、勤務先の安定性や、退職金が支払われる時期がいつ頃になるのか等の事情によって左右されることになります。
勤務先が安定している業種である場合には、退職金を受領する蓋然性が高いといえ、退職金が支払われる時期が10年以上先であっても、財産分与の対象となる可能性があります。
自衛官の場合、退職金が支払われる蓋然性は、他の職業と比べても高いといえます。
2 年金
自衛官は国家公務員であるため、国家公務員共済年金が財産分与の対象となることに注意する必要があります。
3 離婚原因
当事者間で離婚すること自体の合意ができない場合には、法定離婚原因(民法770条1項各号)が必要となります。
実務上、離婚原因としてよく挙げられるものとして、長期間の別居があります。
もっとも、自衛官の場合、海外派遣や海上自衛隊の活動等のために、長期間の別居を余儀なくされることも少なくありません。
このようなケースでは、仮に別居期間が長期にわたっていたとしても、職務の性質上やむを得ないといえ、離婚原因として適当といえるか、という問題があります。