はじめに
医師という職業は尊敬される一方で、夜勤や当直、非常勤勤務を掛け持ちするなど多忙な働き方が一般的です。離婚時に「子どもの親権を得たい」「監護権を確保したい」と考える場合、この多忙さが強みにも弱みにもなり得ます。一方で、医師としての経済力や社会的信用は親権争いでプラスに働く場面もあるでしょう。
本稿では、医師が離婚において親権を獲得・監護を続けるために、どのような強みを活かし、どんな弱みを補う必要があるのかを解説します。医師が子どもの福祉を最優先にしながら離婚手続きを進める上で、参考となるポイントをまとめました。
Q&A
Q1:医師としての高収入や社会的信用は、親権・監護権争いで有利に働きますか?
経済力や社会的信用は親権判断の一要素になり得ますが、決定的な要素ではありません。裁判所は子どもの福祉(安全と安定した環境)を最優先に判断するため、多忙で育児時間が取れないと見なされれば、経済力だけでは不利を覆しきれない可能性もあります。
Q2:当直や夜勤が多く、子どもと生活リズムが合わないとき、どうすればよいでしょうか?
実家やベビーシッターなど、監護サポート体制を整え、当直中も子どもが安定して過ごせる環境を示すのが重要です。週に何日かは勤務を制限したり、勤務形態を調整するなど、実際の育児時間を確保する努力を具体的に示すと有利に働きます。
Q3:医師であることを理由に、相手から「多忙で子どもの面倒をみられない」と言われています。どう反論すればいいですか?
勤務スケジュールやシフト表を提示し、勤務後や休日に子どもと過ごす時間がしっかり取れること、サポート体制があることなどを証拠化しましょう。実際に子どもと過ごしている写真や日記、周囲の証言も有力です。
Q4:子どもが小さい場合、やはり母親が優先されるのでしょうか?
乳幼児期の子どもは、母親の監護が優先される傾向があるのは事実ですが、医師である父親が実際に育児の中心を担っている場合や、母親が不適切な監護環境の場合は父親が親権を獲得できる例もあります。各種証拠や証言による立証が鍵です。
Q5:親権を得られない場合でも、子どもと深い関係を築くにはどうすればよいでしょうか?
面会交流の充実がポイントです。宿泊を伴う面会やオンライン交流、長期休暇の利用など、多忙な医師でも計画的に子どもとの時間を確保できます。離婚調停などで詳細を取り決め、子どもの生活リズムに配慮しつつ親子関係を保つ工夫を行いましょう。
解説
医師の強み:高収入・社会的信用・医療知識
高い経済力と安定収入
- 医師として働くことで得られる安定収入は、裁判所からも子どもの将来にわたる経済的安定を評価される材料。
- 習い事や塾、留学など子どもの教育費を充実させられる点もアピールできる。
医療知識による子どもの健康管理
- 医師として子どもの病気や怪我、健康管理に優れた対応ができる点は、子どもの福祉にとってプラス。
- 持病がある子どもや特別なケアが必要な場合、医師としての専門性が強みとなる。
社会的地位と信用
- 世間から高い信用を得る職業であるため、親権争いで「生活基盤がしっかりしている」「教育熱心」という印象を与えやすい。
- ただし、不倫や浪費などがあるとその信用が逆に失われるリスクがあり、注意が必要。
医師の弱み:多忙による監護実績不足・不規則勤務
勤務時間が不規則
- 夜勤や当直で子どもと同居しながら常に面倒を見ることが難しいため、実質的な監護実績が少なくなる。
- 親権争いにおいて「実際に誰が子どもの世話をしているか」が重視されるため、弱みになり得る。
休日や連休を取りづらい
- イレギュラーなシフトや患者対応で休日出勤が必要になると、子どもとの生活リズムがずれてコミュニケーション不足と見なされる可能性。
- 面会交流や親子時間の確保に苦労する点もデメリット。
社会的信用の反転
- 高い社会的地位がかえって逆風になる場合もある。
- たとえば不倫が発覚した場合、医師としてのモラル観を疑われ、親権や監護での評価が急落するリスクがある。
医師が親権・監護権を獲得するための戦略
日常的な育児参加の実績づくり
- 当直明けでも、子どもを幼稚園や学校に送り迎えする、夕食の用意に携わるなどの“積み重ね”を証拠化。
- シフト表と育児日記、写真などで「業務との両立ができている」ことを裁判所に示す。
サポート体制の可視化
- 自身が不在でも、実家やシッターサービスが協力して子どもをケアできる体制を整える。
- 監護補助者(祖父母や保育スタッフ)の連絡先や具体的な協力内容を明確にしておく。
職場の協力確保
- 勤務先の病院やクリニックと相談し、可能な範囲でシフトの柔軟化や残業調整を検討。
- 離婚調停や裁判で勤務先の理解やサポートを証明するため、上司や同僚の書面を用意できると効果的。
感情的対立を避け、子どもの福祉を最優先
- 離婚時の親権争いで激しい感情対立が起きると、子どもに悪影響を与える。医師としての責務を踏まえ、冷静かつ合理的な交渉を行う。
- 弁護士を通じて「子どものメリット」を中心に話し合いを進め、相手方との対立を最小限に。
弁護士に相談するメリット
多忙な医師に代わって交渉を代行
- 弁護士が調停・裁判・書面作成を行い、医師は本業に集中しながら親権争いや面会交流の交渉を進められる。
- 精神的負担を軽減し、患者対応や研究活動への支障を最小化。
医師の勤務実態を客観的に示す書面作成
- シフト表や当直記録、育児サポート体制を整理し、裁判所や相手方に伝わりやすい形で立証。
- 「子どもの生活に支障なく監護できる」という印象を強化する。
医師免許や高収入を理由にした過大要求の防止
- 相手が「高収入なんだから」と極端に高い慰謝料や養育費を求めても、弁護士が客観的な算定基準を提示して妥当なレベルへ抑制。
- 不貞行為や浪費などの有責性がない場合、過度な要求を拒否できる法的主張を行う。
長期的な関係設計(面会交流含む)
- 離婚後も子どもの成長に合わせ、面会交流や監護体制の再調整が必要になるケースがある。
- 弁護士と継続的に連携し、環境の変化(職場移動、勤務時間の増減)に合わせて対応を見直せる。
まとめ
- 医師の高収入や社会的信用は、親権・監護権争いでプラスに働く一方、多忙な勤務形態が原因で監護実績不足と見なされるリスクがある
- 夜勤や当直など不規則勤務の場合、面会交流や子どものケアを柔軟に設定し、周囲のサポートを可視化することが親権争いで重要
- 医師免許は財産分与の対象にならないが、高収入を根拠に過度な慰謝料・養育費を請求される可能性があるため、正確な収入立証と弁護士サポートが欠かせない
- 弁護士に依頼すれば、多忙なスケジュールに即した面会交流案を提示し、親権・監護権を有利に進めるための証拠整理や交渉を行うことができる
医師としての使命や多忙な日常をこなしつつ、離婚による子どもの負担を最小限にしたいなら、計画的な監護体制の構築と弁護士の支援が欠かせません。しっかりと準備を整え、子どもの幸福とご自身のキャリアを両立させる形で離婚問題を乗り越えましょう。
その他の離婚問題コラムはこちらから
離婚問題について解説した動画を公開中!
離婚問題にお悩みの方はこちらの動画もご参照ください。
リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル
初回無料|お問い合わせはお気軽に