公正証書で取り決めを確実にするメリット

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はじめに

離婚協議で財産分与・養育費・慰謝料などを取り決めても、口約束だけでは「後から相手が支払いに応じない」「養育費を払ってくれない」などの問題が起きる可能性があります。そんなとき、強い味方となるのが公正証書です。公正証書を作成しておけば、取り決めを確実に履行させる「強制執行」を行いやすいだけでなく、後日の紛争を未然に防ぐ効果があります。

本稿では、公正証書を利用して離婚条項を定めるメリットや作成手続き、注意点を解説します。適切な離婚合意を得るために知っておきたい公正証書の活用法を紹介します。

Q&A

Q1:公正証書とは何ですか?

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書で、契約や合意の内容を法的に明確にし、強い証拠力・強制執行力を持たせるものです。離婚合意に関しては、財産分与や慰謝料、養育費などを公正証書で定めておくと、相手が支払わない場合に裁判を経ずに強制執行をかけやすくなります。

Q2:離婚協議書と公正証書の違いは何でしょうか?

離婚協議書は私文書であり、双方が合意した証拠にはなりますが、強制執行力はありません。一方、公正証書には公証人の認証があり、「強制執行認諾文言」を付けられるため、支払い不履行があった際、裁判を起こさずに財産差押えなどが可能です。

Q3:公正証書を作成する際に必要な書類や手続きは?

 (1)離婚協議書の草案(または主な合意事項)、(2)当事者双方の本人確認書類(運転免許証など)、(3)印鑑証明書(4)実印が一般的に必要です。公証役場で公証人が内容を確認して原案を作成し、当事者とともに読み合わせ・署名押印を行います。公証人手数料がかかりますが、支払う価値は大きいでしょう。

Q4:公正証書で決められる内容には制限がありますか?

財産分与や慰謝料、養育費、教育費、面会交流の具体的ルールなどを定められます。ただし、親権は法的に裁判所で決まるものであり、公正証書で「親権者は○○」と書いても、法的拘束力は通常の私的合意と大きく変わりません。また、不倫のペナルティを過大に設定したり、公序良俗に反する取り決めは無効となる場合があります。

Q5:公正証書の費用はいくらぐらいかかるのでしょうか?

公証役場の手数料は、財産分与や慰謝料など金銭請求の額によって異なります。たとえば、請求額が大きいほど手数料が高くなります。具体的には公証人と相談し、見積りを出してもらうとよいでしょう。

解説

公正証書を作成するメリット

強制執行が簡単

  • 公正証書に「強制執行認諾文言」が入っていれば、相手が養育費や慰謝料を滞納しても、裁判を起こさずに相手の財産や給料を差し押さえできる。
  • 通常、支払い不履行があるとまず訴訟を提起して判決を得る必要があるが、公正証書があれば判決不要で早期に実行可能。

後日の紛争を防ぐ

  • 私文書の離婚協議書は強い証明力がなく、「そんな合意はしていない」と相手が主張すれば、また裁判が必要になるリスクがある。
  • 公正証書は公証人が本人確認意思確認を行ったうえで作成するので、後から否認されにくい。

安心感と信頼性

  • 書類が公証人の手で保管され、公証役場で正式に認証された公文書となる。改ざん紛失のリスクを低減できる。
  • 離婚後も相手が「公正証書があるから払わないといけない」と認識し、不払いトラブルが起こりにくい。

公正証書作成の手順

離婚協議内容の整理

  • 財産分与(現金・不動産など)、慰謝料、養育費、教育費、面会交流、年金分割の方法など、合意事項をリストアップ
  • 弁護士のサポートを受ければ、洩れがなく効率的に作成可能。

公証役場に事前相談

  • 公証人に離婚協議書の草案合意書メモを見せ、書式や文言を検討してもらう。
  • 必要書類(印鑑証明書、身分証明書など)や手数料見積りを確認。

公証人と最終打ち合わせ・署名押印

  • 公証人が条項を読み上げ、当事者が内容を確認し、署名・実印押印で完成。
  • その場で正本と副本が発行される(弁護士が代理で受領可能)。公証役場にも原本が保管される。

活用と注意点

弁護士に依頼する利点

  • 法律用語や財産分与の数値計算、養育費の算定などをきちんと決めるため、弁護士がいれば主張や文言の修正をスムーズに行える。
  • 相手が公正証書作成に非協力的なら、弁護士が説得し、必要に応じて調停・裁判も視野に交渉を続ける。

親権と面会交流の定め方

  • 親権者の指定は離婚届にも記載が必要だが、公正証書で詳細に書いても強制執行は難しい。
  • 面会交流は具体的日程・方法・連絡手段などを記載すると、事後のトラブルを減らせる。強制執行は困難だが、明文化の効果は大きい。

金銭請求以外の合意

  • 養育費・慰謝料・財産分与のような金銭債権なら強制執行が有効だが、モラハラをしないなどの行為義務は執行対象とはならない。
  • 公正証書に記載する意義は、「公の場で宣誓した」という心理的抑止力に留まる点を理解しておく。

弁護士に相談するメリット

離婚協議の全体最適を実現

  • そもそも財産分与や養育費の相場、不動産や退職金・年金分割を正確に計算しなければ公正証書を作成しても不公平になる。
  • 弁護士が法的根拠に基づいた公平な分割を提案し、円満な合意と公正証書作成を同時に達成。

適切な条項設計で将来の争いを予防

  • 誤った文言や曖昧な記載があると、公正証書の効力が十分に発揮されず、トラブルが再燃。
  • 弁護士が専門知識を駆使して強制執行認諾文言や具体的支払い方法・期限を盛り込み、対策を万全にする。

不利な条項・不当要求を排除

  • 相手から無理な条項を押し付けられるケースでも、弁護士が交渉代行し、客観的根拠に基づいて修正を求められる。
  • 経済状況や法的理論に照らして適正な範囲に収めることで、安心して公正証書を作成。

不履行時にも対応

  • 公正証書があるのに相手が支払わない場合、弁護士が強制執行手続きを代行し、財産差押えや給与差押えをスムーズに実行。
  • 追加的な手続きや書類作成も一任できるため、煩雑さを軽減できる。

まとめ

  • 離婚協議で取り決めた財産分与・慰謝料・養育費を実際に確実なものにするには、公正証書が最適で、「強制執行認諾文言」を付けることで支払いが滞った際に裁判不要で強制執行できる
  • 公正証書作成には公証役場での手続きが必要で、あらかじめ協議内容を固め、必要書類・印鑑証明・手数料などを準備する必要がある
  • 公正証書でも、親権や面会交流の直接的な強制執行は難しいが、具体的ルールを明記することで再紛争を防ぐ効果は高い
  • 弁護士に相談すれば、協議内容の的確な文案作成、公証人との連携、不利な条件の排除、将来の強制執行までサポートを受けられる

離婚後の金銭トラブルを回避するためには、公正証書の利用が有効な手段です。協議離婚という簡易な手続きを選んでも、後日支払いが滞る不安は拭えません。専門家である弁護士の助けを借りながら、公証人との調整を進め、離婚後の生活基盤を安定させましょう。

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