はじめに
離婚後、親権を持たない親と子どもがどのように関わっていくか――これは「面会交流」の問題として離婚協議・調停で大きな位置を占めます。子どもの発達においても、両親それぞれとの交流が良好に続くことは非常に重要とされており、原則的には面会交流を認める方向で話が進みます。しかし、DVや虐待など特別な事情がある場合は、制限や監視付き交流などが設定されることも。面会交流で揉めやすいのは、「頻度」「場所」「期間」「費用負担」など具体的な条件が曖昧なまま離婚してしまうケースです。
本稿では、面会交流をスムーズに行うための取り決め方や、具体的な合意内容の例、ルールづくりでの注意点を解説します。子どもの福祉を最優先に考えつつ、不要な紛争を回避するためのヒントをまとめました。
Q&A
Q1:面会交流はどういう目的で行われるのですか?
面会交流は、離婚後も子どもが非同居親(親権を持たない親)との関係を保ち続けるための制度です。子どもの健全な発達や心理的安定に大きく寄与し、双方の親が子育て責任を負うという理念にも基づいています。
Q2:面会交流の一般的な頻度や時間はどれくらいでしょうか?
月1回~2回、数時間~半日程度の実施が多い事例です。長期休暇(夏休み、冬休み)に数日間の宿泊交流を加えるケースもあります。しかし、子どもの年齢や生活リズム、親の勤務状況によって柔軟に決定されます。
Q3:DVがあった場合でも面会交流は認められますか?
DVや虐待が認められる場合、面会交流を制限したり、一時的に中止することもあります。子どもの安全が最優先なので、監視員付きの面会や、公的施設での面会など、条件付きで行われるケースもあります。裁判所が子どもの福祉を重視しつつ判断します。
Q4:取り決めた面会交流のルールが守られないときはどうしたらいいですか?
まずは合意書や調停調書など、面会交流の取り決めを書面化しておくことが重要です。不履行があれば再度調停を申し立てるか、合意書が公正証書化されていれば強制執行を検討する手段も。ただし、面会交流の実施自体を強制執行するのは難しく、実務上は間接強制や制裁金の仕組みを使う場合があります。
Q5:離婚後、親権を持つ親が再婚する場合、面会交流はどうなるのでしょうか?
原則として、親権者が再婚しても、非監護親の面会交流権は維持されます。ただし、新しい配偶者との関係や、子どもの生活環境の変化から、協議・調停でルールを再度見直すケースもあります。子どもの福祉を基準に調整していくのが一般的です。
解説
面会交流の取り決め方
頻度・日時の決定
- 一般的には月1回程度が多いが、両親の住居距離や勤務状況、子どもの学校行事を考慮して柔軟に設定。
- 連絡手段(メール・LINEなど)をどうするか、日程調整方法を明確にしておくとトラブル回避につながる。
場所・受け渡し方法
- 公園やショッピングモールなど子どもが安心できる環境を選ぶことが多い。
- 乳幼児なら監護親が同席する場合もあるし、DVや紛争が深刻なら面会交流支援機関を利用して監視付き面会を行う。
宿泊交流
- 子どもの年齢が大きく、非監護親の生活環境が整っていれば、宿泊が認められることも。
- 連休や夏休みなど長期休暇に数日滞在させる形が取り決められる場合もあるが、無理な長期滞在は子どもにストレスを与えかねない。
具体例と合意書の文言
頻度例
- 「月1回、毎月第2土曜日の午前10時~午後5時とする。翌月の日程は前月末までにメールで確認する」
- 「夏休み・冬休み・春休み中にそれぞれ1泊2日の宿泊交流を行う」
場所・移動例
- 「面会場所は○○駅近郊の公共施設とし、午前10時に母が子を連れて行き、午後5時に父が同施設で子を母に引き渡す」
- 「車での送迎を父が行い、交通費は父が負担。渋滞などで時間変更が必要なときは前もって連絡する」
連絡手段・費用負担例
- 「連絡は専用のメールアドレスで行い、緊急時は電話をする。面会の交通費や飲食費は面会親が負担する」
- 「旅行やイベントをしたい場合は、1か月前に提案し、母の承諾を得る」
トラブルや制限への対処
DV・虐待がある場合
- 子どもの安全を最優先するため、交流を制限したり、中立第三者の同席や施設利用などが検討される。
- 家庭裁判所の調停や審判で、面会交流に条件をつける例(専門機関の立ち会い・面会回数の削減など)。
面会拒否や不履行
- 親権者が理由なく面会を拒む、非監護親が連絡なく遅刻・キャンセルするなどの不履行が起きる場合、再度の調停申立や履行勧告を家庭裁判所に求める。
- 公正証書化・調停調書化されていれば間接強制の申し立てなどが可能だが、実務上は柔軟な対応が必要。
子ども自身が拒否
- 思春期などで子どもが嫌がる場合、無理やり会わせると逆効果になる可能性。
- カウンセリングを併用するなど専門家の助言を得て、子どもの心情を尊重しながら徐々に交流に慣らすのが望ましい。
弁護士に相談するメリット
具体的条項の設計
- 弁護士が合意書や調停申立において、面会交流の頻度・時間・場所・費用負担などを明確に定める文言を提案。
- 将来的なトラブルを見越した上で、柔軟に対応できる内容を盛り込む。
相手の過度な要求・拒否への対抗
- 面会交流に対して、一方が不合理に拒否、あるいは過剰な要求(長期の宿泊など)をする場合、法的根拠を示して交渉を平等化。
- 弁護士が中立かつ冷静に調整役を担うことで、感情的対立を和らげる。
制限や監視が必要な場合の提案
- DV・虐待歴があるときは、公共機関・面会交流支援センターを利用した監視付き面会を弁護士が提案し、子どもの安全を確保しながら面会交流を行う。
- 必要があれば弁護士が家庭裁判所に対して保護命令や監視条件の申立を行う。
長期的フォローアップ
面会交流は子どもの成長に伴い、内容を変更していく必要があることも。離婚後も弁護士に相談すれば、調停の再申立や合意内容の変更交渉をスムーズに進められる。
まとめ
- 面会交流は、親権を持たない側の親と子どもが継続的に良好な関係を築くために重要な制度であり、離婚時に具体的なルール(頻度、場所、費用など)を明確に決めるほどトラブルが少ない
- DV・虐待のケースでは子どもの安全を優先し、条件付き面会や監視付き面会が設定される場合もあり、裁判所や専門機関の関与が必要となる
- 弁護士に依頼すれば、面会交流の取り決めを公正証書や調停調書として確保し、不履行があっても履行勧告や強制執行が可能になるなど、継続的なトラブル対処がしやすい
- 子ども自身が面会を拒む事例もあるが、カウンセリングや段階的接触を通じて子どもへの負担を軽減するなど、柔軟な方法を検討すべき
子どもの健全な成長にとって、父母双方との交流は大切です。離婚後の衝突を避けるためにも、具体的な面会交流の取り決めを丁寧に行い、必要に応じて弁護士のアドバイスを受けることで、親子のつながりを守りながら円満な離婚手続きを進めることが可能です。
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