はじめに
DV(ドメスティック・バイオレンス)離婚では、子どもの安全が大きな懸念となります。暴力的な環境に置かれると、子ども自体が身体的・心理的なダメージを受けるだけでなく、親権や面会交流に関しても複雑な問題を引き起こします。とりわけ、DV加害者が子どもを利用して被害者を支配しようとするケースもあり、DV被害者が離婚したいと思っていても、「子どもを連れ去られるかもしれない」「暴力から子どもを守りきれるか」といった不安で行動に移れないことがあります。
本稿では、子どもの安全確保と監護をめぐる問題を中心に、DVが絡む離婚でどのように子どもを保護し、適切な親権・監護権の決定を導き出すかを解説します。DV被害者が弁護士や児童相談所などの協力を得て、安心して離婚に踏み切るための具体的な視点をまとめます。
Q&A
Q1:DV加害者から逃げる際、子どもを連れていくにはどうすればいいでしょうか?
子どもに危険が及ぶ可能性が高いなら、児童相談所や配偶者暴力相談支援センターと連携して一時保護を受けるか、シェルターに入る選択肢が考えられます。弁護士に相談して保護命令(子どもへの接近禁止)を申し立てることで、加害者からの連れ去りや接近を防ぐ方法も有効です。
Q2:DV加害者が「子どもを渡さない」と言っている場合、どう対応すればいいですか?
子どもへの暴力リスクがあれば、児童相談所に通報し、一時保護を要請するのが最優先です。加害者が子どもを人質にしているような場合、警察が介入しないケースもあるため、弁護士と協力して親権者指定の仮処分など手続きを検討することがあります。保護命令でも子どもへの接近禁止を発令可能です。
Q3:DV離婚で親権は被害者側が優先されるのでしょうか?
DV加害者は子どもの安全を脅かす恐れがあるため、一般的には被害者側が有利になります。ただし、DVの証拠が不明確だと、裁判所や調停委員がDVの深刻度を認定せずに中立的判断をすることも。しっかりと暴力の実態を立証することが大切です。
Q4:子どもがDVを目撃しているだけで、DV加害者が直接子どもに暴力を振るっていない場合でも、監護権に影響ありますか?
子どもの前で親が暴力を受ける「面前DV」は、子どもの心に深い傷を与えるとされています。たとえ直接暴力されていなくても、環境要因として子どもの福祉を害するとみなされ、親権・監護権の判断で加害者は不利になりやすいです。
Q5:離婚後、DV加害者が子どもへの面会交流を求めてきた場合、断れますか?
子どもの安全・福祉を最優先すれば、DV加害者との面会交流は制限や禁止が認められる可能性があります。調停・裁判で「子どもの心身に危険がある」と主張し、監視付き面会や一切の面会禁止を求めることも可能です。弁護士と相談し、保護命令と併用するケースもあります。
解説
子どもの安全確保の手段
児童相談所の一時保護
- 子どもが加害者のDVを受けたり、面前DVで心理的ダメージを負っている場合、児童相談所が一時保護する制度がある。
- 親権者や同居人の同意がなくても、子どもの安全確保が優先されると判断されれば実施される。
シェルターでの避難
- DV被害者と子どもが同居加害者から逃れる場合、公的・民間シェルターへ入所し、一時的に子どもともども身を隠す。
- 学校や保育園への影響があるが、安全を最優先するための臨時措置として用いられる。
保護命令(子への接近禁止)
- DV防止法に基づく保護命令は、被害者だけでなく子どもへの接近も禁止することができる。
- 加害者が連れ去りを狙っているなら、裁判所に子への接近禁止命令の発令を求める。
親権・監護権の決定への影響
DV加害者は親権取得が極めて困難
- 加害者が子どもにも暴力を振るっていた、または母親への暴力を子どもの前で行っていた(面前DV)などの場合、子どもの福祉を著しく害すると判断される。
- 裁判所はDV加害者に親権や監護権を与えることを極慎重に扱う。
面前DVの深刻さ
- 子どもがDVを目撃するだけでも心理的外傷が大きく、長期的なトラウマを抱えがち。
- 親権判断で面前DVの事実があると、被害者側(DVを受けた親)が有利に働くのが実務上の傾向。
面会交流の制限
- 離婚後に加害者が子どもとの面会交流を求める場合、DVの危険があれば制限または禁止が判断されることがある。
- 子どもの安全を守るために第三者立会いや公的施設での面会など特別な形態が必要になるケースもある。
DV離婚後の子どもの監護問題
離婚後の住居と学校
- 被害者が子どもを引き取り、新居や転校を考える場合、自治体のひとり親支援や住宅支援を活用。
- DV加害者が子どもの学校に押しかけないよう、住所非開示や学校との情報共有も必要。
再度の加害行為やストーカー化
- 離婚後も加害者が子どもをダシに接触を図ったり、ストーカー行為に及ぶ事例がある。
- 弁護士や支援センターと相談し、別の保護命令やストーカー規制法などを駆使し、再発を防ぐ措置を講じる。
子の心のケア
- DV家庭で育った子どもは、PTSDや不安障害を抱えることがあり、カウンセリングが重要。
- 離婚後も定期的に子どもの心理状態をフォローし、必要に応じて専門機関を利用するのが望ましい。
弁護士に相談するメリット
安全第一の離婚手続きをコーディネート
- 弁護士がDV事例を把握し、保護命令やシェルターなどを組み合わせて被害者と子どもの安全を確保しながら、同時に親権や慰謝料の法的手続きを進行。
- 当事者が自分で加害者と交渉せずに済み、身体的・精神的リスクを軽減。
児童相談所・警察との連携
- 弁護士が児童相談所や警察へ状況を正確に伝え、一時保護や捜査をスムーズに実施できるよう調整。
- 書類の不備や連携ミスを防ぎ、被害者が混乱しないよう導く。
親権・監護権でのDV立証
- 弁護士がDVの証拠(診断書・写真・録音など)を整理し、調停・裁判で「加害者が子どもの福祉を害する恐れ」を具体的に説得。
- 結果的に被害者が親権や監護権を得やすくなり、加害者側の面会交流を制限する根拠となる。
離婚後も総合サポート
- 離婚が成立してもDV加害者の脅迫やストーキングが続く場合、弁護士が追加の保護命令や刑事告訴を迅速に行える。
- 子どもの心のケアや生活支援(母子手当など公的制度利用)についても、アドバイスを行うことが可能。
まとめ
- DV離婚で最も憂慮すべきは子どもの安全確保であり、児童相談所の一時保護やシェルター、保護命令(子への接近禁止)などを組み合わせることで加害者から逃れつつ離婚手続きを進める必要がある
- DV加害者が直接子どもを殴らなくても、面前DVによる子どもの心的外傷が重大視され、親権争いで加害者は不利になりやすい
- 離婚後も加害者からストーカー的接触や連れ去りリスクが残る場合、弁護士と連携して再度の保護命令や警察対応を行い、子どもと共に安全な環境を保つ
- 弁護士に相談すれば、DV証拠の収集から保護命令手続き、親権・監護権の主張まで包括的にサポートを受けられ、子どものケアや行政支援の情報も得られる
DV被害者が離婚を検討するとき、子どもの安全対策が最重要課題となります。弁護士や公的機関(児童相談所・警察・支援センター)の力を借りながら、シェルターなどを利用し、安全を確保した上で離婚調停や裁判で親権・監護権を取得する流れが理想です。子どもの心を守り、DV連鎖を断ち切るためにも、積極的な相談と法的手段を活用しましょう。
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