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「これってDV?」身体的・精神的・経済的DVの具体例と、離婚に向けた正しい対処法

2025-12-14
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はじめに

「夫に殴られたことはないけれど、毎日怒鳴られて怖い」
「生活費をまったく渡してもらえず、自分の貯金を切り崩して生活している」

このような状況にある場合、あなたはすでにDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者かもしれません。

DVとは、配偶者やパートナーからの暴力全般を指します。しかし、多くの被害者の方は「あざができるほどの暴力ではないから」「私が我慢すればいいから」と考え、自分が被害を受けていることに気づかないケースが少なくありません。

DVは、放置すればエスカレートする傾向があり、被害者の心身に深刻なダメージを与えます。また、民法上の「離婚事由」としても認められる重大な行為です。

本記事では、「身体的DV」「精神的DV」「経済的DV」の具体的な事例を挙げながら、自分が置かれている状況を客観的に判断するための基準と、保護命令や慰謝料請求を含めた解決策について、弁護士法人長瀬総合法律事務所が解説します。

DV離婚に関するQ&A

Q1. 夫から直接暴力を振るわれたことはありませんが、言葉の暴力がひどいです。これはDVとして認められますか?

はい、精神的DV(モラル・ハラスメント)として認められます。

「誰のおかげで飯が食えるんだ」と罵倒したり、無視を続けたり、行動を過度に監視したりする行為は、精神的な暴力です。これらが原因で婚姻関係が破綻し、修復不可能となれば、裁判でも離婚が認められる可能性があります。

Q2. 生活費を渡さない「経済的DV」の場合、どのような証拠が必要ですか?

家計の実態がわかる記録が重要です。

預金通帳の履歴(生活費の入金がないこと)、家計簿(自分で生活費を負担している記録)、夫に生活費を求めた際のLINEやメールのやり取りなどが証拠になります。「生活費を渡さない」という行為は、民法上の「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。

Q3. 夫が怖くて別れ話を切り出せません。どうすればいいですか?

無理に二人だけで話し合おうとせず、まずは別居して身の安全を確保してください。

DV加害者は、別れ話をすると逆上し、暴力が激化するリスクがあります。まずは警察や配偶者暴力相談支援センターに相談し、シェルターへの避難や「保護命令」の申し立てを検討しましょう。弁護士を代理人に立てれば、夫と直接顔を合わせずに離婚協議を進めることができます。

解説:あなたのケースはどれ?DVの3つの種類と具体例

DVには大きく分けて「身体的」「精神的」「経済的」の3つの種類があります。これらは単独で起きることもあれば、複合的に行われることもあります。

1. 身体的DV(フィジカル・バイオレンス)

身体に対する直接的な暴力行為です。命の危険に直結するため、最も緊急度が高い状態です。

具体的な行為

  • 平手打ちをする、拳で殴る、足で蹴る。
  • 髪の毛を引っ張る、首を絞める。
  • 物を投げつける(たとえ当たらなくても、恐怖を与えれば暴力に該当します)。
  • 刃物を突きつける、振り回す。
  • 引きずり回す、突き飛ばす。

【ポイント】
「一度だけだから」「酒に酔っていたから」というのは言い訳になりません。たった一度の暴力でも、信頼関係を破壊する十分な離婚事由となります。怪我をした場合は、必ず病院で診断書を取得し、患部の写真を撮ってください。

2. 精神的DV(モラル・ハラスメント)

言葉や態度によって相手の心を傷つけ、精神的に追い詰める暴力です。外傷が見えないため、周囲に理解されにくい特徴があります。

具体的な行為

  • 暴言・侮辱: 「役立たず」「死ね」「誰のおかげで生活できているんだ」と大声で怒鳴る。
  • 無視: 何週間も口をきかない、存在を無視する。
  • 束縛・監視: スマホの履歴を勝手にチェックする、外出先から何度も連絡を強要する、GPSで行動を監視する。
  • 交友関係の制限: 実家への帰省を禁じる、友人との付き合いを制限し、社会的に孤立させる。
  • 責任転嫁: 「お前が俺を怒らせるのが悪い」と、暴力の原因を被害者のせいにする。

【ポイント】
精神的DVを受け続けると、被害者は「私が悪いんだ」と洗脳された状態(学習性無力感)になり、逃げる気力を奪われてしまいます。これは支配の手段であり、あなたの責任ではありません。日々の暴言を録音したり、日記に詳細を記録したりすることが有効な証拠となります。

3. 経済的DV

生活費を渡さない、お金の自由を奪うなどして、配偶者を経済的に追い詰める行為です。

具体的な行為

  • 夫に十分な収入があるのに、生活費を渡さない。
  • 生活費をごく少額(1日数百円など)しか渡さず、レシートの提出を厳しく求める。
  • 妻の給与や貯金をすべて管理し、自由に使わせない。
  • 「外で働くな」と就労を禁止し、経済的に自立させない。
  • 借金を重ね、妻に尻拭いをさせる。

【ポイント】
夫婦には、互いの資産や収入に応じて生活レベルを同等に保つ「婚姻費用分担義務」があります。経済的DVは、この義務に違反する行為であり、法的な支払い請求(婚姻費用分担請求)が可能です。

※性的DVについて
上記に加え、嫌がっているのに性行為を強要する、避妊に協力しない、中絶を強要するといった行為も「性的DV」にあたります。これも重大な人権侵害であり、離婚事由となります。

DVのサイクルと「逃げられない」心理

DVには「サイクル」があると言われています。

  1. 蓄積期: 加害者のイライラが募り、些細なことで不機嫌になる時期。
  2. 爆発期: 激しい暴力(身体的・精神的)が振るわれる時期。
  3. ハネムーン期: 暴力の後、急に優しくなり「もう二度としない」「愛している」と謝罪する時期。

この「ハネムーン期」の優しさにほだされ、「本当は優しい人なんだ」「私が支えてあげなきゃ」と思い込んでしまい、離婚や別居の決意が鈍ってしまうのがDVの恐ろしさです。しかし、専門的なプログラムを受けない限り、DVが自然になくなることは極めて稀です。サイクルは繰り返され、徐々に暴力の程度がひどくなっていくのが一般的です。

DV被害者が取るべき対処法:保護命令から慰謝料請求まで

DV加害者との離婚は、通常の離婚協議とは異なるアプローチが必要です。

1. 身の安全を確保する(別居・シェルター)

同居したままの話し合いは危険です。まずは別居を最優先してください。行き先がない場合は、配偶者暴力相談支援センターや警察に相談し、一時保護シェルターを利用することも検討しましょう。

2. 「保護命令」を申し立てる

身体的暴力や生命に対する脅迫があり、今後も暴力振るわれるおそれがある場合、裁判所に「保護命令」を申し立てることができます。

  • 接近禁止命令: 被害者の住居や勤務先への接近を6ヶ月間禁止する。
  • 退去命令: 加害者を家から2ヶ月間退去させる。
  • 電話等禁止命令: 面会の要求や深夜の電話などを禁止する。

これに違反すると刑罰が科されるため、強力な防波堤となります。

3. 離婚手続きと慰謝料請求

DV事案では、当事者同士の話し合い(協議離婚)は困難かつ危険です。弁護士を代理人に立てて交渉するか、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てます。

調停では、相手と顔を合わせないよう配慮(到着時間をずらす、別室で待機するなど)がなされます。

また、DVは不法行為ですので、慰謝料を請求できます。

DV慰謝料の相場: 50万円〜300万円程度

暴力の期間、頻度、怪我の程度、精神疾患の有無(うつ病やPTSDの診断書)などによって金額は変動します。証拠がどれだけ揃っているかが、適正な慰謝料を獲得するカギとなります。

弁護士に相談するメリット

DV問題を弁護士に依頼することは、単なる法的手続き以上の意味を持ちます。

  1. 物理的・精神的な「盾」になる
    弁護士が代理人になると、加害者からの連絡はすべて弁護士が窓口となります。加害者と直接話す必要がなくなり、恐怖から解放されます。
  2. 保護命令の迅速な申し立て
    保護命令はスピードが命です。弁護士は、陳述書の作成や証拠の整理を迅速に行い、裁判所への申し立てをサポートします。
  3. 有利な条件での離婚成立
    恐怖心から「とにかく離婚できればいい」と、財産分与や慰謝料を放棄してしまう被害者の方がいます。弁護士は、あなたが受け取るべき正当な権利(親権、養育費、慰謝料、財産分与)を主張し、離婚後の生活基盤を確保します。

まとめ

DV(ドメスティック・バイオレンス)の実態と対処法について解説しました。

  • DVの種類: 身体的暴力だけでなく、精神的暴力(モラハラ)や経済的暴力もDVです。
  • DVのサイクル: 「ハネムーン期(優しくなる時期)」に騙されず、暴力が繰り返される構造を理解してください。
  • 対処法: まずは安全確保(別居)。そして証拠を集め、保護命令や法的手段を用います。

「私が我慢すれば家庭はうまくいく」

そう思って耐えている間にも、あなたの心と体は傷ついていきます。そして、それはお子様にとっても健全な環境とは言えません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、DV被害に苦しむ方の味方です。私たちは、あなたの安全を最優先に考え、警察や行政とも連携しながら、新しい人生への第一歩をサポートします。

相談内容は厳守されます。相手に知られることはありません。まずは勇気を出して、当事務所にご相談ください。

【次のステップ】

もし今、身の危険を感じている場合は、警察(110番)に通報することもご検討ください。

今後の離婚や安全確保について相談したい方は、怪我の写真、医師の診断書、暴言の録音、日記など、手元にある証拠を持って当事務所の法律相談をご予約ください。証拠がなくても、まずは状況をお話しいただくだけで構いません。

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