心理的虐待を理由とする離婚のポイント

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はじめに

本稿では、言葉による暴力や無視、見下す態度などの「心理的虐待(精神的虐待)」について解説します。近年、実際に殴る・蹴るといった身体的暴力だけでなく、「言葉による暴力」「人を無視する」「相手を意図的に孤立させる」といった精神的な苦痛を与えるDV(ドメスティック・バイオレンス)の相談件数が増えています。ところが、被害を受けている方の中には、それが立派な虐待に該当するにもかかわらず、深刻な状況とは自覚できずに我慢してしまうケースも少なくありません。

本稿では、心理的虐待やDVについて解説するとともに、具体的なQAコーナーで皆さまの疑問にお答えし、さらに、弁護士に相談するメリットや離婚を検討する際の注意点などを詳しくご紹介します。

この記事を通じて、「心理的虐待がどのようなものか」「どのような行為がDVやモラルハラスメントに該当するのか」「被害を受けている場合にどう行動すればいいのか」をご理解いただき、ご自身やご家族・身近な方を守るための一助としていただければと思います。

Q&A

ここでは、心理的虐待・精神的DVに関するよくあるご質問をまとめ、Q&A形式で回答いたします。もし、以下に挙げるものに当てはまる状況があれば、できるだけお早めに専門家にご相談されることをおすすめします。

Q1. 夫(または妻)から強い口調で罵倒されるのですが、これはDVですか?

強い言葉で日常的に罵られたり、見下される態度をとられることは心理的DVに該当する可能性があります。DVというと殴る・蹴るといった身体的暴力ばかりが注目されがちですが、言葉の暴力や無視も心を傷つける「精神的虐待」として、DVの一種です。

Q2. 相手に無視され続けるのですが、これもDVに含まれますか?

話しかけても一切返事をしてくれない、家庭内の意思疎通を完全に断たれている状態など、意図的に相手の存在や感情を無視する行為もDV(心理的虐待)として扱われます。このような状態が長く続けば、被害者は精神的に追い詰められ、「自分が悪いのかもしれない」と自責の念を抱いたり、鬱状態に陥ってしまうこともあるでしょう。

Q3. 離婚を切り出したいのですが、相手が感情的になりそうで怖いです。どうしたらいいでしょうか?

もし、話し合いが感情的になってしまう恐れがある場合は、弁護士法人長瀬総合法律事務所など、第三者を交えて冷静に進めるのが得策です。弁護士が間に入ることで、感情的な衝突や危険を回避しつつ、手続きをスムーズに行うことができます。

Q4. 子どもが巻き込まれています。子どもへの心理的虐待に気づけるサインはありますか?

親から子への心理的虐待の場合、以下のようなサインが見られることがあります。

  • 親の顔色を常にうかがい、萎縮している
  • 自分の意見や気持ちを全く言えず、無表情になっている
  • 親がいない場面では過度に不安定になり、泣き出してしまう
  • 学校や習い事など、人前でも極端に自信がなくなる

こうしたサインに気づいたら、決して放置せず、スクールカウンセラーや医師、弁護士など、信頼できる専門家に早急に相談しましょう。

Q5. 夫からの心理的虐待を証明するために何か集めるべき証拠はありますか?

録音やLINE・メールのやり取りが残せるのであれば、必ず保管しておきましょう。罵詈雑言を録音しておくこと、暴力の痕がある場合は写真を残すことも有効です。必要があれば、メモ書きの日記(いつ、どんな発言や行為があったのか)を詳細に記録しておくのも証拠となります。こうした証拠がそろっていれば、離婚を切り出す際や、親権を争う場合にも有利に働く可能性があります。

解説

心理的虐待やDVに関する基礎知識や背景、また離婚や対処法に関する解説を行います。心理的虐待は、被害を受ける側の「心の傷」を深くするだけでなく、その人の自己肯定感や社会的なつながりを奪い、正常な判断を難しくしてしまう非常に深刻な問題です。正しい知識を持ち、周囲の助けを得ることが重要になります。

1. 心理的虐待(精神的虐待)の定義

心理的虐待とは、言葉や態度を用いて相手の尊厳を傷つけたり、恐怖を与えたりする行為を指します。典型的なものには、以下が含まれます。

  • 暴言・罵倒:人格を否定する言葉を投げつける、容姿や能力を過度に批判する
  • 無視・仲間外れ:相手の意見を一切聞かない、存在をあえて無視する
  • 脅迫:子どもや親族への危害をほのめかし、相手を支配下に置こうとする
  • 社会的孤立:外出や友人との連絡を制限させ、社会的なつながりを強制的に断つ

こうした行為は、一見「大したことない」と思われがちですが、被害者の心には大きなダメージをもたらします。特に夫婦間の関係において、「精神的な暴力が繰り返されることで、離婚を検討せざるを得ない」というケースも年々増えています。

2. 増加する心理的虐待による離婚相談

近年、各種相談窓口や法律事務所などで取り扱う離婚相談の中でも、心理的虐待に関連するものが増加傾向にあります。

このような虐待は、暴力の“見た目”が分かりにくいぶん、周囲も気づきにくく、被害者本人でさえ「自分が悪いのではないか」と思い込みがちです。また、外面が良いパートナーに対して、「誰も信じてくれないかもしれない」と被害者が不安を抱き、相談に踏み切れずに苦しむケースも多々あります。

3. 当てはまる行為の具体例

心理的虐待には、以下のような行為が当てはまると考えられます。

  • 日常的に罵る:相手を侮辱したり、大声でどなりつけたりする
  • 無視する:話しかけても無反応で、生活上の必要な会話すら拒否する
  • 行動を監視する:相手の外出や連絡先を逐一チェックし、自由を奪う
  • 「殺す」などの脅し文句:子どもや身内へ危害を加えるとちらつかせる
  • ペットを虐待する:被害者に恐怖を与え、言うことを聞かせようとする

こういった行為が重なれば重なるほど、被害者の精神状態は不安定になり、うつ症状や適応障害などを発症するリスクが高まります。

4. 長期的な心理的虐待がもたらす影響

心理的虐待が長期にわたって続くと、被害者は自己肯定感を失い、「こんな思いをするのは私が悪いからだ」と自分を責めるようになります。これは一種のマインドコントロール下に置かれる状態ともいえ、やがて正常な判断能力を奪われ、逃げ出す気力すら失ってしまうことがあります。

また、配偶者からの心理的虐待を受けている家庭では、子どももその影響を強く受けることが少なくありません。親同士の言い争いを目の当たりにすることで不安定になり、学校生活や学習面にも支障をきたす恐れがあります。

5. 心理的虐待をする配偶者の特徴と原因

心理的虐待を行う男性(あるいは女性)の中には、表面上は社会的に「穏やかで、仕事も真面目」と映る人が多く存在します。会社や友人の前では非常に礼儀正しいのに、家庭内ではパートナーや子どもに対して罵声を浴びせたり、支配的な態度を取ったりするケースがあります。

その原因としては、幼少期に親から精神的虐待を受けて育ったなど、学習された行動パターンである可能性もありますし、過度のストレスから逃げ場を失い、家庭内で爆発させることも考えられます。いずれの場合も、本人が虐待行為の深刻さに気づきにくいため、改善は容易ではありません。

6. 離婚を考える際のポイント:証拠集めと第三者の活用

心理的虐待を理由に離婚を考える場合、まずは以下のポイントを押さえておきましょう。

証拠を集める

  • 録音:罵詈雑言や脅迫的な発言をスマートフォンやICレコーダーなどで録音
  • 写真・映像:身体的な暴力の痕や、家の中が荒らされた状況を撮影
  • SNS・メール・メモ:日々のやり取りや日記記録など、相手の発言や態度が分かるものを保管

こうした証拠を集めておくことで、調停や裁判で有利に働く場合があります。また、後になって「そんなことは言っていない」「事実無根だ」と否定されても、証拠によって事実を示すことができます。

第三者機関に相談する

DV問題に精通した弁護士や、行政のDV相談窓口、警察、シェルターなど、利用できる第三者機関は数多く存在します。心理的なDVの場合、殴る蹴るといった身体的暴力がないため、自分が被害を受けていると認識しづらいことがあります。しかし、少しでも「おかしい」と感じたら、迷わず第三者に相談しましょう。

とりわけ、弁護士が間に入れば、相手方との交渉を代理で進めることが可能です。話し合いが過度に感情的になったり、危険を伴ったりしそうなときは、安全に事を進めるためにも弁護士のサポートが有効になります。

弁護士に相談するメリット

ここでは、心理的虐待や離婚問題について、弁護士に相談することがどのような利点をもたらすかご説明します。

  1. 冷静な交渉が可能
    当事者同士の話し合いでは、どうしても感情的になりがちです。弁護士が代理人として入ることで、法律的な観点から落ち着いた交渉を行うことができます。
  2. 適正な権利を守るためのアドバイス
    DVや心理的虐待の被害者が請求できる慰謝料や、親権・養育費をめぐる問題など、法的手続きの面で必要な情報やアドバイスを受けられます。相手側からの反論や主張に対しても、法的根拠に基づき反駁が可能です。
  3. 安心して離婚手続きを進められる
    日常的に罵られたり、無視されたりしていると、被害者の方は精神的にも疲弊し、なかなか一歩が踏み出せないことが多いです。弁護士が協力してくれることで、「自分ひとりで戦うわけではない」という安心感が得られ、離婚に向けた手続きをスムーズに進めやすくなります。
  4. 子どもの安全と将来を守る
    もしお子さんが心理的虐待の被害者になっている、または両親の不和を日常的に目にしている場合は、迅速な対応が求められます。弁護士と連携しながら児童相談所や関係機関とも協力することで、子どもの心身を守るための具体的な対策ができます。

まとめ

心理的虐待(精神的虐待)は、身体的な暴力がない分、周囲や被害者自身が深刻に受け止められないまま悪化していくケースが多々あります。しかし、言葉で傷つけられ続けたり、無視や脅迫を受けたりすることは、「DV」であり、「虐待」に当たり得ます。長期間にわたり精神的虐待を受けると、被害者の方が自己肯定感を失い、深刻な精神的ダメージを負ってしまいがちです。

もし心当たりがある方は、勇気を出して専門家や第三者機関に相談してみてください。心理的虐待は「ただのけんか」や「言い過ぎ」ではありません。自分や子どもを守るためにも、「これはおかしい」と感じた時点で、早めに行動を起こすことが重要です。

特に離婚を考える場合には、証拠集めや、DVに関する法律に詳しい弁護士への相談をおすすめします。離婚だけがゴールではなく、「自分や家族の心身を守ること」こそが第一です。弁護士と一緒に対策を検討することで、今後の生活を見据えた最善策を見つけていくことができます。


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