財産分与は本当に2分の1なの?知っておきたい離婚と財産分与のポイント

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はじめに

離婚を考えるとき、もっとも気になる要素のひとつが「財産分与」です。結婚生活のなかで築いた共有財産をどのように分けるのか、どのくらいの割合が妥当なのかといった点は、多くの方にとって大きな関心事でしょう。一般的には「夫婦で2分の1ずつ」と言われることが多いですが、実際にはどうなのでしょうか。

本稿では、弁護士法人長瀬総合法律事務所が、財産分与の基本的な考え方やQ&A形式での具体例、さらには専門家(弁護士)に相談するメリットなどを解説します。民法上の定めや実務上の取り扱いに触れながら、皆様が少しでも安心して離婚協議に臨めるような知識を提供いたします。

なお、本稿の情報は一般的な法制度の紹介であり、個別の事案に対する法的アドバイスではありません。実際の紛争や相談に際しては、弁護士に直接ご相談ください。

Q&A

財産分与の割合は一律で決められているのですか?

民法には、明確に「夫婦の財産は○○の割合で分ける」といった数値規定はありません。しかし、実務では“2分の1ルール”として「婚姻後に夫婦で協力して築いた財産は、原則として半分ずつ」という考え方が定着しています。これを前提に話し合いが行われることが多いため、実務上はおおむね「2分の1ずつ」の割合から大きく動くことはありません。

例外的に「2分の1」にならないケースもあるのですか?

例外はあります。たとえば、夫または妻の特殊な才能や多大な努力によって高額所得を得ていたケースや、相手が家事や育児にまったく関与できないような事情があったケースなどが考えられます。さらに、何億円もの年収があるような極端に高額な事例では、2分の1ではなく「6:4」や「7:3」などの割合が認められる場合があります。

具体的にどのようなケースで「2分の1ルール」が変わるのですか?

特別に夫婦の協力関係が認められなかったり、一方の配偶者が明らかに財産形成に寄与していないと判断されたりする場合です。具体的には以下のような事情が考慮される可能性があります。

  • 多額の初期投資が一方の特有財産であった場合
    結婚前にすでに相当額の資産を築いていて、その資産をもとに婚姻後の財産が形成されたようなケース
  • 一方の特殊な才能や技術により得られた収入が大半を占める場合
    スポーツ選手や芸術家、発明家など、その才能が突出しているために財産形成の大部分を担ったケース
  • 夫婦双方の役割が極端に偏っていた場合
    家事・育児にいっさい関与せず、婚姻生活中の協力関係がほとんど認められないケース

ただし、これらの要素を裁判所がどの程度加味するかは事案ごとに異なります。多くの場合は「婚姻生活の背景に対する両者の貢献度」を重視し、結果としてほぼ半分ずつに落ち着くことが一般的です。

会社の経営者ですが、家族との時間を十分に取れず、妻から離婚を請求されました。財産分与の割合に不満がありますが、どうしたらよいですか?

まずは話し合いで合意を目指すことが大切です。会社経営のケースでも、原則は2分の1の財産分与ルールが適用されます。経営者だからといって必ずしも「自分が事業を支えてきた分、多めに財産をもらえる」というわけではありません。ただし、もし結婚前に用意していた資産をそのまま事業に投下していたり、特殊な才能によって高額収入を得ていたりする場合には、2分の1ルールから変動する余地があるかもしれません。最終的には個別の事情を整理して、法的観点から主張を行う必要があります。

解説

財産分与の基本的な考え方

財産分与とは、夫婦が離婚する際に、婚姻中に形成した共同財産を精算・清算する手続きです。民法768条において、財産分与について規定がありますが、「具体的にどの程度の割合で分けるのか」という明確な数値は示されていません。このため、法律上は当事者の協議または家庭裁判所の審判によって決定されることになります。

その協議や審判の基礎となっているのが、実務上定着している「2分の1ルール」です。夫婦は共同生活を営むうえで、お互いが家事や育児、仕事などで協力しあっていると考えられます。したがって、「婚姻中に築かれた財産は夫婦の共同成果」という観点から、原則として2分の1ずつ分けましょう、というのが実務の基本的な流れです。

財産分与の対象となる財産

財産分与の対象は「婚姻後に形成された財産」です。結婚前から保有していた財産や、結婚期間中でも相続や贈与で個人名義で取得した財産などは「特有財産」として分与の対象外となるのが原則です。ただし、特有財産と婚姻後に形成された財産との混在がある場合などは、どの部分が特有財産なのかを区分する必要があり、複雑化することもあります。

2分の1ルールから動く可能性のある事例

「2分の1」が原則とはいえ、特例的に割合が変動する事例があります。たとえば下記のような場合です。

  • 高額所得者や特殊技能者の場合
    何億円もの収入を得ている場合や、特殊技能や芸術的才能で高額収入を得ている場合などで、その才能やスキルが財産形成に圧倒的な影響を与えていると評価される場合。
  • 夫婦間で財産形成への寄与度が極端に異なる場合
    婚姻後すぐに別居してしまい、協力関係がほとんど認められない場合などは、その分を考慮して割合が変更される可能性があります。

とはいえ、実務的には特殊な事情がない限り、2分の1から大きく変わることはまれです。

会社経営者と財産分与

会社を経営していると、「事業が成功したのは自分の才覚や努力によるものだ」という思いが強くなる方も少なくありません。しかしながら、たとえ経営者であっても、夫婦で協力してきた面があれば、基本的には2分の1ルールが適用されます。ただし、結婚前から会社を興していた場合や、特殊技術によって得られた収入がほとんどの場合は、寄与度の考慮により2分の1以外になる可能性も否定できません。

話し合いの進め方

離婚時の財産分与割合については、まず夫婦間での話し合い(協議)が行われます。協議が整わない場合は、家庭裁判所の調停、それでも合意に至らなければ審判・訴訟と進んでいきます。

  • 協議
    お互いが納得できるラインを探るために、資産の整理を行いましょう。
  • 調停
    家庭裁判所の調停委員が間に入り、話し合いのサポートを行います。
  • 審判・訴訟
    協議や調停で合意できなかった場合は、裁判官が法律と事実に基づいて判断を下します。

この流れのなかで、財産分与の判断においては「夫婦がどの程度協力して財産形成に寄与したか」が重視されます。夫婦間の生活実態をどのように主張・立証するかが重要です。

弁護士に相談するメリット

離婚の際の財産分与の話し合いでこじれてしまうと、夫婦の感情的対立が深まり、スムーズに解決しにくくなることも少なくありません。そこで、専門家である弁護士への相談が有益です。

  1. 適切なアドバイスが得られる
    財産分与に関しては、法律上のルールだけでなく、裁判例や実務の運用も理解する必要があります。弁護士はこれらの知識や経験をもとに、個別事案に応じた適切なアドバイスを行えます。
  2. 交渉を円滑に進めやすくなる
    直接夫婦同士でやりとりすると、感情的になってしまい協議が難航しがちです。弁護士が間に入ることで、専門的な視点から落としどころを模索でき、冷静な話し合いへ導くことが期待できます。
  3. 書面作成や手続きを任せられる
    離婚協議書や調停申立書など、法的書面の作成には専門知識が必要です。弁護士が書面を作成すれば要点を的確に押さえられ、後々の紛争リスクを減らすことができます。
  4. 不利な合意を避けられる
    事情を知らないまま、“言われるがまま”に署名してしまうと、本来得られるはずの権利を手放してしまう可能性があります。弁護士がアドバイスをすることで、不利な合意を結んでしまうリスクを回避できます。

まとめ

  • 財産分与の割合は法律で一律に「○対○」と定められているわけではありません。ただし、「2分の1ずつ分ける」という実務的なルールが確立しており、多くの事例でそれが当てはまります。
  • 例外的に2分の1から変動することはあるものの、それはごく稀なケースです。高額所得者や特殊才能の事案などで、夫婦双方の寄与度を厳密に考慮した結果、「6:4」「7:3」といった割合が認められる場合もあります。
  • 会社経営者や高年収の方でも、2分の1ルールになることが多いというのが実務の現状です。
  • とはいえ、各夫婦の事情は千差万別です。自分のケースではどうなのかを知るためには、専門家(弁護士)のアドバイスを聞くことが有効です。
  • 離婚は人生における大きな決断の一つです。財産分与で不満やトラブルが生じる前に、あるいは紛争が長期化する前に、なるべく早く弁護士に相談し、客観的なアドバイスを得ることをおすすめします。

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