はじめに
多忙な勤務スケジュールを抱える医師が離婚を決断した場合、子どもの面会交流をどう継続していくかは大きな課題となります。夜勤や当直、急な呼び出しなど不規則な勤務形態の中で、離婚後に子どもと過ごす時間をどのように確保できるか、親権争いにおいて不利にならないか、さまざまな不安が生じることでしょう。
本稿では、医師の不規則な勤務形態を考慮した面会交流の工夫や、親権・監護権をめぐる争いで不利にならないためのポイントを解説します。忙しい医師が離婚後も子どもとの絆を守るための具体的な対応方法を整理しました。
Q&A
Q1:夜勤や当直が多く、決まった休みが取りづらいです。面会交流はどのように設定すればいいでしょうか?
弾力的なスケジュールを組むことが重要です。例えば「月に2日、医師の連休に合わせて宿泊を伴う面会を行う」「平日夜にはビデオ通話を行う」など、柔軟に合意できるよう、離婚協議や調停で具体的な取り決めを作るとよいでしょう。
Q2:夜勤明けで疲れていても、面会交流の義務を守らなければいけませんか?
原則として、面会交流は子どもの利益を第一に考えます。ただし、医師の体調や安全運転などの観点から、無理な日程は避けるべきです。必要に応じて、調停で日程再調整を申立することや、弁護士が相手方と協議して変更することも可能です。
Q3:勤務先がシフト変更に応じてくれず、予定した面会交流がキャンセルになりがちです。親権争いで不利になりますか?
やむを得ない業務都合でキャンセルが続くなら、不履行の正当理由として認められる場合があります。ただし、相手方の理解や調停委員の判断を得るには、勤務先のシフト表や医師としての業務実態を客観的に提示することが大切です。
Q4:子どもがいるクリニックで働いています。離婚後、子どもを引き取りたいが不規則勤務は変えられません。どうすればよいでしょうか?
まずは監護体制を整えましょう。実家の協力やベビーシッター、保育サービスを活用し、勤務中でも子どもが安心して過ごせる環境を示せば、親権争いでも有利に働く可能性があります。弁護士に相談しながら証拠として準備しておくと良いでしょう。
Q5:遠方に住む子どもと面会交流する場合、時間と金銭負担が大きいです。どう工夫すればよいですか?
オンライン面会交流(ビデオ通話)を取り入れたり、面会交流時の交通費を配偶者と分担するルールを設定するなどの方法があります。離婚協議や調停であらかじめ詳細を取り決めておけば、後からのトラブルを減らせます。
解説
医師が置かれやすい勤務形態の特徴
不規則な勤務スケジュール
- 夜勤や当直、緊急呼び出しがあるため、予定が立てづらい。
- 週末や祝日も勤務になることが多く、一般的な面会交流(週末に子どもを預かるなど)が難しい。
連休が少ない/取得しづらい
- 医療機関の人手不足や責任感から、休暇を取りづらい職場環境が多い。
- 長期休暇を取れないと子どもとゆっくり過ごす機会が限られるため、継続的な関係性が築きにくい。
勤務形態の多様化
- 大学病院などで勤務しつつ、非常勤で他院に行くなど複数の収入源を持つケース。
- 勤務先ごとにシフトが異なるため、合計するとハードスケジュールになりがち。
面会交流の具体的な工夫
フレキシブルなスケジューリング
- カレンダー共有アプリを使い、当直スケジュールが確定したタイミングで面会日を設定。
- 一定の基準(例えば「月に2回は必ず面会の機会を持つ」)を設け、実際の日程は柔軟に変動させる。
オンライン交流
- ビデオ通話ツール(Zoom、LINE、Skypeなど)を活用し、短時間でも子どもの顔を見ながら会話する。
- 当直中などでも少しの空き時間にビデオ通話できれば、子どもとの距離を感じにくい。
長期休暇や連休を計画的に使う
- 年に数回の連休取得が可能なら、その期間に集中的に子どもと過ごす時間を確保。
- 旅行やイベントを一緒に楽しむことで、普段の会えない時間をカバーする。
サポート体制を可視化
- 子どもが小さい場合、実家やベビーシッターの協力体制を組み、子どもの生活リズムを乱さず面会できる仕組みを整える。
- 相手に対して「子どもの生活に支障なく面会できる環境」を示すことで安心感を与える。
面会交流が親権・監護権に及ぼす影響
監護実績と今後の見通し
- 親権争いでは、「どちらが子どもをより安定して監護できるか」が重視される。
- 医師の多忙さが原因で監護実績が乏しいと、不利に働く可能性あり。逆に、勤務時間帯でも周囲のサポートを得て子どもをきちんとケアできるなら有利な事情となる。
面会交流の履行状況
- 面会交流の約束をきちんと守り、子どもと良好な関係を築いていることは、後に親権や監護権変更などが争点になったときに影響する。
- 無理なスケジュールや勝手なキャンセルを続けると、「子どもへの配慮が不足している」と見なされかねない。
子ども自身の意向
- 年齢が高くなるほど、子ども本人が面会交流を望むかどうかが考慮される。
- 面会交流を継続していれば、子どもの信頼を得やすく、意向にも反映される。
弁護士に相談するメリット
不規則勤務に応じた面会交流プランの提案
- 弁護士が相手側(配偶者)や調停委員に対して、医師の勤務実態を客観的資料(勤務表・当直スケジュール)で示しながら、現実的な面会交流プランを提示する。
- 期限付きの試行プランを設定して、スムーズに合意形成を図る方法もある。
トラブル回避と履行確保
- 調停・審判で決まった面会交流のルールを公的書面(調停調書など)に明記し、相手が拒否してきたときに対策を講じられるようにする。
- 無理のない計画を合意しておけば、医師側も相手側もキャンセルリスクを軽減できる。
親権・監護権争いでの立証サポート
弁護士が子どもとの関わりや監護体制を証拠化し、法的に整理。夜勤当直の実態や周囲のサポートを強調し、親権獲得・監護権確保を支援する。
将来変更・トラブルにも対応
面会交流ルールは、子どもの成長や医師の勤務変更に伴い再調整が必要になる場合がある。弁護士と継続的に連携し、必要に応じて調停申し立てなどを行うことで、環境変化に適応しやすい。
まとめ
- 医師の不規則な勤務形態(夜勤・当直・緊急呼び出し)は、離婚後の面会交流や子どもの監護における課題となる
- 柔軟なスケジュール調整やオンライン面会交流の活用、親族やシッターの協力を明示することで、子どもの利益と医師の働き方を両立
- 面会交流の実践状況は、将来の親権・監護権争いに影響する可能性があり、弁護士のサポートで交渉・調停を円滑に進める
- 弁護士に相談すれば、不規則勤務を配慮した具体的な面会交流プランを提案でき、キャンセルリスクやトラブルを最小限に抑えやすい
医師として忙しい毎日を送りながら、離婚後も子どもとの絆を保つには、従来の「週末面会」だけに囚われない、新たな発想の交流方法が求められます。弁護士や周囲の支援を活用し、不規則勤務でも子どもとの大切な時間を確保できるよう、柔軟性と創意工夫を持って面会交流を設計していくことが鍵となるでしょう。
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