はじめに
協議離婚や調停離婚でも合意が得られない場合、最終手段となるのが裁判離婚です。日本の離婚手続きには調停前置主義があり、原則として調停を経ないと裁判へ進めませんが、調停が不成立となれば裁判離婚で白黒をつけることになります。裁判では親権や財産分与、不倫など有責行為の有無など、法定離婚事由をめぐって証拠と主張をぶつけ合う複雑な手続きとなり、長期間に及ぶケースもあります。
本稿では、裁判離婚に至るまでの流れと、その際に主に争点となる項目、準備すべき書類・証拠について解説します。
Q&A
Q1:裁判離婚はどのようなケースで行われるのですか?
協議離婚や調停離婚が不成立となり、夫婦間の話し合いでは解決できない場合に、家庭裁判所の裁判(訴訟)で離婚を求めることになります。日本の制度では、いきなり裁判を起こすことはできず、原則として調停不成立後に訴訟へ進む形が一般的です。
Q2:裁判離婚での主な争点は何ですか?
(1)離婚原因(不倫、DVなど)、(2)親権・監護権、(3)財産分与・年金分割、(4)慰謝料が主な争点となります。特に、有責配偶者の不倫があれば慰謝料が増額されたり、親権争いでDVやモラハラが認定されれば相手側が不利になるなど、法的根拠と証拠が裁判結果を左右します。
Q3:裁判離婚に必要な書類や証拠はどのようなものがありますか?
訴状(離婚請求の理由を記した書面)に加え、戸籍謄本や住民票などの基本書類、そして離婚原因を立証する証拠(不倫ならメール・写真、DVなら診断書・録音、財産分与なら通帳・不動産資料など)をまとめて提出します。証拠は裁判所での主張立証の根幹となります。
Q4:裁判離婚はどれくらいの期間がかかるのですか?
ケースバイケースですが、1~2年程度は珍しくありません。事案が複雑(不動産や企業年金が絡む等)だったり、両者が一歩も譲らない状態だと、3年以上に及ぶ例もあります。迅速に解決するには弁護士のサポートを受け、主張や証拠を的確に整理・提出することが重要です。
Q5:裁判離婚になってしまったら、必ず弁護士に依頼すべきなのでしょうか?
本人訴訟での対応も可能ですから、弁護士への依頼は必須ではありません。もっとも、裁判は法律的に高度な手続きで、文書作成や証拠の取り扱いなど専門知識が重要です。弁護士をつけずに自力で行うことも可能ですが、負担やリスクが大きいため、弁護士への依頼が望ましいかと思います。
解説
裁判離婚の法定離婚事由と立証
法定離婚事由
日本の民法上、裁判所が離婚を認めるには以下の事由が必要。
- 配偶者の不貞行為(不倫)
- 配偶者から悪意で棄てられた(悪意の遺棄)
- 配偶者が3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他、夫婦関係を継続し難い重大な事由
裁判離婚で離婚が認容されるためには、これらのいずれかを立証する必要があります。
立証の手段
- 不倫ならメール・LINE・写真・探偵報告書、DVなら診断書・録音、悪意の遺棄なら家族を経済的に放置していた証拠など。
- 裁判は書面審理が基本で、証人尋問も行われる場合がある。
主な争点と必要書類
親権争い
- 子どもの監護実績(実際に面倒を見ている時間)、学校生活、子どもの意思などを総合的に判断。
- 親権を希望するなら、保育園・学校の先生の証言や育児日誌などで監護状況を立証。
財産分与・年金分割
- 離婚時に婚姻期間中に形成した財産を夫婦で分与する。貯金・不動産・車・株式・退職金など広範囲。
- 年金分割は離婚後に年金事務所へ申請するが、裁判所で決めた分割割合があれば確実に実行できる。
慰謝料の有無・金額
- 不貞やDVがあれば慰謝料が発生し、立証度合いで金額が変わる。悪質度が高いほど増額が見込まれる。
- DVの精神的苦痛の評価は録音、診断書、写真などの客観的証拠が重要。
裁判離婚の手続きの流れ
訴状の作成と提出
- 離婚を求める側(原告)が訴状と必要書類(戸籍謄本、各種証拠など)を家庭裁判所に提出。
- 調停不成立証明書が必要(調停を経て不成立になったことを示す)。
第1回口頭弁論・証拠提出
- 裁判所が相手方(被告)に訴状を送達。被告が答弁書を提出する。
- 初回の期日で争点整理し、以降数回の期日で証拠や証人尋問を行う。
和解・判決
- 裁判途中に和解(裁判所内での話し合いで合意)に至れば、和解離婚が成立する。
- いずれも合意できなければ、最終的に判決で離婚を認めるかどうか裁判所が決める。
弁護士に相談するメリット
訴状・答弁書の専門的作成
- 裁判では書面が重要視され、訴状の記載内容や主張立証の整理が結果を左右。
- 弁護士が裁判例や法律に基づいた合理的な主張を行い、勝訴の可能性を高める。
証拠収集・証人尋問のサポート
- 不倫やDVの証拠収集は法的に許される範囲で行わないと逆に不利になるリスクがある。
- 弁護士が探偵事務所の紹介や証拠管理の指導、証人尋問の質問内容を設計してくれる。
法定離婚事由の的確な立証
- 日本の離婚裁判では法定離婚事由を満たさないと離婚できないが、弁護士が要件を熟知し、適切に立証する。
- DV・不倫以外にも「その他婚姻を継続し難い重大な事由」と認められるケースを説得力ある形で示す。
時間と精神負担の軽減
- 裁判は1~2年、長期化すると3年以上かかることも。弁護士が手続きを代理し、書面作成や期日調整を行うため、当事者の負担が軽減できる。
- 結果的によりスムーズで客観的な和解・判決を得られる。
まとめ
- 協議離婚・調停離婚がうまくいかなかった場合、裁判離婚によって最終的に離婚の可否を裁判所が判断する
- 裁判離婚には法定離婚事由の立証が必要で、親権・財産分与・慰謝料・年金分割など多くの争点を同時に処理しなければならないため、時間と労力がかかる
- 弁護士に依頼すれば、訴状の作成から証拠収集、尋問対策まで総合的なサポートを受けられ、法的に効果的な主張と適切な手続きで離婚を成立させる可能性が高まる
- 裁判離婚を回避するためにも、初期段階(協議・調停)で弁護士に相談し、準備を怠らないことが賢明
裁判離婚は決して簡単な道のりではありません。裁判所を舞台に長期間争うことになり、精神的・経済的負担が大きく生じます。それでも解決が望めない場合には、専門家である弁護士の力を借り、証拠と主張を緻密に組み立てることで法的に正当な離婚判決を得られる可能性を高めることができます。
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