はじめに
協議離婚が合意に至った場合、離婚届を市区町村役場に提出すれば離婚は成立します。しかし、離婚届の記入を間違えると受理されないケースや、親権の指定を忘れてしまい受理不可となることも。また、相手が勝手に離婚届を提出する不正行為を防ぐため、不受理申出制度を利用する手段も知っておきたいところです。
本稿では、離婚届の書き方の要点を解説し、さらに不受理申出制度の仕組みと活用法について触れます。離婚届を巡って後から後悔しないために、押さえておくべき注意点をまとめました。
Q&A
Q1:離婚届はどこで入手できますか?
市区町村の戸籍係や住民課などの窓口で無償配布されています。また、多くの自治体では公式ウェブサイトからダウンロードできる場合もあり、コンビニ等で印刷して使うことも可能です。
Q2:離婚届の書き方で特に注意すべきポイントは何でしょうか?
まず、未成年の子がいる場合、親権者を必ず明記し、夫と妻どちらが親権を持つかを記入する点が最も重要です。そのほか、夫婦それぞれの本籍・住所・氏名などの正確性、届出人本人の署名・押印、証人2名の署名・押印が要注意ポイントです。
Q3:離婚届を勝手に出されないための不受理申出制度とは何ですか?
不受理申出制度は、役所に対して「私が離婚届を出したという事実を確認するまでは受理しないでください」と申し出るもの。つまり、本人の意思確認が取れないまま、第三者(配偶者など)が勝手に離婚届を提出してしまうトラブルを防ぐ制度です。
Q4:不受理申出を利用したい場合、どのような手続きが必要ですか?
市区町村役場の戸籍係に不受理申出書を提出し、本人確認書類(運転免許証など)や印鑑(実印が望ましい)を提示します。戸籍担当者が不受理申出を受理すると、本籍地で離婚届が提出されても、申出人の意思確認を行うまで受理されません。
Q5:不受理申出はいつまで有効ですか?
不受理申出には以前は有効期限が設けられていましたが、平成20年5月1日から期限がなくなり、半永久的に効力が続きます。取り消しを希望する場合は不受理申出の取り下げが必要です。
解説
離婚届の書き方の詳細
提出先
- 夫または妻の本籍地、または届出人の住所地の市区町村役場へ提出可能。
- 提出窓口は戸籍係が一般的。
書類の内容
- 夫婦の氏名・生年月日・本籍・住所・職業などを正確に記入。
- 未成年の子がいる場合は親権者の指定が必須。
- 届出人の署名・押印を忘れずに。
- 証人2名の署名・押印(成人)が必要で、証人の住所・本籍・氏名・生年月日も記入する。
記入ミスに注意
- 訂正が多いと受理されない可能性があるため、慎重に下書きするか、担当窓口の方に確認しながら書くと安心。
- 氏名や生年月日の誤字脱字、印鑑がシャチハタなどは不備として受理されない事由の一例。
不受理申出制度の仕組み
制度の目的
- 婚姻届・離婚届など戸籍に影響する届出を本人の意思に反して勝手に提出される事例を防ぐための仕組み。
- 不受理申出を行うと、届出人本人が直接役所窓口で意思確認をしない限り、役所は受理を保留する。
対象となる届出
- 離婚届、婚姻届、養子縁組届などが対象。
- 離婚においては、配偶者が偽造署名で離婚届を提出し成立してしまうリスクを防げる。
手続きの流れ
- 不受理申出書を市区町村役場の戸籍係へ提出。
- 係員が本人確認や届出理由を簡単にヒアリングし、受付処理。
- 本人が取り下げをしない限り、不受理申出は継続。
離婚手続き全体における不受理申出の活用
偽造離婚届の事前防止
- 配偶者が勝手に届を出す恐れがある場合や、不倫相手が絡んで強引に離婚を成立させようとする危険がある場合、不受理申出で安全を確保できる。
- DV被害などで別居中、配偶者が嫌がらせ的に離婚届を提出するリスクを防ぐ手段ともなる。
協議離婚中の安心
- 話し合いがまだまとまっていない段階で、相手が一方的に離婚を成立させようとする可能性がある場合、不受理申出を活用しつつ協議を続ける。
- 弁護士と連携して、実際に合意ができたタイミングで「不受理申出の取り下げ」を行い、正式に離婚届を提出すればよい。
デメリットや注意点
不受理申出には取り下げをしない限り半永久的に効力が続くため、離婚届を出すときには自分で解除する必要がある。
弁護士に相談するメリット
離婚届の書き方や不受理申出の適切な利用
- 弁護士が離婚協議書の作成だけでなく、離婚届の記入ミスを防ぐための指導も可能。
- 不受理申出が必要なケースを見極め、申出書や取り下げ書の手続きもアドバイス。
離婚協議全般のサポート
- 財産分与や養育費など重要事項を弁護士が整理し、離婚届提出前に公正証書化を促すなど、後から紛争を起こさないための工夫を行う。
- 万が一トラブルが起きても、速やかに調停・裁判対応を視野に入れた戦略を立案。
偽装離婚届提出への対策
- 偽装提出のリスクがある場合、弁護士が積極的に不受理申出を勧め、配偶者への通知や合意を得る方法を調整。
- 万が一提出された場合は、速やかに裁判所で無効確認などの措置を検討する。
まとめ
- 協議離婚が成立したら、夫婦双方の署名押印と証人2名を備えた離婚届を市区町村役場に提出し、受理されれば離婚は完了
- 離婚届の書き方を間違えると受理不可となり、親権記載漏れや署名・押印ミスにも注意が必要
- 不受理申出制度を使えば、勝手に離婚届を出されてしまう事態を防ぐことができ、DVや不倫トラブルがある場合に有効
- 弁護士に相談すれば、離婚協議書・公正証書の作成から不受理申出の適切な利用、離婚後の各種手続きまでアドバイスを得られ、トラブルを最小限に抑えて安全に離婚を進められる
離婚届を提出する行為そのものはシンプルですが、離婚条件を適切に整備していなければ、後から「親権が決まっていなかった」「財産分与や養育費をどうするのか」など深刻な問題が浮上するリスクがあります。さらに、不受理申出という制度を知らずに、配偶者や第三者が勝手に離婚届を出してしまう違法行為に巻き込まれる恐れも。弁護士に相談して、書類の不備や不正行為を防ぎ、円満かつ安全に離婚を成立させましょう。
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