親権・監護権の違い

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はじめに

離婚において、子どもがいる夫婦にとって親権の問題は最も大きな争点の一つです。さらに、親権をめぐる紛争では「監護権」という概念も絡み合い、「親権」と「監護権」との違いがよく分からないという方も少なくありません。単に「子どもの親権を取る」と言っても、その中身は身上監護権財産管理権がセットになっているため、どちらの親が何を担当するのかを理解する必要があります。

本稿では、親権と監護権の違いを中心に、「面会交流」「監護権の実質」「子どもの養育権」といったキーワードから、離婚時の注意点と具体的な取り決めの方法を解説します。子どもの福祉を最優先しつつ、円満な離婚を実現するためのアドバイスをまとめました。

Q&A

Q1:親権と監護権はどのように違うのですか?

親権は「未成年の子の身上監護および財産管理を行う権利義務」を総称しています。一方、監護権(身上監護権)は、子どもの日常生活や教育、医療等を実際に行う実質的な養育権を指します。財産管理権まで含むかどうかが大きな違いです。

Q2:離婚の際、親権者が監護権を必ず持つわけではないのですか?

通常は親権と監護権を同じ親が持つケースが多いですが、「親権は父、監護権は母」のように分けることも可能です。ただし、財産管理権と身上監護権が分かれるため、実務上は手続きが複雑になることが多く、子の福祉の観点から慎重に検討されます。

Q3:面会交流は親権者になれなかった親でも認められますか?

はい。面会交流は親権の有無に関係なく、「子どもと親が継続的に交流する権利」として原則認められています。ただし、DVや虐待などがあると、面会交流が制限されたり監視下で行われるケースもあります。

Q4:親権や監護権を取るためにはどのような条件が重視されますか?

子どもの年齢継続的な監護実績(どちらが主に育ててきたか)、子どもの意思、そして兄弟姉妹の不分離などが重要とされます。親の経済力や健康状態、家庭環境も総合的に考慮されますが、「子どもの福祉」に最もかなう方が優先されます。

Q5:監護権がどちらか一方になると、財産管理権も自動的に同じになるのですか?

必ずしもそうではありません。親権者=財産管理権を持ち、監護権者(身上監護)を別の親にする「分属」も可能です。ただし、一般的には親権者と監護権者を同じにする場合が多く、分属すると問題が増えるため、裁判所も慎重に判断します。

解説

親権と監護権の基礎知識

親権(身上監護権+財産管理権)

  • 身上監護権
    子どもの教育・保育・医療・躾など、日常生活の保護管理。
  • 財産管理権
    子どもの財産を管理し、法律行為の同意などを行う権限。

監護権(身上監護権)

  • 子どもの日々の世話やしつけ、学校との連絡、医療機関の受診など実質的な養育を行う権限。
  • 財産管理は含まれない。

分属(別々の親が持つケース)

  • 親権は父が取得、監護権は母が取得のように分けるが、日常の育児をしている方が監護権を持ち、財産管理は別の親に任せることになる。
  • 実務上は複雑になるため、裁判所は慎重に判断。

面会交流と監護の実際

面会交流の位置づけ

  • 親権を持たない親(非監護親)でも子どもとの面会交流権が原則として認められる。
  • 調停や協議で、面会の頻度・場所・時間・連絡手段を具体的に定めておくと紛争を回避しやすい。

面会交流の制限・拒否事例

  • DV・虐待の過去がある場合、子どもの安全確保のため面会に制限がかけられたり、第三者同席での実施となるケースがある。
  • 子どもが拒否する場合でも、親のエゴだけで制限するのはトラブルの元となるので、家庭裁判所の調停などで第三者の意見を取り入れることが重要。

監護の実質と子どもの福祉

  • 離婚後も日常のケアや教育をどちらが担うかという監護権の問題は、子どもの最善の利益を基準に判断される。
  • 監護実績が長い親や子どもが慣れ親しんでいる生活環境を優先する事例が多い。

親権・監護権をめぐる争いの注意点

母性優先は絶対ではない

  • 一般的に幼児期は母親が親権・監護権を得る例が多いが、父親が育児実績を持ち、母親に問題(DVやネグレクト)がある場合、父親側が優位になることもある。
  • 性別だけでなく、実際の育児状況や子どもとの絆が重視される。

兄弟姉妹不分離の原則

  • 原則として兄弟姉妹を同じ親が養育するのが望ましいとされる。年齢差や子どもの希望によっては分かれることもあるが、事例としては稀。
  • 無理に分けると子どもの心に大きな影響があり、裁判所も慎重に判断。

親権変更もあり得る

  • 一度決まった親権も、事後的に親権者変更の調停や審判を申し立てる場合がある。
  • ただし、子どもの安定を乱す行為であり、家庭裁判所が認めるのは環境の大きな変化や深刻な問題があるときに限られる。

弁護士に相談するメリット

戦略的な親権・監護権の主張

  • 弁護士が子どもの日常生活の記録(育児日誌、写真など)や教師・保育士の証言を収集し、裁判所に説得力ある主張を展開。
  • 相手方に問題行為(DV、放任)がある場合、証拠で明示して子どもの福祉を守る。

面会交流や養育費とのパッケージ交渉

  • 親権・監護権だけでなく、面会交流のルールや養育費の金額・支払方法を一括して取り決めるのが望ましい。
  • 弁護士がトータル交渉し、公正証書や調停調書に落とし込み、将来の不履行やトラブルを防ぐ。

子どもの意思を尊重する手続き

  • 子どもが十分な年齢であれば、その意思聴取や意見表明をどう扱うかの戦略も必要。
  • 弁護士が家庭裁判所調査官とのやり取りをサポートし、子どもの声を適正に反映させる。

離婚後の変更対応

  • 離婚後に親権変更面会交流再調整が必要になる場合、弁護士が再度調停や審判を提案し、一貫して対応。
  • 子どもの成長に伴う条件変更にも柔軟に対応できる。

まとめ

  • 親権には「身上監護権(子どもの日常の養育)」と「財産管理権」が含まれ、監護権のみを分属して配偶者に任せる方法もあるが、実務上は親権者と監護権者を同じにする方が多い
  • 面会交流は親権を持たない親でも原則として認められ、DVなどの例外を除き、子どもの福祉を見ながら具体的ルールを設定する
  • 親権・監護権の争いでは、実質的な育児実績や子どもの意向、兄弟姉妹不分離の考え方などが重視され、性別や母性神話だけで決まるわけではない
  • 弁護士に依頼すれば、適切な証拠収集・法的根拠の提示・裁判所や調停委員へのアピールが可能となり、子どもの福祉を最大限考慮した解決が得やすい

離婚で親権や監護権が問題となる場合、子どもの生活将来に直結するため、安易な判断は避けたいところです。弁護士と相談しながら、面会交流監護の実質を踏まえて、子どもにとって最良の環境を築くための交渉・手続きを進めていきましょう。

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