はじめに
離婚を巡る親権争いでは、「子どもの意思」をどの程度尊重するかがしばしば問題となります。特に、小学校高学年~中学生以上の子どもが「父と暮らしたい」「母と離れるのは嫌」と明確な希望を表明する場合、裁判所や調停委員も子どもの意見を重視する傾向が高まります。しかし、子どもの年齢が低いほど意思聴取の方法や重みは変わってくるため、その評価は一様ではありません。
本稿では、親権や監護権を巡る「子の意見聴取」がどのように行われるのか、年齢による差や家庭裁判所の判断基準について解説します。
Q&A
Q1:子どもの意見聴取は何歳から行われるのでしょうか?
厳密な年齢の区切りはありませんが、家庭裁判所ではおおむね年長児(小学校高学年~)になると子どもの意思を重視する傾向があります。中学生以上であれば、かなり具体的に意向を示せるので、親権判断に大きく影響することが多いです。
Q2:子どもが「父と暮らしたい」と言えば、必ず父親が親権を取れるのですか?
子どもの意見は重要ですが、それだけで決定するわけではありません。監護実績、家庭環境、DVの有無などを総合的に判断し、子どもの意思と照らし合わせて「子の福祉」に最も適した親が選ばれます。子どもの意見が尊重されても、他の要素が不利であれば認められにくい場合もあります。
Q3:子どもの意見聴取はどのように行われるのですか?
家庭裁判所調査官が子どもと面接し、生活状況や希望をヒアリングするのが一般的です。子どもの負担を考慮し、できるだけ安心して話せる環境を整えたり、短時間で終わらせたりします。また、親権訴訟で必要があれば、裁判官が直接子どもと面談する場合もあります。
Q4:子どもがまだ小さい場合でも意見聴取はありますか?
幼児の場合は直接面談を行わないケースが多く、普段の監護状況を母・父から調査官がヒアリングしたり、保育園・幼稚園の先生の話を聞いて子どもの生活環境を把握します。年齢が低いほど子どもの自己主張は限定的になり、監護実績や周囲の証言が重視されやすいです。
Q5:子どもの意見を尊重せずに親権が決まった場合、後から異議を唱えられますか?
一度親権が確定しても、親権変更の手続きを家庭裁判所に申し立てる可能性はあります。ただし、子どもの環境を大きく変えることになるため、原則として重大な事情変更がないと認められにくいのが実情です。子どもの成長に伴う意思変化だけで変更が認められるわけではありません。
解説
子の意見聴取の目的と方法
目的:子どもの最善利益
- 裁判所や調停委員が「子どもの福祉」を判断するために、子どもの希望を直接把握する。
- どちらの親と暮らしたいのか、どのような環境を望んでいるのか、子ども自身の声を聞いて結論を導く。
聴取方法:家庭裁判所調査官との面接
- 子どもが裁判所に赴き、調査官や心理カウンセラーが話を聞く形が一般的。
- 年齢や発達段階に合わせ、子どもが緊張せず話せる工夫(おもちゃ・テーブル配置など)がなされる。
子どもの意思を歪めないための配慮
- 親の強要で虚偽を話す恐れがある場合、調査官は詳細な質問を行い、子どもの表情やしぐさを観察する。
- 子どもが親の顔色をうかがっていないか、無理やり言わされていないかもチェックされる。
年齢別の扱い
幼児~小学校低学年
- 意思聴取が難しい場合、親の監護状況や保育園・学校での様子、周囲の証言から推測する。
- 幼児でも「どちらが好き?」「一緒に住むとどう感じる?」など簡易的に意思を確認する場合もあるが、発達段階に配慮。
小学校高学年~中学生
- 一般に10歳程度を超えると、子どもの意見を重視する傾向が強まる。裁判所調査官の面接で具体的に話を聞く。
- 友人関係・学習面への影響も含め、子どもの意思が判断材料となる。
高校生以上
- 高校生になると進学やアルバイトなどの生活リズムが変わり、子どもの主体的判断がより認められる。
- 実質的には子ども本人の意思が最も重視され、親の監護実績より子どもの選択が優先されるケースが多い。
遺産相続との関係?
親権と財産相続の誤解
- 親権者になったからといって、子どもの財産を自在に使えるわけではない。
- 子どもに財産がある場合、財産管理権を行使するが、子どもの利益のために使うのが原則。
相続発生時の監護親の役割
- たとえば、離婚後に父親が死亡し、その遺産が子どもに相続された場合、監護している母親が子の法定代理人として管理する。
- ただし、勝手に使い込めば不正行為となり、子どもが成人後に返還請求できる。
子の意思と相続トラブル
親族間で遺産相続を巡って揉めるケースもあるが、子どもの相続分を正当に守るため、親権者の監督や弁護士の助言が必要となる場面がある。
弁護士に相談するメリット
年齢に応じた主張戦略
- 幼児の場合は監護実績やDV証拠を重視し、小学校高学年以上なら子どもの意見をどう引き出すかを計画。
- 弁護士が家庭裁判所調査官との面談方法をサポートし、子どもが自分の意思を安心して話せる環境を整える。
証拠・証人の適切な活用
- 学校の担任、祖父母、近隣住民などを証人として採用することも検討。
- 弁護士が事前に打ち合わせし、裁判所に子どもの実態を分かりやすく伝えるための証拠類(写真・報告書)を準備。
面会交流との調整
- 子どもの意見に基づき、親権・監護権だけでなく面会交流のルールを具体的に提案。
- 弁護士が交渉を代行し、公正証書化や調停調書化を行い、不履行に備える。
子どもの将来の変更にも対応
- 離婚後、子どもの年齢や環境の変化で再度親権変更や面会交流の見直しが必要になることもある。
- 弁護士に継続相談でき、状況変化にも柔軟に調停・審判などを利用できる。
まとめ
- 子の意見聴取は、子どもの年齢が上がるほど親権や監護権の判断に大きく影響し、中学生以上になると事実上子どもの選択が決定的要素となる例も多い
- 幼児期には監護実績やDVなどの要素が重視され、「母性優先」の風潮もあるが、父親が積極的に育児している場合や母親に問題行動がある場合は、父親が親権を獲得する可能性も十分にある
- 弁護士に依頼すれば、子どもの年齢や状況に応じた最適な主張立証を設計し、家庭裁判所調査官や裁判所に適切に子どもの実情をアピールできる
- 面会交流や将来の変更にも対応できるよう、離婚後のサポートも含めて弁護士と連携することで、子どもの福祉を最大限確保した上での親権争いが可能となる
親権・監護権をめぐる対立は、子どもの心身に大きな影響を与えます。子の意見聴取は子どもの声を直接反映させるための大切なプロセスですが、年齢に見合った方法と適切な法的サポートが不可欠です。弁護士の助言を得ながら、子どもの福祉を最優先に考えた親権交渉を進めていきましょう。
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