はじめに
離婚時に大きく変わるものの一つが名字(姓)と戸籍の扱いです。特に、夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、親権者の戸籍に子どもを移すことになるのか、それとも子どもが別の戸籍に入るのかなど、悩むポイントは多いでしょう。さらに、親権を持つ親が旧姓に戻すか、夫の姓を続けるかによっても、子どもの姓に影響が出ます。
本稿では、離婚で戸籍や姓をどのように変更すればよいのか、子どもがいる場合の具体的手続きや、旧姓に戻すメリット・デメリットなどを解説します。
Q&A
Q1:離婚すると妻は自動的に旧姓に戻るのでしょうか?
日本の民法では、結婚に際して夫の姓に変えた場合、離婚すると原則として自動的に婚姻前の姓(旧姓)に戻ります。ただし、離婚日から3か月以内に届出をすれば、婚姻中の姓(夫の姓)を続称することも可能です。
Q2:子どもの姓はどうなりますか?
子どもの姓は親権者の戸籍に入るかどうかで変わることがあります。離婚で母が旧姓に戻したとしても、子どもの戸籍は元々の戸籍(父の姓)に残る場合があり、そのままだと姓が異なるというケースも。子どもの姓を母と同じにするには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」の手続きを経て、戸籍を移す必要があります。
Q3:子どもの戸籍を母親の戸籍に移すには具体的にどうすればよいですか?
まず母親が旧姓に戻した戸籍、または新しく作った戸籍に入る必要があり、その後に家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を申し立て、認められたら役所に届け出て子どもの戸籍を移動できます。この一連の作業で子どもの姓が母親と揃う形になります。
Q4:父親が親権を取る場合でも戸籍・姓の変更が必要ですか?
父親が親権を持ち、かつ父の姓に子どもが続く場合は、特に氏の変更手続きは不要です。母親が旧姓に戻っても、子どもは父の戸籍に残るため、同じ姓を維持できます。逆に母が旧姓に戻ったうえで子どもも母の戸籍に移そうとするなら、同様に「子の氏の変更許可」が必要です。
Q5:姓や戸籍を変えることで、面会交流や養育費に影響はありますか?
姓・戸籍の変更自体が直接面会交流や養育費に影響を与えるわけではありません。ただし、実務上、子どもと名前が違うことで学校での手続き等が煩雑になるケースや、親権者が変わった際に面会交流のルールを再検討する場合があります。基本的には別の問題として捉えるのが一般的です。
解説
離婚に伴う姓・戸籍の基本的仕組み
夫婦同姓の原則
- 日本は夫婦同姓を義務づけており、結婚時に夫か妻のどちらかの姓を選択する。多くの場合は夫の姓。
- 離婚すると、妻が結婚前の姓に自動で戻るのが原則だが、届出で婚姻時の姓を使い続けられる。
子どもの戸籍
- 子どもは父母の属する戸籍に入る。親権をどちらが取るか、姓をどうするかによって、子どもがどちらの戸籍に入るかが変わる。
- 氏の変更を伴う場合、家庭裁判所の許可が必要。
名字と戸籍の分離
「戸籍を移しても姓が変わらない」「姓は変わるが戸籍は新設」といった複雑な状況があり得るため、戸籍と姓の関係を整理しておくことが大切。
具体的な手続きと流れ
妻が旧姓に戻る場合
- 離婚届を提出し、自動的に旧姓に戻る(離婚時から3か月以内)。
- 旧姓を続けたい場合は「婚氏続称届」を役所に提出。
- 戸籍を元の実家や新戸籍に入れる場合は転籍届などが必要。
子どもの戸籍変更
- 親権者となった母が旧姓に戻り、子どもも同じ姓にしたい場合、子の氏の変更許可を家庭裁判所に申立てる。
- 許可が出たら役所に届出を出し、子どもを母の戸籍へ移す。
家庭裁判所での子の氏変更手続き
- 申立書に、親権者になった経緯や「子の氏を変える理由」(父の姓だと母と子が別姓になり生活に支障がある等)を記載。
- 書類審査だけの場合が多いが、場合によっては面接や意見聴取が行われることも。
姓・戸籍変更の注意点とポイント
実務上のメリット・デメリット
- 旧姓に戻す:自分の実家との繋がりや過去の資格証明・銀行口座名義を統一できる利点がある。
- 婚姻中の姓を続ける:子どもと同じ姓をキープしたい、社会的な手続き変更を最小限にしたい場合に有利。
子どもの学校・医療手続き
- 親と子どもの名字が違うと、学校や病院で説明が必要になる場合がある。
- 逆に、無理に子どもを母の姓に合わせると、子どもが戸惑うリスクもあるため、子どもの年齢や意向を考慮。
離婚後も同じ姓を使う場合の再婚リスク
- 婚姻中の姓を続けている状態で再婚するとき、姓をさらに変更する必要があるかもしれない。
- 子どもにとっても姓の変更回数が増え、負担になる可能性があるため、将来計画も踏まえて検討。
弁護士に相談するメリット
最適な氏・戸籍方針の提案
- 弁護士が子どもの年齢、親権者の状況、将来の再婚可能性などを総合的に見て、旧姓に戻すか続称するかなど最適な方針を提案。
- 子どもの氏変更を具体的に進める必要性とリスクを丁寧に説明。
家庭裁判所の手続きサポート
- 「子の氏の変更許可」「転籍届」「婚氏続称届」など書類作成や申立書記載を弁護士がアドバイス。
- 不備による手続き遅延を防ぎ、スムーズに審判・届出が終わるよう管理。
親権・面会交流との一括交渉
- 姓や戸籍の問題は親権や面会交流と密接に関連する。弁護士が一括で交渉し、協議書や調停調書に明確に反映。
- 関連する紛争を早期に収め、子どもの生活環境を安定させる。
離婚後のトラブル対応
- 弁護士に継続的に相談すれば、子の氏が合わない等で起こる追加紛争や親権者変更、面会交流調整にも素早く対応。
- 書類管理や変更手続きも依頼できるため、ストレスを軽減。
まとめ
- 離婚による姓・戸籍の変更は、親自身が旧姓に戻すか婚姻時の姓を続けるかを選択でき、子どもは親権者の戸籍に移すかどうかで姓が変わる可能性がある
- 子どもの姓を変更するには、原則として家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得て役所に届け出る必要があるなど、手続きが複雑
- 親権や面会交流との関係性も見落とせず、将来の再婚や子どもの成長を考慮して最適な姓・戸籍方針を決めるのが望ましい
- 弁護士に依頼すれば、親権者や子どもの意思を踏まえた最適解を提案してもらい、戸籍変更や子の氏変更手続きを円滑に進められ、無用なトラブルを防げる
離婚で姓や戸籍が変わる問題は、子どもの将来にも大きく影響します。親権や面会交流と合わせて、どちらの姓を名乗るか、戸籍をどう移すかを総合的に考える必要があります。弁護士のサポートで、書類不備や手続きの混乱を回避し、子どもの福祉と安定を最優先にした戸籍・姓の決定を行いましょう。
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