【離婚と借金】相手のクレジットカードやローンの支払義務は?財産分与での扱いを弁護士が解説

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はじめに

離婚を考える際、預貯金や不動産といった「プラスの財産」をどう分けるかに関心が向きがちです。しかし、現実の離婚協議でより深刻な問題となるのは、住宅ローン、車のローン、カードローン、キャッシングといった「マイナスの財産(借金)」の扱いです。

「夫がギャンブルで作った借金を、妻である私が返済しなければならないのか?」
「生活費を私のクレジットカードで決済していたが、離婚後はどう精算すればいいのか?」
「相手に隠し借金があるかもしれない」

このような不安を抱えたまま離婚を成立させてしまうと、後になって債権者(カード会社など)から督促が来たり、本来受け取れるはずの財産分与がゼロになってしまったりするリスクがあります。

本記事では、離婚時のクレジットカードや借金の処理方法について、「誰が支払う義務があるのか」「財産分与でどう考慮されるのか」という観点から、弁護士法人長瀬総合法律事務所がわかりやすく解説します。

借金と離婚に関するQ&A

Q1. 夫が私に内緒で消費者金融から借金をしていました。妻である私にも返済義務はありますか?

原則として、返済義務はありません。

夫婦であっても、法的には別々の個人です。配偶者が単独で契約した借金について、あなたが「連帯保証人」になっていない限り、返済する義務を負うことはありません。たとえ夫が返済不能になっても、妻の財産が差し押さえられることは原則としてありませんのでご安心ください。

Q2. 生活費が足りず、妻である私のクレジットカードで食費や光熱費を立て替えていました。これは財産分与で清算できますか?

はい、清算の対象になります。

夫婦の共同生活を維持するために必要な費用(食費、日用品、光熱費、子供の医療費など)のためにした借金は、「日常家事債務(にちじょうかじさいむ)」と呼ばれ、夫婦が共同で責任を負うべきものとされます。したがって、財産分与の話し合いの中で、夫側が負担すべき分を請求したり、預貯金の分配額で調整したりすることが可能です。

Q3. 借金が多すぎて財産分与どころではありません。離婚はできますか?

離婚自体は可能ですが、同時に債務整理(自己破産など)の検討が必要です。

借金の総額が預貯金などの資産を上回っている(債務超過)場合、分ける財産がないため、財産分与は行われないのが一般的です。この場合、借金の名義人が返済を続けることになりますが、返済が困難であれば、離婚手続きと並行して弁護士に依頼し、任意整理や自己破産といった手続きを進めることをお勧めします。

解説:離婚時の借金処理 3つの重要ポイント

借金やクレジットカードの問題を解決するためには、「その借金が何に使われたか(使途)」と「誰の名義か」を明確にすることがスタート地点です。

1. 「夫婦で分ける借金」と「個人で背負う借金」の違い

財産分与において、すべての借金が夫婦で折半されるわけではありません。借金の性質によって、以下の2つに分類されます。

① 財産分与の対象となる借金(夫婦共同の債務)

婚姻生活を営むために生じた借金は、実質的に夫婦ふたりの借金とみなされます。これらはプラスの財産から差し引いて計算(清算)します。

  • 住宅ローン: 家族が住む家のための借金。
  • マイカーローン: 通勤や家族の送迎など、日常的に使用している車のローン。
  • 生活費の補填: 生活費が足りずに利用したキャッシングやカードローン。
  • 教育ローン: 子供の学費のための借入。
  • 家具・家電の購入費: 家族で使用する冷蔵庫や洗濯機などの分割払い。

② 財産分与の対象とならない借金(個人の債務)

夫婦の生活とは無関係に、個人的な理由で作った借金は「特有財産(債務)」とみなされ、借りた本人が全額負担します。相手方に返済を求めることはできません。

  • ギャンブル: パチンコ、競馬、競艇などに使った借金。
  • 浪費: 自身の収入に見合わない高級ブランド品の購入や、趣味への過度な出費。
  • 交際費: 不倫相手とのデート代やホテル代、過度な飲み代。
  • 婚姻前の借金: 独身時代に借りていた奨学金やローン。

2. クレジットカードの処理で注意すべきこと

クレジットカードは生活に密着している分、離婚時の処理が複雑になりがちです。トラブルを避けるために以下の対応を行いましょう。

家族カード(ファミリーカード)の解約

もし、あなたが夫名義のカードの「家族カード」を使っている場合、あるいは夫にあなたのカードの「家族カード」を持たせている場合は、別居や離婚のタイミングです速やかに解約・停止手続きを行ってください。

関係が悪化した後に相手がカードを使い込み、名義人に高額な請求が来るトラブルが後を絶ちません。

公共料金やサブスクリプションの引き落とし変更

光熱費、携帯電話代、動画配信サービスなどの引き落とし口座やカード情報を確認しましょう。離婚後も相手のカードから引き落とされ続けると、後から「不当利得」として返還請求されたり、連絡を取り合う必要が生じたりして面倒です。

リボ払いや分割払いの残高確認

「毎月の支払額が少ないから気にしていない」という方も多いですが、リボ払いの残高が数十万円残っているケースがあります。これが「生活費」のためのものであれば財産分与で考慮すべきですので、必ず利用明細(ステートメント)を取り寄せて残高を確認してください。

3. 相手の「隠し借金」を見つける方法

「相手が金銭管理を独占していて実態がわからない」「郵便物が督促状に見える」といった場合、隠し借金が存在する可能性があります。

信用情報機関への開示請求

借金の実態を正確に把握するためには、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に対し、情報の開示請求を行うことも考えられます。

ただし、原則として「本人」しか開示請求はできません。

弁護士が介入している場合、財産分与の調査の一環として、相手方に対して信用情報の開示を求めたり、取引履歴の開示を任意の交渉や裁判所の手続きを通じて求めたりします。

借金問題がある場合に弁護士に相談するメリット

借金が絡む離婚は、単なる感情のもつれ以上に、経済的な再生が可能かどうかの瀬戸際となるケースが多々あります。弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。

  1. 不当な借金の押し付けを回避できる
    相手が「この借金は二人の生活のためだ」と主張しても、明細を精査し、それがギャンブルや個人的な浪費であることを立証できれば、あなたが負担する必要はなくなります。弁護士は法的な観点から厳格に借金の性質を判断します。
  2. 債権者(カード会社など)への対応を一任できる
    もしあなた自身の名義で借金があり、返済が苦しい場合、弁護士は離婚交渉と並行して「債務整理(任意整理など)」を行うことができます。弁護士が受任通知を送ることで、一時的に督促や支払いをストップさせ、生活再建の計画を立てることが可能です。
  3. 財産分与のシミュレーションができる
    「家のローン、車のローン、カードの借金、預貯金、保険の解約返戻金」。これらをトータルで計算し、プラスになるのかマイナスになるのか、最終的にいくら手元に残るのかをシミュレーションします。

まとめ

離婚時のクレジットカードや借金の処理について解説しました。

  • 原則: 借金は「契約した名義人」が返済義務を負う。連帯保証人でない限り、配偶者の借金を肩代わりする必要はない。
  • 財産分与: 「生活費のための借金」は夫婦で分担(プラス財産から控除)するが、「ギャンブルや浪費」は分担しない。
  • 対策: 家族カードはすぐに解約し、引き落とし先を変更する。
  • 調査: 借金の全貌が不明な場合は、話し合いや弁護士を通じて開示を求める。

借金の問題は、放置すればするほど利息や遅延損害金で状況が悪化します。また、「離婚したい一心で、相手の借金を被る条件で合意してしまった」という失敗例も少なくありません。

弁護士法人長瀬総合法律事務所では、離婚問題と借金問題の双方に精通した弁護士が、あなたの経済的な再出発をサポートします。「借金があるけれど離婚できるか」「相手の借金を払いたくない」とお悩みの方は、まずは当事務所の法律相談をご利用ください。

次のステップ

相談をより有意義なものにするために、以下の資料がお手元にあればご持参ください。

  • 相手方やご自身のクレジットカードの利用明細書
  • 借入先からの督促状や契約書
  • 家計簿や預貯金通帳(生活費の流れがわかるもの)
  • 住宅ローンや車のローンの返済予定表

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