はじめに
DV(ドメスティック・バイオレンス)という言葉が社会に定着して久しく、被害者が離婚に踏み切る流れも以前よりは認知されていますが、DV加害者の側の「更生」という視点はまだまだ認知不足な部分があります。DV被害者を守るために保護命令や慰謝料請求などの手段を講じる一方、加害者が暴力行為を反省・改善し、再び同じ過ちを繰り返さないためのプログラムが存在するのをご存じでしょうか。これを一般に「DV加害者更生プログラム」と呼びます。
本稿では、このDV加害者更生プログラムの実態や目的、実際にどのような効果があるのかなどを解説します。離婚を検討しているDV被害者にとっては、「加害者が変わる可能性があるのか」という点は大きな関心事かもしれませんし、一部のケースでは被害者自身が「夫(妻)を更生させられるなら離婚を回避したい」と願うこともあるでしょう。しかし、現実には加害者更生プログラムがどの程度機能し、どうすれば安全を確保しながら加害者の変容を促せるのか、簡単にはわからない部分があります。
DV加害者更生プログラムの概要と注意点を示し、被害者や家族がこの制度をどのように捉え、活用できるかを考察します。DVは深刻な人権侵害であり、加害者が自発的に改心しない限り再犯リスクは常に残るため、更生プログラムを過信せず、被害者の安全を最優先に考える姿勢が欠かせません。
Q&A
Q1:DV加害者更生プログラムとは何ですか?
主に公的機関や民間の更生支援団体が実施する、DV加害者向けのカウンセリングや講習プログラムのことです。暴力行為の背景にある思考パターンや感情コントロールの問題を修正し、再発防止を目指す取組みです。
Q2:加害者更生プログラムに参加すると、DVは本当に治るのでしょうか?
更生プログラムを受けることで再発率が低下するとの報告もありますが、100%DVがなくなる保証はありません。加害者本人の強い意欲と協力が前提であり、プログラム自体は動機づけやモラル再教育のサポートをするにとどまります。
Q3:加害者がプログラムを受ける場合、被害者の許可や協力は必要ですか?
加害者更生プログラムへの参加は本人の意志が重要であり、被害者が参加を強制することは難しいです。調停や裁判で、「プログラムを受けることを合意条件にする」事例もありますが、最終的には加害者自身の意思が問われます。
Q4:DV加害者更生プログラムの内容はどのようなものですか?
一般的には、認知行動療法をベースにしたグループセッションや個人カウンセリングが中心です。加害者が感情コントロールの方法を学び、暴力につながる思考パターン(パートナーを支配しようとする考え方)を変えていくための教育を行います。
Q5:離婚を検討している被害者が、加害者更生プログラムを進めるメリットは何でしょうか?
もし加害者が本気で更生に取り組めば、子どものために離婚回避を試みることも選択肢となるかもしれません。しかし、プログラムを受けても再発のリスクはゼロではないため、被害者は常に安全を優先すべきです。離婚に踏み切るなら、慰謝料や保護命令など適切な手続きを講じつつ、加害者の更生を見守る形もあるでしょう。
解説
DV加害者更生プログラムの概要
法的背景と実施団体
- 国内では、DV防止法や都道府県の施策を背景に、公的機関や民間NPOが更生プログラムを運営している。
- 裁判所からの指示で受講させるケースもあるが、多くは加害者が自主的に参加する形を取る。
目的
- 最大の目的は再発防止と被害者の安全。加害者がDVを引き起こす背景や支配欲といった思考を自覚し、改善する。
- 暴力の原因を相手に責任転嫁するクセ(「殴りたくなるほど○○された」など)を修正し、自己責任を認めさせる。
内容
- グループセッション
同様のDV加害経験を持つ参加者同士で体験談や感情を共有し、共通の問題構造を認識する。 - 個別カウンセリング
- 専門のカウンセラーが認知行動療法の手法を用い、加害者の思考や感情コントロールを訓練する。
- 宿題やレポート提出が課される場合もあり、暴力抑止につなげる具体的技術を習得していく。
実際の効果と課題
効果的な面
- 参加者が自己の暴力性を自覚し、怒りのコントロール方法を学ぶことで、DV再発率が下がったという研究もある。
- 適切な感情表現やコミュニケーション技術を学ぶことで、人間関係全般が改善する加害者も存在する。
課題
- 強制力が弱く、加害者が自主的に離脱してしまう場合がある。裁判所が指示したプログラムの場合でも、徹底した監視は難しい。
- DVの根底には権力意識や支配欲があり、短期間の講習で劇的に変わるわけではない。そのため、長期フォローが求められる。
離婚と加害者更生プログラムの関連性
離婚回避を求めるケース
- 被害者が「子どものために離婚を避けたい」「加害者が本当に更生するなら結婚生活を続けたい」と考える場合、プログラム受講を離婚回避の条件にすることがある。
- ただし、加害者が言葉だけ「受ける」と言って実行しないケースもあり得るため、実効性の確保が難しい。
離婚手続き中の適用
- DV加害者が裁判所から勧告される形でプログラム参加する例もあるが、これはあくまで改善を期待するものであり、被害者の離婚条件と直接結びつくわけではない。
- 被害者が離婚調停・裁判でDVを立証すれば、慰謝料増額や親権取得に有利となり、加害者がプログラム参加をアピールしても「既に行われた暴力」の責任を免れるわけではない。
離婚後の再発防止
- 離婚後も加害者が子どもとの面会交流を求める場合、プログラム受講を条件にすることがある。
- とはいえ、プログラム終了後も加害者が元どおり暴力的言動をするリスクもあり、被害者は保護命令やストーカー規制法など追加的な対策を意識する必要がある。
弁護士に相談するメリット
安全と離婚手続きの両立
- 弁護士が被害者の身体的安全を確保するための保護命令やシェルター活用などを助言しつつ、同時に離婚調停・慰謝料請求など法的手続きを進められる。
- 加害者が更生プログラムを受けると言っても、被害者の意志で離婚を選択できるようサポート。
DV立証と慰謝料の増額
- DV加害行為を認定させるために、診断書・録音・写真などの証拠を整理・提出し、裁判所にDVの深刻さを印象づける。
- 更生プログラム参加の加害者が言い逃れできないよう、過去の暴力責任を追及して慰謝料を獲得。
親権・面会交流の制限
- DV加害者が子どもに接近する危険がある場合、親権者を被害者に、もしくは面会交流を完全禁止・制限付きにすることを裁判所に求められる。
- 弁護士が適切な主張と証拠(面前DVなど)を提示して、子どもを守る条件を確保。
離婚後の再発対策
- DV加害者が更生プログラムを受けても再度暴力を振るう恐れがある場合、弁護士と連携し、保護命令更新やストーカー規制法の適用、刑事告訴など段階的対策を用意。
- 被害者と子どもが安全に暮らせるよう、長期的フォローを行う。
まとめ
- DV加害者更生プログラムは加害者が自発的に参加し、暴力に至る思考パターンや感情コントロールを学習する取り組みだが、必ずしも100%改善が保障されるものではなく、再発リスクが残る場合も多い
- 被害者が離婚を考えるなら、安全確保が最優先であり、加害者がプログラム受講を約束しても被害者の負担や不安は続くため、保護命令やシェルターなどを活用しつつ、弁護士とともに離婚手続きを進めることが重要
- 更生プログラムはあくまでDV再発を低減させる一つの手段であって、暴力を免罪したり法的責任(慰謝料など)を免れるわけではないため、加害者が受講しても被害者が離婚を回避するかは慎重に判断する
- 弁護士に依頼すれば、保護命令やシェルター連携、慰謝料請求や親権争いにおいてDV被害を立証しつつ手続きを円滑に進められ、離婚後の再発防止策を含めた総合的なサポートが受けられる
DV被害者にとって、加害者更生プログラムの存在は希望にも思える一方、実際に加害者が真摯に取り組むかどうかは大きな不確定要素です。大切なのは、被害者と子どもの安全であり、被害者が安心して暮らせる環境を最優先に確保することです。弁護士や各種支援機関と連携し、適切な法的手段を講じながら、DVの再発を防ぎ、被害者自身の人生を取り戻す道筋を検討しましょう。
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