はじめに
DV(ドメスティック・バイオレンス)から逃れたい被害者にとって、加害者との物理的・精神的接触をどのように遮断できるかは非常に重要なテーマです。DV防止法に基づく保護命令には、「接近禁止命令」等が存在し、一定期間、加害者が被害者に近づいたり連絡をすることが禁じられます。違反すれば加害者は刑事罰を科される可能性があり、被害者にとって有効な防御手段です。
2024年4月の法改正により、命令の期間や対象範囲が拡大され、罰則も強化されました。しかし、実際には「接近禁止命令があっても、メールやSNSで連絡が届いてしまうのでは」「子どもがいる場合の連絡手段をどうするか」など、さまざまな疑問・問題が浮上します。本稿では、DV加害者への接近禁止命令と連絡手段の制限をテーマに、最新の法改正を踏まえてどのように実務上運用されるのか解説します。DV離婚を目指す被害者が、最終的に加害者と安全に距離を置きながら法的手続きを完遂するうえでの参考としてください。
Q&A
Q1:接近禁止命令は具体的にどんな効力を持ちますか?
DV防止法の保護命令の一種として、発令から1年間、加害者が被害者の自宅や勤務先、学校など一定の場所へ近づくこと(接近禁止命令)や、被害者に対し電話・メール・SNSなどで連絡すること(電話等禁止命令)を禁止します。違反すると2年以下の懲役または200万円以下の罰金といった重い刑事罰が科される可能性があります。
Q2:接近禁止命令があっても、実際に加害者が違反する例はあるのでしょうか?
残念ながら存在します。命令を破って接近したり、連絡を続ける加害者もいますが、警察や裁判所に即時報告すれば刑事事件化される場合があり、加害者は逮捕される可能性が高まります。法改正により罰則が強化されたため、命令を破ることのリスクは加害者にとって従来以上に大きくなっています。
Q3:子どもがいる場合、連絡手段を完全に断つのは難しいのではないですか?
そういったケースでは監視付き連絡や親権者以外の第三者を介した連絡方法などが検討されます。面会交流が必要な場合、弁護士や調停委員を通じて連絡調整を行ったり、子どもの生活に支障のない範囲で限定的に連絡を許可する仕組みがあり得ます。被害者の安全が最優先なので、危険があれば直接の連絡を遮断するのが基本です。
Q4:加害者がSNSや新しい電話番号で連絡してきたらどうすればいいですか?
電話等禁止命令が出ている場合、緊急時以外の連続した連絡や、どう喝的な内容の送信等は禁止されています。手段を問わず、被害者に義務のない行為を強要するような連絡は違反となりえます。違反があったら警察に通報し、証拠(通話履歴やSNSメッセージ画面)を保存しておきましょう。
Q5:接近禁止命令の期間が切れた後、再度申し立てることはできますか?
DV防止法上、期間満了後の「自動延長」はありませんが、期間終了後も引き続き加害行為の危険(身体的暴力または生命・身体への脅迫等)がある場合には、再度申立てを行うこと(再度の申立て)が可能です。接近禁止期間が1年間に延びたことで長期的な安全確保が可能になりましたが、継続的なリスク回避には離婚成立や転居なども併用が望ましいです。
解説
接近禁止命令の仕組みと要件
保護命令の種類
- DV防止法に基づく保護命令には、被害者への接近禁止命令、退去命令、電話等禁止命令、被害者の子どもや親族への接近禁止命令、そしてGPS機器等を用いた位置情報の取得禁止命令などがある。
- 接近禁止命令は1年間という期限付きで、加害者が被害者の身辺につきまとったり、住居等の付近をはいかいすることを禁ずる。
発令要件
- 身体的暴力があった場合、または生命・身体に対する脅迫があった場合に加え、法改正により「自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫」し、被害者の心身に重大な危害を受けるおそれが大きい場合(精神的暴力)も対象となった。
- 確実な証拠(診断書、録音、LINE履歴など)に基づき、「DVの具体的危険」を裁判所が判断できる資料が必要。
違反時のペナルティ
- 加害者が命令に反して被害者に接触・連絡すると、DV防止法違反で2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性がある。
- 以前よりも厳罰化されており、警察が現行犯逮捕する場合もあるため、加害者にとってリスクが非常に高い。
連絡手段の制限
電話・メール・SNS禁止
- 電話等禁止命令が発令されると、面会の要求、行動の監視、無言電話、連続した電話・FAX・メール・SNS送信、緊急時以外の深夜早朝の連絡などが禁じられる。
- 被害者に対してはLINEブロックやアプリの削除を推奨する場合もあるが、違反の証拠として確保したいならログを保全しつつ通報する方法を考える必要がある。
GPS等による監視の禁止
- 法改正により、承諾なくGPS機器等の位置情報を取得することや、GPS機器を取り付ける行為の禁止も明文化された。アプリ等で位置情報を監視する行為も対象となる。
- 新たなSNSアカウントや電話番号からの接触
- 加害者が別の番号や偽名で連絡してくる事例も多いが、保護命令の内容によっては、手段を問わず禁止行為に該当すれば違反となる。
- 被害者はその証拠を保存し警察に通報。裁判所にも報告し、加害者を刑事罰に問う可能性がある。
実務上の対処と離婚手続き
弁護士代理での交渉
- 接近禁止命令中でも、離婚協議や財産分与で連絡が不可欠な場合があるが、すべて弁護士を窓口にすれば直接の連絡は不要。
- 被害者が精神的負担なく手続きを進められるのが大きなメリット。
調停・裁判
- DVがあると調停委員が別室調停や時間差出頭を用意するなど安全配慮が取られる。
- 加害者が出頭せずとも、DV被害を立証できれば離婚が認められ、慰謝料も大きく取れる可能性がある。
離婚後のリスク管理
- 接近禁止命令の期限(1年)が切れた後、加害者がストーカー化するリスクもある。
- 弁護士や警察との連携を継続し、再度の保護命令申立やストーカー規制法の活用、さらに引っ越し・住所非公開などの対策が欠かせない。
弁護士に相談するメリット
保護命令申立手続きの迅速化
- 弁護士が必要書類(申立書、陳述書、証拠資料)を作成し、裁判所への提出をスムーズに進める。
- 改正法により精神的暴力も対象となったため、どのような言動が要件を満たすか、弁護士が法的根拠を示して発令を得やすくする。
加害者との連絡遮断
- 弁護士が窓口となることで被害者が加害者と直接やり取りしなくて済み、接近禁止命令も合わせて安全を強化。
- メールやSNSで加害者が違反連絡をしてきた場合、弁護士が警察への通報や証拠化を支援。
慰謝料・財産分与での有利な解決
- DVの悪質性をアピールし、慰謝料額を増やす交渉を展開。加害者が拒否すれば裁判で立証可能。
- 財産分与や養育費についても、弁護士が「DVの責任」を加味した形で有利な条件を引き出す。
離婚後の安全措置のフォロー
- 命令期限切れ後に新たなDV行為があれば、弁護士が警察や裁判所対応を迅速化し被害者を守る。
- 子どもの面会交流で不要な接触を避けたい場合、弁護士が第三者同席や面会禁止を家庭裁判所に求める。
まとめ
DV防止法の保護命令である「接近禁止命令」を活用すれば、加害者が被害者に近づくことを一定期間(1年間)禁止でき、電話やSNSでの連続連絡やGPS監視なども制限できる。違反時には2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という重い刑事罰が科されるため、DV被害者が安全に離婚手続きを進めるための強力な盾となる。
命令中は直接の連絡が禁じられるが、子どもがいるケースなど必要最低限の連絡は弁護士や第三者を介して対応する工夫がされる。
接近禁止命令はあくまで期限付きであり、離婚までに時間がかかる場合や離婚後の再発防止には、再度の保護命令やストーカー規制法、住所非開示など総合的対策が求められる。
弁護士に依頼すれば、保護命令の申立書作成やDV証拠整理、加害者との連絡遮断、慰謝料や財産分与の交渉、さらには離婚後の安全措置まで幅広くサポートでき、被害者が落ち着いて離婚を完結させやすくなる。
DV被害者が離婚を志す際、接近禁止命令は強力な防御手段となり、加害者の威嚇や復讐を恐れずに離婚調停・裁判を進めやすくなります。名義を変えての連絡やストーカー化を防ぐには弁護士の助力が重要であり、不履行時の対処も含めて安全な離婚を実現しましょう。
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