はじめに
DV(ドメスティック・バイオレンス)に苦しむ被害者を、法律上の仕組みで直接保護する重要な手段が「保護命令」です。DV被害者が加害者と同居していたり、離婚を検討していても身の危険を感じて逃げられないケースでは、保護命令が有効に機能する可能性があります。保護命令があれば、一時的に加害者が被害者に近づくことを禁止し、安全を確保しながら離婚手続きを進めやすくなります。
本稿では、保護命令の概要、具体的な申立手続きの流れ、そして発令条件や注意点を解説します。DV離婚を目指す被害者が安全と法的手続きを両立させるうえで、どう活用すればよいかをまとめました
Q&A
Q1:保護命令とは何ですか?
保護命令は、DV防止法に基づき、家庭裁判所がDV被害者の申立てを受けて発令する命令です。加害者に対して1年間の接近禁止や退去命令などを課し、被害者の身の安全を図ります。違反すると加害者には刑事罰が科される可能性があります。
Q2:保護命令にはどんな種類があるのでしょうか?
主に以下の種類があります。
- 接近禁止命令:加害者が被害者の住居や勤務先などに近づくことを禁止(6か月間)。
- 退去命令:加害者が被害者と同居する住居から退去し、その住居付近への接近を禁止(2か月間)。
- 電話やメールなどの禁止:身体だけでなく電話・メール・SNSでの連絡やつきまといも禁じるもの。また、子どもへの接近禁止命令が追加される場合もあります。
Q3:保護命令を申し立てるには、どのような証拠が必要ですか?
身体的暴力や脅迫の事実を示す証拠(診断書、写真、録音、警察通報記録など)が求められます。強度な精神的暴力も対象になる場合がありますが、身体的暴力のほうが認められやすい傾向にあります。家庭裁判所は緊急性も考慮して発令を判断します。
Q4:保護命令が発令されても加害者が従わない場合、どうなるのですか?
加害者が命令に違反して被害者や子どもに接近したり連絡したりすると、DV防止法違反で2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金などの刑事罰が科される可能性があります。被害者は警察に通報し、違反を記録してもらうことで加害者が逮捕される場合もあります。
Q5:保護命令中に離婚手続きを進めるにはどうすればいいでしょうか?
弁護士を通じて離婚調停や裁判を行うことで、加害者からの妨害なく安全に手続きを進めやすくなります。保護命令期間は一時的なので、シェルターや親族宅での避難も併用しつつ、離婚協議・調停へと移行し、慰謝料や財産分与なども含めて早期解決を目指すのが通例です。
解説
保護命令の種類と要件
接近禁止命令
- 加害者が被害者の身辺に近づくこと、住居や勤務先、通学先など半径数百メートル以内に立ち入ることを1年間禁止。
- 電話・メール・SNSでの連絡も禁止される場合がある(附帯命令として)。
- 被害者側がDVの具体的危険を示す必要があり、証拠(診断書、目撃証言など)の提出が求められる。
退去命令
- 加害者が被害者と同居する住居から2か月間退去し、住居周辺に近づくことを禁止。
- 被害者がその家に安全に留まり、加害者のみが別の場所へ退避する仕組み。
- 加害者が帰宅して荷物を持ち出す際にも、被害者の安全を確保できるよう配慮される。
子どもへの接近禁止
- 被害者だけでなく、子どもへの危険がある場合、子どもへの接近や学校付近への立ち入りを禁止する命令も追加で発令可能。
- 加害者が子どもを連れ去る恐れや児童虐待のリスクを防ぐため重要。
保護命令の申立手続き
申立先と費用
- 家庭裁判所に「保護命令申立書」を提出し、収入印紙と郵便切手が必要。
- 相手方、申立人、または暴力行為地を管轄する地方裁判所のいずれかです。家庭裁判所ではなく地方裁判所であることにご注意ください。
要件
- 申立には、身体的暴力や脅迫を受けた「緊急性」が必要。精神的DVのみでも深刻な危険がある場合は認められる可能性があるが、ハードルはやや高い。
- 継続的な暴力や過去に警察への相談などがあれば、有利な判断材料。
審理の流れ
- 裁判官が申立書や証拠を検討し、必要に応じて被害者の口頭陳述を聞く。加害者の意見も確認する場合がある。
- 決定が出るまで数日程度(緊急の場合は即日)で結論が出る場合が多い。発令されたら速やかに加害者に命令が告知される。
保護命令の活用と離婚手続き
一時的な安全を確保
- 保護命令の有効期間内は加害者が接近・連絡できないので、被害者は調停や裁判の準備に専念しやすい。
- シェルターや親族宅へ避難している場合でも、加害者の行動範囲が制限されるため安心度が上がる。
離婚調停・裁判でDVを立証
- 保護命令が発令された事実自体がDVの深刻さを裏付ける証拠となり、離婚調停や裁判で被害者側を有利にする。
- 慰謝料請求にも影響し、相手が否認しづらくなる。
命令期限切れと再発防止
- 接近禁止は1年間、退去は2か月と限られた期間。期限切れ後のトラブルに注意。
- 離婚までに時間がかかる場合は、再申立てや追加措置(警察・ストーカー規制法等)を検討する必要がある。
弁護士に相談するメリット
保護命令申立書の作成と証拠整理
- 弁護士がDV事実を整理し、必要証拠(診断書、録音、写真)を効果的に添付して書面を作成。
- 不備があれば補正に時間を要する可能性があるが、弁護士のサポートで迅速化。
DV調停・裁判での安全管理
- 弁護士が代理人として調停や裁判に出席し、被害者が直接加害者と対峙しないよう配慮。
- 裁判所の審理方法(同室・別室)などを調整し、被害者が安全に発言できる環境を確保。
離婚全体の戦略設計
- 保護命令を基盤に、慰謝料請求や財産分与、子どもの親権などを一括で交渉。
- 長期戦になりそうな場合も、弁護士が強制執行の確保やシェルター連携など対策を講じる。
離婚後の再被害防止
- 離婚後も接近禁止命令期間が切れれば加害者が再びつきまとう可能性あり。弁護士がストーカー規制法など他の法的手段も検討し、被害者を継続保護。
まとめ
- DV防止法に基づく保護命令は、DV被害者が加害者の接近や連絡を一定期間禁止させる制度で、違反時は加害者に刑事罰が科されるため安全確保に有効
- 保護命令には「接近禁止命令」「退去命令」「子どもへの接近禁止」などがあり、発令にはDV被害の証拠(診断書、録音、警察通報記録など)と緊急性が求められる
- 保護命令発令後、加害者の影響が少ない環境で離婚調停・裁判を進めやすくなり、DVによる慰謝料や親権争いも被害者に有利になりやすい
- 弁護士に依頼すれば、保護命令申立の書面作成や証拠整理、離婚手続き全般の代理人対応、安全確保策まで総合的にサポートが受けられ、DV被害者が安心して離婚に踏み切れる
DV被害者にとって命や心の安全は最優先事項です。保護命令を活用すれば、加害者から距離を置いた状態で離婚手続きを進められ、慰謝料請求など被害回復を狙いやすくなります。弁護士の力を借りながら、証拠確保や書面作成を行い、二次被害を防止しつつ新しい生活へと踏み出しましょう。
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