はじめに
離婚に際して、夫婦間の問題以上に悩み、葛藤するのが「子供のこと」ではないでしょうか。
「親権は絶対に譲りたくない」
「養育費をちゃんと払ってもらえるか不安」
「子供に会わせたくない、あるいは会えなくなるのが怖い」
子供に関する取り決めは、子供自身の将来と精神的な安定に直結する極めて重要な問題です。しかし、感情的な対立から話し合いがまとまらなかったり、逆に「早く離婚したい」という焦りから、口約束だけで済ませてしまったりするケースが後を絶ちません。あやふやな取り決めのまま離婚すると、数年後に養育費が止まる、勝手に子供を連れ去られるといった深刻なトラブルを招く恐れがあります。
本記事では、離婚時に決めておくべき「子供に関する3大条件(親権・養育費・面会交流)」の具体的なポイントと、将来のトラブルを防ぐための「合意書」の作成方法について解説します。
Q&A
Q1. 母親の方が親権争いで有利というのは本当ですか?
統計的には母親が親権を持つケースが多いですが、「母親だから」というだけで自動的に決まるわけではありません。
裁判所は「子供の利益(福祉)」を最優先に考えます。その際、重視されるのが「これまでの監護実績(どちらが主として育児を担ってきたか)」と「継続性の原則(現在の生活環境を変えないこと)」です。日本では伝統的に母親が育児を担うケースが多いため結果的に母親有利になりやすいですが、父親が主夫として育児をしていた場合などは、父親が親権者になることもあります。
Q2. 相手の不倫が原因で離婚します。有責配偶者である相手には親権を渡さなくて済みますか?
残念ながら、「不倫をした=親権者になれない」とは限りません。
「夫婦としてのパートナーシップ(有責性)」と「親としての適格性」は分けて考えられます。不倫をしていても、子供に対して愛情深く接し、日常の世話をしっかり行っていたのであれば、親権者として認められる可能性があります。ただし、不倫相手との生活を優先して育児放棄(ネグレクト)をしていたような場合は、親権争いで不利になります。
Q3. 養育費の取り決めを口約束だけで済ませても大丈夫ですか?
リスクが高いため、書面に残すべきです。
口約束だけでは証拠が残りにくいため、「言った言わない」の水掛け論になります。また、相手が再婚したり転職したりして支払いが滞ったときに、強制的に支払わせる手段がありません。離婚協議書を作成し、さらにそれを「強制執行認諾文言付き公正証書」にしておくことで、不払い時に裁判なしで給与や預金を差し押さえることが可能になります。
解説
1. 子供に関する条件の「3本柱」
離婚時に決めるべき子供の条件は、主に以下の3つです。これらは離婚届を提出する前に、具体的に決めておく必要があります。
① 親権(しんけん)と監護権(かんごけん)
未成年の子供がいる場合、夫婦のどちらかを「親権者」と決めなければ、離婚届は受理されません。
- 親権: 子供の身の回りの世話や教育、財産管理を行う権利と義務の総称。
- 監護権: 親権のうち、実際に子供と一緒に暮らして世話をする権利。
- ポイント: 親権と監護権を分けることも可能ですが(父が親権、母が監護権など)、トラブルの元になりやすいため、原則としては「親権者=実際に育てる親」とするのが一般的です。
② 養育費(よういくひ)
子供を監護しない親が、監護する親に対して支払う、子供の生活費や教育費、医療費などです。
- 金額: 夫婦双方の年収を「養育費算定表(裁判所基準)」に当てはめて算出するのが一般的です。
- 期間: 「20歳まで」とすることが多いですが、成人年齢の引き下げや大学進学率の上昇に伴い、「18歳まで」「22歳の3月まで(大学卒業まで)」と取り決めるケースもあります。
③ 面会交流(めんかいこうりゅう)
子供と一緒に暮らしていない親が、定期的に子供と会ったり連絡を取ったりすることです。
- 権利: 親の権利であると同時に、子供が親の愛情を感じて健やかに育つための「子供の権利」でもあります。
- 頻度と方法: 「月1回程度」「場所は公園で」「電話やLINEは自由」など具体的に決めます。
- 注意点: DVや虐待がある場合は、子供の安全を守るために面会を制限・禁止したり、第三者機関を利用したりすることも可能です。
2. 「別居期間」が親権に与える影響
離婚協議中に別居を先行させる場合、その時の子供の状況が親権争いに決定的な影響を与えます。
- 子供を連れて別居した場合
そのまま別居期間が長くなると、「現在の安定した生活環境を維持すべき(継続性の原則)」という観点から、連れて出た側が親権争いで有利となることもあります。 - 子供を置いて別居した場合
逆に、子供を置いて家を出てしまうと、「育児を放棄した」とみなされたり、相手の実績が積み重なったりして、後から親権を取り返すのが困難になります。
これから別居を考えている場合は、「子供を連れて出るか」「置いて出るか」が親権の帰趨(きすう)を決める分岐点になることを意識しましょう。
3. トラブルを防ぐ「合意書(離婚協議書)」の書き方
話し合いで条件が決まったら、必ず「離婚協議書」を作成します。曖昧な表現は避け、誰が読んでも一つの解釈しかできないように書くのがコツです。
養育費の条項例
悪い例:「夫は妻に、子供の養育費として毎月相応の額を支払う」
良い例:「甲(夫)は乙(妻)に対し、長女○○の養育費として、令和○年○月から長女が満22歳に達した後の最初の3月まで、毎月末日限り、金○万円を乙の指定する口座に振り込んで支払う」
チェックポイント
月額だけでなく、ボーナス時の加算はあるか?
大学の入学金や、病気・怪我などの「特別出費」はどう分担するか?
支払いが遅れた場合の「遅延損害金」を設定しているか?
面会交流の条項例
悪い例:「お互い話し合って適宜会わせる」
良い例:「甲(父)と長女との面会交流は月1回程度とし、日時・場所・方法は、子供の福祉を考慮して甲乙協議して定める。ただし、子供の学校行事や体調不良時は変更可能とする」
チェックポイント
具体的すぎると柔軟性がなくなりますが、曖昧すぎると「忙しい」と断られ続けます。「月1回」など最低限の頻度は明記するのが無難です。
子供の受け渡し方法や、連絡手段(親同士のLINEなど)も決めておくとスムーズです。
4. 「公正証書」を作成する
合意書を作っただけでは、万が一相手が養育費を払わなくなったときに、すぐに給料を差し押さえることができません。裁判を起こして判決を取る必要があります。
これを回避するために、公証役場で「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しましょう。
- メリット: 「支払いが滞ったら、直ちに強制執行を受けても異議はありません」という文言を入れることで、裁判手続を経ずに、相手の給与や預貯金を差し押さえることができます。
- 心理的効果: 「払わないと会社にバレて給料を取られる」というプレッシャーにより、支払いの継続率が高まります。
弁護士に相談するメリット
子供に関する条件は、一度決めると変更するのが難しく、子供の人生を左右します。弁護士に依頼することで、以下のメリットが得られます。
- 「親権が取れるか」の正確な見通しと戦略
あなたのこれまでの育児実績や現在の生活環境を分析し、親権獲得の可能性を診断します。不利な場合は、どのような実績(監護補助者の確保など)を作ればよいか、具体的な戦略を提案します。 - 適正かつ有利な養育費の算定
相手が自営業者で収入をごまかしている場合や、私立学校への進学費用が必要な場合など、算定表の単純な当てはめでは不十分なケースに対応し、増額交渉を行います。 - 「抜け穴」のない合意書の作成
将来起こりうるトラブル(進学費用の分担、再婚時の養育費減額リスクなど)を予測し、あなたと子供の権利を守るための緻密な条項を盛り込んだ離婚協議書や公正証書案を作成します。
まとめ
離婚における子供の条件整理は、親としての最後の共同作業とも言えます。感情的になりがちな場面ですが、以下のポイントを押さえてください。
- 親権: 「継続性の原則」が重要。別居時の対応が勝負を決める。
- 養育費: 「算定表」を基準に、進学費用などの「特別出費」も忘れずに取り決める。
- 面会交流: 子供の権利として尊重しつつ、具体的なルール(頻度・方法)を決める。
- 手続き: 合意内容は必ず「公正証書」にし、強制執行力をつける。
「相手と話すと喧嘩になって条件が決まらない」「提示された養育費が安すぎる気がする」といった悩みをお持ちの方は、署名捺印する前に弁護士にご相談ください。
弁護士法人長瀬総合法律事務所は、子供の未来を守るために、親権獲得から養育費の確保まで、サポートいたします。
次のステップ
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