離婚条件を公正証書で取り決める重要性:口約束のリスクと強制執行力

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はじめに

離婚の話し合いにおいて、親権や養育費、慰謝料、財産分与といった条件面で合意に至ったとき、多くの人は大きな安堵感を覚えます。「これでやっと終わった」「もう相手と関わらなくて済む」と、急いで離婚届を提出したくなることでしょう。

しかし、ここで立ち止まって考えていただきたいことがあります。

「その約束、相手は本当に守り続けるでしょうか?」

特に、養育費は子どもが成人するまで、場合によっては10年以上にわたって支払われるものです。また、慰謝料の分割払いなども長期に及ぶことがあります。離婚後に相手が再婚したり、転職して収入が変わったりしたとき、「今月は厳しいから払えない」と言い出すリスクはゼロではありません。

そのような将来のトラブル(不払い)に備え、約束を守らせるための有効な手法が「公正証書」です。

本記事では、離婚条件を公正証書で取り決める重要性について、特に「執行力」という法的効力に焦点を当てて解説します。有責配偶者との離婚や、長期間の別居を経た離婚など、相手への信頼が揺らいでいるケースほど、公正証書の作成は不可欠です。

公正証書に関するQ&A

「公正証書を作ったほうがいい」と聞いても、手間や費用を気にして躊躇する方もいらっしゃいます。ここではよくある疑問にQ&A形式でお答えします。

Q1. 二人で署名・押印した「離婚協議書」を作るだけでは不十分ですか?

証拠としては有効ですが、強制力という点では不十分です。

当事者間で作った私的な文書(離婚協議書)の場合、もし相手が約束を破って支払いを止めても、すぐに給料や財産を差し押さえることはできません。まずは裁判を起こし、「支払え」という判決を得る必要があり、膨大な時間と費用がかかります。一方、公正証書を作成しておけば、裁判を経ずに直ちに差し押さえの手続きに入ることができます。

Q2. 相手が「公正証書なんて面倒だ、信用してくれ」と言って応じてくれません。どうすればいいですか?

公正証書の作成は双方の合意が必要ですので、無理やり連れて行くことはできません。

しかし、相手が拒否するということは「将来払わなくなる可能性がある」とも捉えられます。「公正証書を作ることが離婚の条件である」と毅然とした態度で交渉するか、それでも応じない場合は、家庭裁判所の「調停」を利用して、公的な記録(調停調書)に残す方法を検討すべきです。

Q3. 公正証書にはどのような内容を盛り込めますか?

離婚に関わる金銭的な条件のほぼすべてを盛り込めます。

具体的には、養育費(月額、支払期間、進学時の加算など)、慰謝料、財産分与、年金分割、面会交流の頻度や方法などです。特に「お金」に関する取り決めについては、公正証書にすることで強力な効力を発揮します。

解説:なぜ「公正証書」がトラブル防止に重要なのか

公正証書とは、元裁判官や元検察官などの法律実務経験豊富な「公証人」が作成する公文書のことです。なぜ離婚条件を公正証書にすべきなのか、その理由を法的な仕組みから解説します。

1. 裁判なしで財産を差し押さえる「強制執行力」

公正証書を作成する最大のメリットは、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」を入れることができる点にあります。

これは、「もし約束通りにお金を支払わなかったら、直ちに強制執行(差し押さえ)を受けても文句は言いません」という宣言です。

この文言が入った公正証書があれば、養育費や慰謝料の滞納が発生した際、裁判を起こすことなく、以下の財産を直ちに差し押さえることができます。

  • 相手の給与: 勤務先から直接、養育費分などが天引きされて支払われます。
  • 預貯金: 銀行口座を凍結し、預金から回収できます。
  • その他の財産: 不動産や自動車など。

特に養育費については、法律改正により給与の差し押さえがしやすくなったり、将来分までまとめて差し押さえの手続きができたりと、保護が手厚くなっています。この強力な効力こそが、公正証書を作成すべき最大の理由です。

2. 「言った・言わない」のトラブルを未然に防ぐ

口頭での約束はもちろん、素人が作成したメモ書き程度の合意書では、後になって解釈の食い違いが生じることがあります。

「養育費は大学卒業までと約束したはずだ」「いや、成人(18歳)までだと思っていた」といった認識のズレは、新たな紛争の火種になります。

法律のプロである公証人が作成する公正証書は、法的に正確で疑義の生じにくい文章で作成されます。条件が明確化されることで、双方がルールを守ろうとする意識(心理的な強制力)も働きます。

3. 公文書としての高い信用力と保存性

公正証書は公文書であるため、高い証拠能力(証明力)を持ちます。万が一、将来別の問題で裁判になったとしても、「合意が存在したこと」を強力に証明できます。

また、原本は公証役場で原則として20年間保管されます。もし手元の謄本(コピー)を紛失してしまっても、再発行が可能なので安心です。

4. 有責配偶者・別居期間との関係における重要性

今回のテーマである「有責配偶者」や「別居期間」という観点からも、公正証書は重要です。

  • 有責配偶者(不貞などをした側)との離婚
    相手に対する信頼は地に落ちている状態かと思います。「反省しているから払う」という言葉を信じるのはリスクが高すぎます。慰謝料の分割払いや養育費の支払いを確実にさせるためには、公正証書による縛りが不可欠です。
  • 長期間の別居を経た離婚
    長期間別居していた場合、お互いの生活実態や経済状況が把握しづらくなっています。曖昧な状態で離婚すると、財産分与漏れなどが起きる可能性があります。公正証書作成の過程で、お互いの財産状況を資料に基づいて確認・確定させるプロセスを経ることは、後悔のない離婚にするために重要です。

弁護士に公正証書の作成・交渉を依頼するメリット

公正証書は公証役場に行けば自分たちで作ることも可能ですが、弁護士に依頼することで、より有利で確実な内容に仕上げることができます。

1. あなたに有利な条件で原案を作成できる

公証人は「中立」な立場であるため、「もっと高い養育費をもらえるはずですよ」といったアドバイスはしてくれません。あくまで当事者が決めた内容を文書にするだけです。

弁護士はあなたの「代理人」として、法的に認められる最大限有利な条件(相場を踏まえた慰謝料額、将来の特別出費を含めた養育費など)を提案し、公正証書の原案を作成します。

2. 公証人との打ち合わせや相手方との交渉を代行

公正証書を作成するには、公証人との事前の打ち合わせ、戸籍謄本などの資料収集、そして何より相手方との詳細な条件交渉が必要です。

弁護士に依頼すれば、これらの煩雑な手続きをすべて代行します。相手方と直接顔を合わせて交渉する必要がなくなり、精神的な負担が大幅に軽減されます。また、作成当日も代理人として出頭できる場合があり(事案によります)、相手と会わずに手続きを完了できる可能性もあります。

3. 複雑な年金分割や不動産条項もミスなく処理

年金分割の手続きや、住宅ローンが残っている不動産の財産分与は、非常に複雑で専門知識を要します。条項の書き方を間違えると、法務局で登記ができなかったり、年金事務所で受け付けてもらえなかったりするトラブルが起こり得ます。弁護士はこれらの実務に精通しているため、確実な条項を作成します。

まとめ

離婚条件を公正証書で取り決めることは、離婚後の生活を守るための「命綱」を用意するようなものです。

  • 強制執行力: 裁判なしで給与や預金を差し押さえられる最強の効力を持つ。
  • トラブル防止: 条件が明確化され、言った言わないの争いを防ぐ。
  • 心理的効果: 「公正証書を作った」という事実が、相手に支払いを継続させるプレッシャーになる。

特に、養育費や慰謝料の分割払いなど、将来にわたって金銭のやり取りが発生する場合、公正証書の作成は「選択肢」ではなく「必須」と考えるべきです。

「相手が公正証書に応じてくれるか不安」「どのような内容にすれば損をしないか分からない」という方は、まずは弁護士法人長瀬総合法律事務所にご相談ください。

当事務所では、離婚協議の段階からサポートに入り、将来の安心を見据えた公正証書の作成、そしてそのための相手方との交渉を支援いたします。確かな書面を残し、不安のない新たな人生をスタートさせましょう。

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