1 ADHDとは
(1)症状
ADHDとは、不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のことです。人によって現れ方が異なり、多動性衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型のタイプがみられます。
(2)原因
ADHDの原因はまだ正確には解明されていませんが、先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではないという考えが主流になっています。
(3)治療
アスペルガー症候群同様、原因を根治するのは難しく、対人関係能力や社会性を身につけるための心理社会的療法と、行動のコントロールをしやすくする薬物療法を組み合わせた治療が行われます。
2 配偶者がADHDだったら
配偶者がADHDの場合、本人に悪気はないのですが、約束を守ることができなかったり、会話をしていても話を遮って自分の言いたいことだけを言ってしまったりすることがあります。また、金銭の管理が苦手で、散財してしまうこともあります。他には、衝動が抑えられないことからよく考えずに思ったことをストレートに伝えてしまったり、突然相談もなく高額な買い物をしてしまったりすることもあります。
はじめは配偶者を理解して支えようと思っていても、長い間こういった状況が続くと、心身ともに疲れてしまい、次第に追い詰められてしまうことも少なくありません。
夫婦で支え合えるのが一番ですが、配偶者のためにも自分自身のためにも早めに専門家に相談するようにしましょう。
3 ADHDを理由に離婚できるか
(1)協議離婚・調停離婚
協議離婚の場合は、夫婦で話し合い、離婚に合意ができればすぐに手続きをすることが可能です。
協議離婚の合意ができず、なかなか話が進まない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをし、調停委員の関与のもと、夫婦で話し合いをすることになります。調停を通じてお互い合意ができれば離婚することができます。
(2)裁判離婚
裁判離婚とは、協議離婚、調停離婚いずれも成立しなかった場合に、訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚するものになります。離婚裁判を起こすには、民法で認められている離婚の理由(「法的離婚事由」)が必要になります。
(3)「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」に該当するか
法定離婚事由の一つに、民法第770条第1項第4号「強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合」というものがあります。ここで「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」とは、夫婦生活に必要な協力や扶助といった義務が果たせない状態を指します。
配偶者がADHDであることが、この条項に該当するかどうかですが、アスペルガー症候群の場合同様、ADHDであることだけでは、ここには該当せず離婚の理由とすることは難しいでしょう。
(4)「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか
前述のように、ADHDであるということだけでは、民法第770条第1項第4号には該当しない可能性が高いですが、症状やこれまでのエピソード等、様々な要素を検討し、民法第770条第1項第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」により離婚できる可能性があります。
4 まとめ
配偶者がADHDで、婚姻生活を続けるのが難しいとお考えの場合は、精神的に追い詰められてしまう前に、できるだけ早く、当事務所にご相談ください。
もし当事者同士で離婚について合意できず、離婚裁判になった場合でも、具体的な1つ1つのエピソードや、障害以外の事情も考慮することにより、離婚が認められる可能性もあります。
茨城県全域に対応している当事務所には、発達障害等にも精通している経験豊富な弁護士が数多く所属しています。お困りのことがあれば、一人で悩まずに、ぜひ当事務所にご連絡ください。