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【コラム】養育費について8 過去の養育費をまとめて請求することの可否

2020-07-29

質問

離婚時より子どもも大きくなってきて生活費や教育費がかかるようになってきました。養育費が欲しいのですが、過去に遡って支払ってもらうことはできるのでしょうか。

 

回答

養育費は、養育費請求権を具体化したあと、つまり請求した時を基準として払ってもらうことができます。そのため、過去に遡って支払ってもらうことができる場合があります。

 

解説

1 養育費の取り決めが既になされている場合

事前に養育費の取り決めがなされていたにもかかわらず養育費の支払いをしてもらえない場合には、過去に遡って未払い養育費の請求をすることが可能です。

 

2 養育費の取り決めがなされていない場合

問題は、事前に養育費の取り決めがなされていない場合です。離婚を急ぐあまり、養育費などについて十分な取り決めをしないまま離婚してしまうことがあります。

もちろん、養育費について、あとから決めることも可能ですので、まずは当事者で話し合いをして決めるようにします。当事者で話し合っても合意できない場合は、裁判所の調停や審判で決まることになります。

では、養育費の取り決めがなされるまでの過去の分について、遡って請求することができるのでしょうか。この点、裁判所は、養育費が定期的に発生するものであること、これまで養育費請求をしなくとも生活できていたこと、扶養が必要な状態にあったか否かの判断が難しいこと等の理由から、遡っての請求を認めないことがほとんどです。

もっともすべての場合に認められないわけではなく、過去に遡っての養育費の請求が認められる場合もあります。いずれにせよ、裁判所が両親双方の資力・財産・収入の状況、両親双方の現在の生活状態、子どもの年齢、人数、養育状況などを総合的に考慮して判断することになります。

 

3 養育費請求権と消滅時効について

養育費請求権も、長期間行使していないと時効にかかることがあります。では、養育費の時効期間は何年なのでしょうか。

これについては、離婚時に養育費の取り決めをしていたかどうか、で異なります。離婚時に取り決めをしていて、すでに養育費が具体的に発生している場合、養育費の時効期間は基本的に5年です(民法第169条、提起給付債権)。ただし、離婚調停や養育費調停・審判、離婚訴訟などの裁判所の手続きによって養育費が決定された場合は、時効期間は10年となります。

いずれにせよ、未払い状態を放置してしまうと、消滅時効により養育費請求権が消滅する可能性がありますので注意が必要です。

 

4 まとめ

未払いの養育費についてお困りのことがあれば、弁護士に相談するようにしましょう。前述のように、養育費請求権には消滅時効もありますし、早めに対処する必要があります。弁護士であれば、相手との交渉から調停・審判の手続きまですべて任せることができます。

茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚にまつわる問題に精通した弁護士が丁寧に対応いたします。

【コラム】養育費について7 養育費にも消滅時効は適用される?

2020-07-28

質問

相手が養育費を払わなくなって4年経ちます。養育費にも消滅時効は適用されるのでしょうか。

 

回答

養育費にも消滅時効が適用されます。

 

解説

1 養育費の時効

養育費を請求する権利も、長期間行使していないと、時効にかかることがあります。離婚時に養育費に関する取り決めをしていて、すでに養育費が具体的に発生している場合、養育費の時効期間は5年です。

養育費は、毎月定額を支払うことが普通(定額給付債権)に該当し、民法第169条によって、定期給付債権の時効は5年と定められています。つまり、養育費は発生すると、その後5年で消滅します。

ただし、離婚調停や養育費調停・審判、離婚訴訟などの裁判所の手続きによって養育費が決定された場合は、確定判決で認められる時効期間が適用され、時効期間は10年となります。

 

2 時効の中断

では、一旦時効期間が始まると、時効をとめることはできないのでしょうか。時効援用によって不利益を被ることになる側の人の対抗手段として,時効の中断という制度があります。

時効の中断とは、時効期間の進行を中断させることができるという制度です。時効が中断すると、それまで進行してきた時効期間はリセットされます。養育費の時効が完成しそうになっていても、時効の中断事由が発生すると、時効期間がゼロに戻り、時効は完成しなくなります。

時効の中断事由には、債務承認や裁判上の請求、仮差押や差押などの手続きがあります。以下ご説明致します。

① 債務承認

債務承認とは、支払い義務者が「支払い義務があります」ということを認めることです。

② 裁判上の請求

訴訟や調停などをすると、時効を中断させることができます。

③ 仮差押、差押

仮差押や差押えの手続きにも時効中断の効果があります。中断します。

 

3 時効完成目前になったら・・・

養育費の時効完成が目前に迫ってきたら、まずは内容証明郵便によって滞納している養育費についての支払い請求書を送ります。

このことにより、半年間養育費の時効完成が遅られせることができます。

しかし、これだけでは養育費の時効が中断しないため、その半年間の間に、具体的な裁判手続きをとる必要があります。

 

4 まとめ

養育費は子どものための大切なお金です。一度約束したのであれば、支払う側としては、きちんと約束を守って子どもの成人まで支払いを続けることが大切です。

養育費支払い義務者が養育費を長期間支払ってくれず、困ったときや対処方法がわからない場合には、弁護士に相談するようにしましょう。

茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。離婚や養育費にまつわる問題について精通している弁護士が親身になってサポート致します。

【コラム】養育費について6 養育費を変更できる場合とは?

2020-07-27

質問

養育費を変更できる場合があるそうですが、それはどのような場合なのでしょうか。

 

回答

一度決めた養育費を変更するのは簡単ではありますが、変更できる場合もあります。以下、詳しく説明致します。

 

解説

1 養育費の額の決め方

養育費は、未成熟の子どもを養育するために必要な費用になりますので、法律等で一律に額が決まっているわけではなく、当事者同士の話し合いにより、金額や支払い時期等について、話し合って決めるのが基本です。しかし、協議で決定できなかった場合は、家庭裁判所の調停や審判で決定されることになります。

調停では、家庭裁判所が選任した調停委員が当事者の話を聞き、中立な立場から調停案が提案されます。ここで双方が納得できればそれで養育費は確定しますが、調停が不調に終われば、自動的に審判に移行します。

 

2 養育費の算定方法

養育費は、子どもが成長して自立するまでの、子どもが生活するために必要な費用です。そのため、養育費支払い義務者である親と同程度の生活は保障されてしかるべきです。

この点を考慮し、実務上は、「養育費算定表」が基準として養育費を算定されることになります。

もちろん、養育費算定表だけで計算できない特別な事情があることもありますので、それぞれのケースに応じた金額が養育費として算定されます。

 

3 養育費はあとから変更できるか

養育費について一度合意すれば、後で簡単に変更することはできません。ただし、養育費は子どもが自立するまでの長い期間支払い続けるものになりますので、その間に状況が変化していくことがあります。

たとえば、子どもが急に病気になってしまったり、進学にあたってさらに教育費がかかったりすることがあります。また、逆に、養育費を受け取る側の収入が大幅に増え、養育費を貰わなくても良くなったという場合もあります。

このように、養育費における合意後に双方の事情が変わったときには、養育費の負担が不平等な状況になっていることもありますので、これを公平な負担に是正するために、養育費の変更が認められる場合があるのです。

ただし、いくら状況に変化があったとしても、養育費の条件に合意をしたときに予想できた範囲内の変化であれば、養育費の金額を変更することは容易に認められないとされます。

養育費の合意をした時点では想定していなかった事情が発生したときのみ、再度父母間で協議をしたうえで、養育費の金額を見直す余地が出てきます。

 

4 まとめ

養育費変更が認められるかどうかについては専門家でなければなかなか判断がつきません。養育費の変更については、お悩みのことがあれば早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士であれば、豊富な知識と経験により的確なアドバイスをすすることが可能です。また、調停や審判に発展した場合も代理人として対応してもらうことが可能です。

茨城県で弁護士をお探しであればぜひ当事務所にご連絡ください。

【コラム】養育費について5 一度決まった養育費を変更することはできない?

2020-07-25

質問

一度決まった養育費を減額したり増額したりすることはできないのでしょうか。

 

回答

養育費は決定後に、減額や増額をすることができます。

 

解説

1 どのような場合に増額または減額が認められるか。

養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な費用です。もっと具体的に言うと、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)が自立するまで要する費用で、生活に必要な経費、教育費、医療費などのいことです。

子どもが自立するまで必要な費用になりますので、長い期間払い続けるものになります。

その間に、養育費支払い義務者の収入が著しく減った、養育費支払い義務者が再婚して新しい家庭をもった、あるいは養育費を受け取っている親が再婚して子どもが再婚相手の扶養に入ったこと等の理由により、養育費を減額できる可能性があります。逆に、養育費支払い義務者の収入が著しく増えたこと等の理由により、養育費を増額できる可能性もあります。

 

2 養育費の減額について

養育費支払い義務者の経済状況などが変わって養育費を払うのが困難になってしまった場合などは、減額請求をすることができます。

たとえば、養育費支払い義務者の退職や給料の減額により大幅に年収が変わってしまった場合、養育費支払い義務者が再婚して扶養する家族が増えた場合にも認められる可能性があります。

また、養育費を受け取る側の親が再婚して子どもも再婚相手の扶養に入り、裕福な生活をするようになった場合も養育費は減額される可能性があります。

 

3 養育費の増額について

一度養育費の額を定めると、その合意には拘束力があり、一方の当事者側の事情で増減を認めることはできませんが、合意の前提になっていた事情自体に変化があった場合には、合意の変更が認められます。

たとえば、子どもが病気になり相当の医療費がかかるようになった場合や、子どもの進学により教育費が増加した場合もこれに当たることもあります。

 

4 まとめ

以上のように、養育費の増額・減額が認められるかどうかは、事情の変更があったと言えるかどうかにかかっています。養育費の変更は簡単に認められるものではありませんので、変更があった事情については、証拠をそろえた上で主張する必要があり、慎重な対応が求められます。

茨城県全域にリーガルサービスを提供している当事務所には、離婚問題に強い弁護士が多数在籍しておりますので、ぜひ一度ご連絡ください。

【コラム】養育費について4 子どもが私立の学校に進学を希望している場合でも養育費は算定表通り?

2020-07-24

質問

子どもが私立学校に通う場合でも、養育費は通常認められる額しかもらえないのでしょうか?

 

回答

私立学校に通う場合は、養育費を加算してもらえる可能性があります。

 

解説

1 養育費の算出方法

夫婦間で協議のうえ養育費を決定する場合には、合意した金額が養育費になりますが、裁判所の調停・審判では、「養育費算定表」を基準にして養育費が算定されています。

「養育費算定表」を見ると、簡単に養育費の算出が可能なのですが、実際の事例では、養育費算定表を見てもどのように計算したらいいのか分からない場合があります。

以下、特別な場合の養育費算定方法について見ていきましょう。

 

2 養育費算定表では分からない養育費の計算方法

(1)私立学校に通う場合

養育費算定表は、公立学校に通うことを前提に子どもの養育費用を見込んでいますが、状況により加算が認められることがあります。

例えば、養育費支払い義務者である親も子どもが私立学校へ進学することを予め承諾していたような場合は加算が認められることがあります。

裁判での基準は明確にはわかりませんが、離婚時に既に私立の学校に進学していたのかどうか、進路について予め話があったのか(予測できたか)や、夫婦の経済状況等を総合的に考慮し、加算が認められるかどうかが決まるようです。

 

(2)その他のケース

(1)以外のケースだと、大学や大学院に進学する場合や浪人する場合は、その子どもが育ってきた家庭の経済的・教育的水準に照して、進学等が相当な場合には、大学生・浪人の間の養育費が認められることがあります。

一方、塾・習い事等に行っている場合に養育費が加算されるかどうかは、かなり厳しい基準で判断されるため、認められない可能性が高いと言えます。

 

3 まとめ

養育費は、「養育費算定表」を基準に算定されますが、教育費や医療費に特別な事情がある場合には、当該事情等を考慮して加算が認められることがあります。どのような場合に加算が認められるかどうかは、自分ひとりではなかなか判断ができないことがありますので、不安なことがあれば弁護士に相談しましょう。

専門家である弁護士であれば、これまでの経験から加算が見込めそうな場合やそうではない場合について判断することができ、どうすれば特別な事情を考慮して養育費を貰うことができるかアドバイスをすることができます。

茨城県で離婚にまつわる問題について詳しい弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。

【コラム】養育費について3 相手が無職の場合は養育費を請求できない?

2020-07-23

質問

元夫が無職なのですが、養育費の請求をすることはできないのでしょうか。

 

回答

無職の場合、養育費の支払いをさせるのは難しいですが、例外的にできる場合もあります。

 

解説

1 養育費支払い義務者が無職の場合の養育費について

養育費とは未成熟子が社会に出て独立できるようになるまでに必要となる費用のことです。子どもは民法第877条第1項の「直系血族」に当たりますから、親は子を扶養する法律上の義務があり、離婚が成立しても親子関係はなくならない以上、親の子に対する扶養義務はなくなりません。つまり、養育費の支払い義務者となっている親は、自分の生活レベルを落としてでも養育費は支払わなければなりません。

養育費の金額を決定する際、当事者の合意で如何様にでも決められますが、裁判所を通して算定する場合には、「養育費算定表」を基準に決定されます。最終的には、子どもの年齢や人数、両親の年収など様々な要素を総合的に勘案して金額が決められます。

養育費算定表の金額は目安に過ぎませんが、養育費算定表の額を大きく超えて養育費を請求することは実際上は難しいでしょう。養育費算定表によると、養育費支払い義務者が無職の場合の養育費の相場は、月々0~1万円となっているため、養育費を請求するのは非常に難しいといえます。

 

2 無職であっても養育費の支払いを請求できる場合 

無職であっても、養育費の請求ができる場合があります。以下、詳しく見ていきましょう。

(1)不労所得や高額な資産を持っている場合

現在無職であっても、株の配当や家賃収入などの不労所得がある場合は支払いの義務が生じます。また、不動産や高額の預貯金等の資産がある場合も、その資産から養育費の支払いを請求できる場合があります。

 

(2)潜在的稼働能力がある場合

離婚時に無職であっても、健康状態、職歴、保有資格などから、潜在的な稼働能力があると判断されれば、養育費を請求することができる可能性があります。

 

(3)今後働いて養育費を払うことに同意してもらう

元夫と協議し、今後は働いて養育を確実に支払うことに同意してもらえば養育費の請求が可能になります。このときは、協議のうえ合意した内容を公正証書に残すようにしましょう。収入ができても払わないようなことがあれば、給与等を差し押さえて養育費を強制的に支払わせること等ができます。

 

3 まとめ

養育費支払い義務者が無職の場合でも、上記のように養育費を支払ってもらう手段はあります。ただ、潜在的稼働能力を証明する場合も、強制執行をする場合も、専門的な知識や経験が必要になりますので、自分ひとりだけで解決するのは困難です。早めに弁護士に相談するようにしましょう。

茨城県で弁護士をお探しであれば、当事務所にご連絡ください。養育費の請求について豊富な経験を持った弁護士がサポート致します。安心してお任せください。

【コラム】養育費について2 調停で決まった養育費の支払いをしてくれない場合の3つの対処法

2020-07-22

質問

前夫が離婚時に決まった養育費を払ってくれません。きちんと支払ってもらうための対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

回答

養育費を払ってもらうための対象法として、①履行勧告②履行命令③強制執行という方法があります。以下詳しく説明致します。

 

解説

1 履行勧告

履行勧告とは、家庭裁判所で決めた調停や審判などの取決めを守らない人に対して、それを守らせるため制度です。相手方が取決めを守らないときに、家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすると、家庭裁判所は、相手方に取決めを守るように説得したり、勧告したりします。

履行勧告の手続に費用はかかりませんが、義務者が勧告に応じない場合に、支払を強制することはできません。

 

2 履行命令

履行命令とは、履行勧告と同じように家庭裁判所の調停証書や審判調書、あるいは判決の内容に記載された内容を、相手が適切に守らない場合に、それを守らせるための制度です。履行勧告の場合は罰則規定はありませんが、履行命令を無視した場合は、10万円以下の罰金の支払いを課される可能性があります。

ただし、この罰金は、申し立てをした人物に払われるわけではありません。このため、養育費の支払いが滞っているような場合は、罰金が一層の負担になり、ますます支払いが遠退く可能性があります。

 

3 強制執行

相手がどうしても支払をしないときに、強制的に養育費を支払わせる方法が

養育費の強制執行(「差し押さえ」)です。差し押さえは、債務者(義務者)が任意で支払いをしないときに、債務者の財産や資産を差し押さえて、強制的に支払いをさせる方法になります。

差し押さえの対象となるものは、相手の所有物であればたいていのものを差し押さえることができます。具体的には、預貯金、積立金、生命保険、株券、投資信託、給料、売掛金などがあげられます。

差し押さえには、債務名義という「強制執行をしてもよい」というお墨付きが必要になりますので、債務名義がない場合には、差し押さえをすることができません。養育費調停の調停調書、離婚審判の審判書、養育費審判の審判書などが債務名義にあたり、養育費を決めた際の合意書(公正証書にしていないもの)などは債務名義にはあたりませんので注意が必要です。

債務名義は、養育費調停をすることにより、差し押さえに必要な債務名義を得ることができますので、債務名義がない場合であってもあきらめずに対処しましょう。

 

4 まとめ

養育費が貰えないと子どもを養育することが困難になってしまいますので、確実に払ってもらう必要がありますが、自分ひとりだけで対応するのは大変です。

養育費の請求には、知識や経験が必要になりますので、少しでもスムーズに養育費を払ってもらうために、弁護士に相談しましょう。

茨城県で弁護士をお探しであれば、離婚にまつわる問題に精通した弁護士が多数在籍している当事務所にご連絡ください。

【コラム】養育費について1 養育費の変更を拒まれた場合の3つの対処法

2020-07-21

質問

養育費減額の請求をしているのですが、相手方が応じてくれません。どのように対処したらよいのでしょうか。

 

回答

養育費の額の変更を認めるのが相当だといえる場合には養育費の減額が認められることがありますので、以下を参考に対処するようにしましょう。

 

解説

1 養育費の減額が認められる場合とは

一旦決まった養育費は簡単に変えることができませんが、様々な状況の変化により、変更を認めるが相当である場合には養育費の減額が認められることがあります。では、そもそも養育費はどのように決まるのでしょうか。

養育費は、実際に子どもを育てる親(監護親)がもう一方の親に請求しますが、その金額については法律で制限されているわけではありませんので、当事者の協議により自由に決めることが可能です。しかし、当事者の協議が調わず、話し合いが難航することもあります。

当事者間の協議が整わない場合は、調停等で金額を決めることになりますが、養育費については、子どもが養育費を支払う者と同居していると仮定した場合に子どものために使われる生活費を計算し、これを養育費を支払う者と請求者の基礎収入の割合で案分するのが基本的な考え方です。ただし、算定にあたっては、少々複雑な計算をしなくてはなりませんので、実務上は「算定表」を用いて算出されることになります。

このように算出された養育費ですが、離婚時に比較して養育費を支払う者の年収が下がった場合や逆に養育費を請求する者の年収が増えた場合には、養育費の減額を認めるべきと判断される傾向にあります。

 

2 養育費の減額方法について

(1)協議

まずは当事者同士で養育費の減額について話し合います。電話でも対面でもいいので、合意できるかどうか話し合います。

 

(2)養育費減額請求調停

協議で合意ができない場合は、養育費減額調停の申立てをしましょう。調停では、当事者が出席し状況を調停委員や裁判官と話し合うことで解決策や落とし所を探っていきます。収入状況の変化を証明できる証拠を用意しておくことが大切です。

 

(3)養育費減額請求審判

養育費請求調停が不調で終わった場合には、自動的に審判手続が開始されます。

審判は、裁判官が一切の事情を考慮して養育費の減額を認めるべきか否かを判断します。

 

3 まとめ

養育費の減額請求をしたい場合の対処方法について、いかがでしたでしょうか。一度決まった養育費であってもその後の状況の変化により、減額が認められることがあります。

減額請求についてお困りのことがあれば弁護士に相談しましょう。弁護士であれば、協議についてのアドバイスもできますし、調停や審判の対応を依頼することもできます。

茨城県で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。離婚問題に精通した弁護士が丁寧にサポート致します。

【コラム】親権について15 子どもが嫌がっても親権者には引き渡さなければならない?

2020-07-09

質問

離婚判決で母親を親権者とすることが決まりましたが、子どもが母親を嫌っていて母親のところには行きたくないと言っています。それでも引き渡さなくてはならないのでしょうか。

 

回答

判決が出ている以上は、引き渡す必要があります。

 

解説

1 親権者の決定

未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権者を父親と母親のどちらにするのかを決めなければ離婚することができません。婚姻中は夫婦は子どもに対して共同親権を持ちますが、離婚する場合には一人に決定する(単独親権)必要があるからです。

まずは夫婦間で話し合いをしますが、夫婦間で合意できない場合は、調停や裁判で親権者を定めることになります。調停や裁判で親権者を定める場合の判断基準としては、乳幼児の母性優先、今まで子どもを養育監護していたか、子どもの意思、兄弟姉妹関係、経済力等があげられます。

 

2 子どもが親権者を拒否するケース

1.のように決まった親権者ですが、決定した後に、子どもに拒否されることがあります。たとえば、それは、母親の不貞行為を多感な年齢の子どもが知ってしまったような場合です。母親が不貞行為をしたとしても、監護状況に問題が無ければ親権者になることができますが、子どもにとっては、悪い母親だと感じられて、母親を拒否することが少なくありません。

 

3 どのように対応したら良いか

子どもが親権者のもとに行くことを嫌がっているからと、いつまでも親権者に引き渡さない場合には、人身保護法違反により、釈放を命じられる可能性あります。では、どのように対応したら良いのでしょうか。

このような場合は、親権者変更の申立てをするのも一つの手段です。親権者変更は一度決定した親権者を変更するものであり、なかなか認められにくいものではありますが、全く認められないものでもありません。実際、離婚判決で母親が親権者に指定されたものの、子どもの拒絶が強かったため父親が親権者変更を申し立てて認められた判例もあります(大阪高裁平成12年4月19日決定)。

 

4 まとめ

子どもの親権についてお悩みのことがあれば、早めに弁護士に相談しましょう。親権は親側の権利義務ではありますが、子どもの福祉・利益の保護を一番に考える必要があります。子どもが親権者を嫌っているような場合、一旦は判決に従って親権者のもとへ行くことを説得すべきですが、どうしても拒絶するような場合は子どものためにも親権者変更の検討をするのも手段の一つです。

親権者変更の問題でお悩みの方は、親権の問題に詳しい当事務所の弁護士にご相談ください。

【コラム】親権について14 不貞行為をした場合にも親権は取得できる?

2020-07-09

質問

不倫がきっかけで離婚することになりましたが、子どもを手放したくはありません。親権を取得することは可能でしょうか。

 

回答

不倫がきっかけの離婚であっても、親権を取得することは可能です。

 

解説

1 親権とは

親権とは、子どもを監護教育するために父母に認められた権利義務のことをいい、父母が共同で行使するのが原則ですが、父母が離婚した場合には、どちらか一方の単独親権となります。つまり、離婚の際には、父親か母親のどちらか一方を親権者として指定しなければなりません。

 

2 親権の決め方

まずは当事者間の合意によって親権者を決定します。協議離婚や調停離婚の場合には、双方が合意しない限り、親権者を決めることはできませんし、親権者が決まらなければ、離婚することもできません。

当事者の話し合いが決裂してしまった場合には、裁判により親権者が決定されることになります。親権者を決める基準としては、以前からの子どもとの関係、子育てに関わってきた程度、子どもの年齢、健康状態、経済力、離婚後の居住環境、離婚後の面会交流についての考え方、子どもの意思(子どもが15歳以上の場合)等の要素を検討して決定されます。

不倫をしていたかどうかは、親権の取得に直接影響するわけではありませんが、不倫をされた側の相手としては、「不倫した人に子どもは任せられない」と主張することが多いので、話し合いがうまくいかなくなる原因にはなり得ます。

 

3 不倫をした側が親権を取得することが難しくなる場合

(1)もともと虐待していた場合

子どもを虐待していた場合や育児放棄をしていた場合には、親権が認められない可能性が出てきます。

(2)育児をしていなかった場合

外出が多く家に帰らず、子どもを放置していた場合などには、親権が認められない可能性が高くなります。

(3)離婚時、子どもと一緒に暮らしていない場合

離婚前に夫婦が別居する際、子どもと一緒に暮らしていない親には親権を認められない可能性が高くなります。

 

4 まとめ

親権の取得についてお困りのことがあれば、早めに弁護士に相談しましょう。親権は一度決定すると変更することが難しくなります。たとえ不倫して離婚した場合であっても、子どもの親権者になることを諦めたくない場合、弁護士であればどのようにしたら良いかについてのアドバイスをすることができます。

茨城県で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご連絡ください。離婚問題・親権問題に精通した弁護士がサポート致します。

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