はじめに
不倫・不貞相手に対する慰謝料請求をするにあたって、手続の流れは以下のフローチャートのとおりです。
このように、不倫・不貞相手に対する慰謝料請求では、示談交渉以外にも、裁判手続に移行する方法もあります。
示談交渉には、裁判による解決では得ることができないメリットが多くありますが、デメリットもないわけではありません。
本稿では、弁護士に依頼した場合の示談交渉による不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の解決のデメリットについてご説明します。
示談交渉による慰謝料請求のデメリット
弁護士に依頼した場合の示談交渉による不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の解決のデメリットは、以下の3点に整理できます。
1 当事者の合意がなければ成立できない
2 直ちに強制執行できない場合がある 3 示談交渉ができない場合がある |
当事者の合意がなければ成立できない
示談交渉は、あくまでも当事者間の合意があって初めて成立するものであり、相手方が示談内容に応じてこなければ成立しないことになります。
例えば、証拠上、相手方が不倫・不貞をしたことは明らかであるにもかかわらず、頑なに慰謝料の支払を否定し続ける場合などです。
もっとも、このようなケースであっても、弁護士が代理人として選任され、示談が成立しない場合には訴訟に移行する可能性があることを示唆することで、頑なだった相手方の態度が一変することも少なくありません。
直ちに強制執行できない場合がある
示談交渉による解決の場合、通常は当事者間で慰謝料の支払義務や支払い条件を定めた合意書を取り交わすことになります。
もっとも、当事者間で任意で取り交わした示談書は、それだけでは裁判による判決や裁判上の和解と異なり、強制執行が可能な債務名義とはなりません。
したがって、仮に示談書を取り交わしたものの、相手方が約束を破って支払に応じなかった場合には、示談書を証拠として裁判を提起し、改めて慰謝料の支払義務を認める旨の判決を取得しなければならないことになります。
なお、示談交渉による解決でこのような二度手間を省くためには、示談書を取り交わすとともに公正証書を作成する方法がありますが、その場合には別途費用が発生することを検討する必要があります。
示談交渉ができない場合がある
また、示談交渉をするためには、相手方の連絡先が判明している必要がありますが、相手方の行方がわからなくなったりしてしまっている場合には、示談交渉を進めることができないということもあります。
このようなケースでは、訴訟を提起し、公示送達等の方法によって進めることも検討する必要があります。
最後に
以上が示談交渉のデメリットといえますが、いずれも示談交渉を回避するほどの大きなデメリットではありません。
したがって、不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の事案では、まずは示談交渉によって進めていくことがよいかと思われます。