はじめに
不倫・不貞相手に対する慰謝料請求をするにあたって、相手方が不倫・不貞行為を認めてくれればよいのですが、争う姿勢を示してきたときには、不倫・不貞行為に基づく不法行為責任が成立することを立証する必要があります。
不倫・不貞相手に対する慰謝料請求における主な争点は、以下の4つがあります。
争点① 不貞行為の有無
争点② 既に婚姻関係は破綻していた 争点③ 既婚者(不倫・不貞)とは知らなかった 争点④ 消滅時効 |
本稿では、争点③「既婚者(不倫・不貞)とは知らなかった」についてご説明するとともに、不倫・不貞慰謝料請求をする側にとって注意すべき点について解説します。
争点③ 婚姻関係が不貞行為当時破綻していると信じていたかどうか
不倫・不貞行為に及んだ相手方に対する慰謝料請求の法的根拠は不法行為責任にありますが(民法709条、710条)、不法行為責任が成立するためには、加害行為者に故意又は過失があることが必要です。
言い換えれば、婚姻関係が不貞行為当時破綻していると信じていたのであれば、故意又は過失がなく、不法行為責任が成立しないことになります。
すなわち、前記最三小判平8.3.26に基づき、婚姻関係が不貞当時すでに破綻していると過失なく誤信した場合には不法行為が成立しないということです。
この点、不貞に及んだ第三者としては、他方配偶者が既婚者である以上、安易に不貞関係に入らないように注意すべきであり、無過失と認めるためには、婚姻関係が破綻しているとの他方配偶者の言葉を信用しただけでは足りず、他方配偶者の言葉を裏付ける根拠があることが必要であるとされています(判例タイムズNo1278・53頁)。
不貞行為当時から「夫婦仲が冷めきっている」との主張
実務では、不貞相手に対して慰謝料請求をすると、不貞相手から、「付き合っている当時から、「夫婦仲が冷めきっている」と聞かされていたので、既に婚姻関係が破綻していると思っていた、という弁解がされることあります。
この場合の過失の判断ですが、不貞相手としては、他方配偶者が既婚者であることを認識している以上、安易に不貞関係に入らないように注意すべきであり、過失がないとは容易には認められない傾向にあります。
不貞行為の途中から既婚者であることを知ったとの主張
また、他方配偶者と関係を持った当初は既婚者であることを知らなかったものの、不貞関係を続けている最中に、相手方が既婚者であることを認識したというケースもあります。
この場合、既婚者であることを認識したにもかかわらず、不貞関係を続けるのであれば、継続した不貞行為に対して不法行為責任が成立することになります。
一方、既婚者であることを認識した後は不貞関係をやめた場合には、不法行為責任が成立しないことになります。
最後に
以上が不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の争点③「既婚者(不倫・不貞)とは知らなかった」に関する解説となります。
したがって、不倫・不貞をされた側からすれば、まずは不貞相手に対し、他方配偶者との不貞行為をやめるよう通知を送付するべきといえます。
通知書を送付することで、その後も不貞相手が他方配偶者との関係を継続するのであれば、故意による不貞行為であると立証しやすくなる上、通知書を送付した後の不貞関係自体が別の不法行為に該当すると主張することも考えられるためです。
不貞相手に対する慰謝料請求では、様々な反論がなされることも少なくありません。
実際に慰謝料請求をする場合には、相手方の反論も予想して対応を講じていく必要があります。