はじめに
不倫・不貞相手に対する慰謝料請求をするにあたって、相手方が不倫・不貞行為を認めてくれればよいのですが、争う姿勢を示してきたときには、不倫・不貞行為に基づく不法行為責任が成立することを立証する必要があります。
不倫・不貞相手に対する慰謝料請求における主な争点は、以下の4つがあります。
- 争点① 不貞行為の有無
- 争点② 既に婚姻関係は破綻していた
- 争点③ 既婚者(不倫・不貞)とは知らなかった
- 争点④ 消滅時効
本稿では、争点④「消滅時効」についてご説明するとともに、不倫・不貞慰謝料請求をする側にとって注意すべき点について解説します。
消滅時効は事実関係により起算点が異なり、請求、承認、裁判手続等による完成猶予・更新も問題になります。期限が近い可能性がある場合は、早急に個別相談をご検討ください。
消滅時効
第4の争点は、不貞行為に対する消滅時効が完成しているかどうかという問題です。
不法行為による損害賠償請求権は、原則として、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、又は不法行為の時から20年間行使しないときは、時効により消滅します(民法724条)。
もっとも、『損害及び加害者を知った時』がいつか、継続的な不貞行為をどのように捉えるか、時効の完成猶予・更新があるかは個別に判断されます。3年の経過だけで直ちに結論づけることはできません。
もっとも、仮に不貞行為を行われたことが3年以上前に発覚し、消滅時効が完成したとしても、不貞行為が原因で離婚することになった場合、離婚に伴う精神的苦痛に対する慰謝料は別に発生することになるため、離婚に伴う慰謝料が別の損害として認められる可能性があります。
したがって、消滅時効の問題は、不貞行為をされた結果、夫婦が離婚したかどうかによって、以下のように整理することができます。
離婚に至っていない場合
1. 訴え提起より3年以上前に不貞が終了していた場合
消滅時効は、不貞行為を知ってから3年で完成するところ、この場合には、すでに消滅時効が完成していることになります。
したがって、不貞行為に対する慰謝料請求権はすべて時効によって消滅することになります。
2. 訴え提起時点でも不貞行為が継続中の場合
起算点、行為の継続性、完成猶予・更新の有無等を確認し、請求可能性を個別に検討する必要があります。
3. 訴え提起前3年以内に不貞が終了していた場合
起算点、行為の継続性、完成猶予・更新の有無等を確認し、請求可能性を個別に検討する必要があります。
離婚に至った場合
1. 訴え提起より3年以上前に不貞が終了していた場合
消滅時効は、不貞行為を知ってから3年で完成するところ、この場合には、すでに消滅時効が完成していることになります。
したがって、慰謝料請求権はすべて時効によって消滅することになります。
ただし、不貞行為に対する慰謝料請求は消滅時効が完成しているとしても、離婚に伴う慰謝料請求については、離婚によって生じた損害であることから、離婚時に損害を知ったことになり、消滅時効は離婚時から進行することになります。
したがって、離婚に伴う慰謝料請求の起算点や成否も、離婚原因、損害の内容、相手方との関係等により個別に判断されます。
2. 訴え提起時点でも不貞行為が継続中の場合
起算点、行為の継続性、完成猶予・更新の有無等を確認し、請求可能性を個別に検討する必要があります。
また、前記のとおり、離婚に伴う慰謝料請求についても、起算点と請求要件を個別に確認する必要があります。
なお、実際に慰謝料を請求する場合には、不貞行為に対する慰謝料と離婚に伴う慰謝料を別々に請求するのではなく、合わせて請求し、慰謝料額に反映させることになります。
3. 訴え提起前3年以内に不貞が終了していた場合
起算点、行為の継続性、完成猶予・更新の有無等を確認し、請求可能性を個別に検討する必要があります。
また、前記のとおり、離婚に伴う慰謝料請求についても、起算点と請求要件を個別に確認する必要があります。
最後に
以上が不倫・不貞相手に対する慰謝料請求の争点④「消滅時効」に関する解説となります。
不貞行為における慰謝料請求における消滅時効のポイントは、消滅時効の起算点と、不貞行為に対する慰謝料と離婚に伴う慰謝料は区別すること、の2点になります。
仮に、不貞行為を知った時期が3年以上前であるとしても、結果として離婚することになった場合には、離婚に伴う慰謝料請求は認められる余地があります。
不貞行為をされた側が慰謝料請求をする場合には、不貞行為が発覚した時期がいつなのかも注意する必要があります。

