Archive for the ‘コラム’ Category

【コラム】年金分割等1 年金分割とはどのような制度か

2018-07-11

1 年金分割制度とは

夫婦が離婚する場合、離婚時年金分割を請求することができます。

離婚時年金分割とは、夫婦が離婚する際に、婚姻期間中に支払った年金保険料に対応して、厚生年金や共済年金の婚姻期間に比例する部分を按分する制度です。

婚姻中はお互いが協力し合って財産を形成するものであるため、年金についても公平に分割すべきという考え方に基づき、2007年4月から導入された制度になります。

年金分割の対象になるのは、厚生年金と共済年金のみであり、国民年金や国民年金基金、厚生年金基金、確定給付企業年金や確定拠出年金は、年金分割の対象にならないため注意が必要です。

また、年金分割とは言っても、婚姻期間中の年金保険料積立分に対応する部分しか対象にならないので、婚姻前の支払分については分割できません。

さらに、夫婦の双方が会社員でそれぞれ厚生年金に加入している場合には、夫婦それぞれの年金保険料の支払いを計算して、それを按分することになります。

 

2 被保険者の種類

年金分割にあたっては、被保険者の種類も関係しますので、ここで種類を確認しておきます。

(1)第1号被保険者

20歳以上60歳未満の人であって、厚生年金又は共済年金に加入しておらず、且つ厚生年金または共済年金の加入者に扶養されていない人。

 

(2)第2号被保険者

厚生年金保険の被保険者、国家公務員共済組合・地方公務員共済組合の組合員、および日本私立学校振興・共済事業団年金の加入者。

 

(3)第3号被保険者

第2号被保険者の被扶養配偶者であって、20歳以上60歳未満の人。

 

2 年金分割の種類

(1)合意分割

2007年4月1日以後に離婚等をし、以下の条件に該当したときに,婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。

① 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
② 当事者双方の合意又は裁判手続により按分割合を定めたこと。

当事者間の話し合いによって合意分割を行うためには、当事者間で決定した按分割合を定めた書面を作成します。当事者同士では合意できない場合は、一方の当事者が家庭裁判所に申立をして、その割合を定めることができます。

 

(2)3号分割

夫婦が2008年5月1日以降に離婚をした場合で、2008年4月1日以降に、国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)がある場合に、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間における年金(正確には「年金記録」)を分割するという制度です。3号分割の場合、年金の按分割合は、当然に2分の1となり、当事者の同意は不要です。

 

3 合意分割と3号分割の関係

2008年4月1日以降に関しては、合意分割と3号分割が併存することになります。3号分割の請求のみがなされた場合には、対象となる2008年4月1日以降の期間についてのみ年金分割が行われることになります。

他方、2008年3月31日以前の対象期間を含めて合意分割の請求を行った場合には、合意分割の請求と同時に3号分割の請求もあったものとされます。

 

4 まとめ

年金分割のことでわからないことあれば、すぐに弁護士に相談してみましょう。

弁護士であれば、どのような場合にどのような分割請求の手続きが必要になるのかアドバイスすることが可能ですし、年金分割の調停や審判での代理人を依頼することも可能です。何かと不安なことの多い離婚関連の手続きも安心して行うことができます。

茨城県全域にわたり、地域に密着したサポートを行っている当事務所にぜひ一度ご連絡ください。

【コラム】様々な離婚について4 離婚後の手続き

2018-07-10

1 離婚後の手続き

離婚そのものの手続きが終わってもそれで終わりではありません。新しい生活を送るためには、離婚後の各種手続きが必要になります。以下、順番に見ていきましょう。

 

2 「住民票移動届」「世帯主変更届」を提出

婚姻中に住んでいた場所から引っ越しをする場合には、役所に「住民票異動届」を提出します。届出には、印鑑が必要になります。

離婚により、自分が世帯主になる場合は、役所に行って「世帯主変更届」を提出します。「世帯主変更届」の手続きには、①免許証やパスポートなどの本人確認ができるもの②国民健康保険に加入している場合は、国民健康保険証③印鑑が必要です。

また、住所や苗字が変わると「印鑑登録の変更」が必要になりますので、こちらも併せて手続きをする必要があります。

 

3 「国民健康保険」の手続き

(1)国民健康保険に加入する場合

離婚したことにより元配偶者の健康保険から外れる場合は、離婚から14日以内に役所に行って、国民健康保険の加入手続きをする必要があります。

「国民健康保険」の加入手続きには、①免許証やパスポートなどの本人確認ができるもの②国民健康保険被保険者取得届③健康保険資格喪失証明書④印鑑が必要です。

 

(2)婚姻中に国民健康保険に加入していた場合

婚姻中に国民健康保険に入っていた場合は、「世帯変更」の手続きを行ったうえで、自分が世帯主となり、子どもがいる場合は被保険者として入れます。

 

(3)会社の健康保険に入る場合

離婚後に自分の勤務先の会社の健康保険に切り替える場合には、会社に対して加入手続きの依頼をするとともに、国民健康保険の脱会手続きをします。

「国民健康保険の脱会」に必要なものは、①国民健康保険被保険者資格喪失届②国民健康保険証③新しい健康保険証または資格取得証明書④印鑑になります。なお、脱会手続きは資格喪失の日から14日以内に行う必要があります。

 

4 「児童扶養手当」「児童手当」の手続き

18歳未満の子どもがいる場合は、離婚後に役所「児童扶養手当」の手続きをすると、収入に応じて所定金額の支援を受けることができます。「児童扶養手当」「児童手当」の申請手続きには、①子どもの入籍届出後の戸籍謄本②住民票③申請者名義の預金通帳④所得証明書⑤健康保険証が必要です。

また、学校に通う子どもがいる場合、「就学援助」の申請をして、審査が通れば就学にかかる費用の一部を支給してくれる制度もあります。

 

5 「保育園(保育所)」の申し込み

子どもを保育園に預けて働く場合は、役所で保育園(保育所)への入園の申し込みをします。地域によっては待機児童も出ており、空きがないこともありますので早めに手続きをとりましょう。

申し込みに必要な書類は、住んでいる地域にとっても若干の違いはありますが、①入所申込書②家庭内保育ができないことが確認できる書類③収入が確認できる書類等が必要になります。

 

6  「国民年金」または「社会保険」の手続きをする

(1)会社員の場合

会社員で、「健康保険」「厚生年金保険」「労災保険」「雇用保険」などの社会保険に加入している場合は、会社の担当部署に依頼をすると苗字の変更や住所変更に伴う手続きをまとめてしてもらえます。

 

(2)会社員ではない場合

「国民年金」の変更手続きを行う必要があります。役所に行き、扶養家族でなくなったことや住所・苗字の変更を伝えて手続きします。

「国民年金」の変更手続きには、①年金手帳②離婚届受理証明書(または離婚後の戸籍謄本)③免許証やパスポートなど本人確認のできるものが必要です。

 

7 各種名義変更・住所変更

離婚に伴い、「土地」「家」「車」の財産分与をした場合は、早急に名義変更の手続きを行いましょう。また、「運転免許証」「預金通帳・銀行カード」「クレジットカード」「パスポート」など、住所や苗字の変更をする必要があるものは、速やかに変更手続きを行いましょう。

 

8 「年金分割」の手続き

離婚の際、年金分割の取り決めをした場合は、元配偶者とともに年金事務所に出向き、年金分割の手続きをします。

年金分割請求の期限は2年以内となっており、手続きが遅れると時効になってしまうので、早めに手続きをしましょう。

「年金分割」の手続きに必要なものは、①年金分割の合意書(または公正証書)②双方の年金手帳③双方の戸籍謄本④免許証やパスポートなど本人確認のできるものです。

 

9 まとめ

離婚はそれだけでも相当なエネルギーが必要ですが、離婚後の各種手続きも重要であり、忘れてしまったら大変なことになってしまうものもあります。後々不利にならないように漏れなく手続きをしなくてはなりません。

どんな手続きが必要なのか迷ったら、早めに弁護士にご相談ください。当事務所には様々な手続きにも精通した弁護士が多数在籍しております。親身になってサポート致しますので、ぜひ一度ご連絡ください。

【コラム】様々な離婚について3 偽装離婚の危険性

2018-07-09

1 偽装結婚とは

偽装結婚とは、法律上の定義はありませんが、何かしらの目的をもって実態のない結婚をすることです。偽装結婚の目的は様々考えられますが、「日本人の配偶者等」という在留資格を得るために行われることが多いです。

「日本人の配偶者等」という在留資格は、日本人と結婚すれば取得することができ、この在留資格を手に入れると働き方にも制限がなくなります。そのため、自由に働き、母国に高額の仕送りをすることが可能になるのです。

 

2 偽装結婚が問題となる法律

偽装結婚自体は法律に定義がありませんが、以下の法律に抵触し、罰せられることになります。

(1)虚偽の婚姻届けを提出すると、公正証書原本等不実記載罪(刑法)にあたり、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金。

(2)日本に在留する資格を持たない外国人を隠匿すると、入管法違反となり、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金。

(3)営利目的で(2)の罪を犯した者は、5年以下の懲役及び500万円以下の罰金。

 

関連条文

【日本国憲法 第24条】

婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 

【民法 第752条】

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

 

【刑法 第157条】

公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

【出入国管理及び難民認定法(入管法) 第74条の8】

退去強制を免れさせる目的で、第24条第1号又は第2号に該当する外国人を蔵匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。

 

3 時効について

2-(1)の公正証書原本等不実記載罪に関しては、犯罪が終わってから3年(虚偽の届出から3年)で、刑事訴訟法上の公訴時効が適用されます。

また、2-(2)及び2-(3)の入管法違反については、違法な在留が取り除かれてから3年で公訴時効が適用されます。なお、「違法な在留が取り除かれてから」とは、偽装結婚により取得した在留資格を放棄し、新たに適法に在留資格を取得時点もしくは帰国した時点からという意味になります。

 

4 偽装結婚が発見されるきっかけ

偽装結婚などの偽装滞在者は表面上は正規の滞在者となっているため、わかりにくいのですが、下記のようなきっかけで偽装結婚が発見されることが多いようです。

(1)近隣住民や知人による通報
(2)在留期間更新、永住権取得、帰化申請の際に届け出る情報
(3)法律違反等に対する警察官による調査

 

5 まとめ

明らかに偽装結婚と知っていて結婚した場合も、偽装結婚かもしれないくらいの気持ちで結婚した場合も、前述のような処罰を受ける可能性があります。

また、偽装結婚ではないのに、知り合ってすぐの結婚や、結婚しても同居していない等の事情により、偽装結婚を疑われることもあります。

いずれの場合であっても、一人で対応していくことは難しいと思われますので、早急に弁護士にご相談ください。

当事務所には、様々な分野で経験を積んだ弁護士が多数在籍しておりますので、安心してお任せください。偽装結婚に関係するお悩みがある場合は、ぜひ一度当事務所にご連絡ください。

【コラム】様々な離婚について2 婚約破棄と慰謝料

2018-07-06

1 婚約とは

婚約とは、将来婚姻を締結しようとする当事者間の契約と考えられており、当事者の合意のみで成立します。つまり、結納や指輪の授受がなくても、当事者同士で合意していれば婚約は成立します。

但し、実際に裁判になった場合には、損約が成立しているかどうかについて、①二人の合意が第三者(親、兄弟、友人、勤務先など)にも明らかにされたかどうか②二人の同意に基づいて新たな生活関係が形成されたかどうか③継続的な性関係があったかどうか④二人が合意したときに、その合意の意味を判断できる成年者であったかどうか⑤父母に言われて簡単に交際を絶ったかどうかなどにより判断されることになります。

 

2 婚約破棄には正当な理由が必要

婚約は、正当な理由がなければ一方的に破棄することはできません。但し、以下のような場合には破棄が認められることがあります。

  1. 婚約相手が浮気をした。
  2. 婚約相手から暴力行為や精神的にダメージを受けるような暴言を受けた。
  3. 婚約相手が精神病患者や身体障害者となってしまった。
  4. 婚約相手が性的不能者となってしまった。
  5. 婚約相手が職を失い、収入が大きく減少した。
  6. 婚約相手の悪質な前科や借金、異性との深い関係が清算されていなかった、などの事実を婚約後に知った。

婚約をしたものの親や兄弟の反対を受けたり、一緒に暮らすことを考えたら性格が合わないと感じたりすることもあるかもしれませんが、それらの理由だけでは正当な理由とは言えず、婚約破棄は認められません。

 

3 婚約破棄の慰謝料・損害賠償の相場

正当な理由がないにも関わらず、相手から一方的に婚約を破棄された場合には、慰謝料(精神的損害)や損害賠償(財産的損害)の請求ができることがあります。

慰謝料の相場としては、50万から200万円程度になりますが、実際には、婚約に至るまでの交際期間、婚約後の期間、婚約破棄の原因、妊娠等の有無、社会的立場や経済的事情等、様々な事情を考慮して決定されることになります。

 

4 慰謝料請求の手順

(1)当事者同士での話し合い

直接会ってでも電話でもメールでもかまいませんので話し合いを行い、当事者同士での合意ができれば、合意に基づいた金額を請求します。

 

(2)調停・裁判

元婚約者が話し合いに応じない、当事者同士での合意ができない場合は、慰謝料請求調停を申し立てます。

調停では、調停員が当事者の婚約破棄に至った事情や原因を聞いたうえで、解決案の提示や助言を行います。

調停でも合意ができなければ、裁判を申立てをします。裁判で有利な判決を得るには、一方的に婚約を破棄されたメールや婚約指輪等、客観的な証拠を準備する必要があります。

 

5 まとめ

婚約破棄をされた場合、慰謝料や損害賠償の請求について検討することもあると思いますが、元婚約者がが話し合いに応じないこともありますし、応じたとしても双方の主張が食い違い、なかなか話がまとまらないこともあります。そのような場合は、一人で悩まずに早急に弁護士に相談するようにしましょう。

茨城県という地域に密着したサービスを展開している当事務所には、経験豊富な弁護士が多数在籍しております。お困りのことがあればぜひ一度当事務所にご相談ください。

【コラム】様々な離婚について1 外国人配偶者との離婚

2018-07-05

1 外国人配偶者との離婚

国際化の進展に伴い、日本人が外国人と結婚するケースも多くなりましたが、一方で一度は結婚したものの文化の違いなどから離婚するケースも多くなっています。

日本人が外国人の配偶者と離婚したい場合、日本人同士の離婚の場合とは異なり、①どこの法律に従って離婚の手続きを行うのか(準拠法について)②日本の裁判所で離婚についての調停や裁判ができるのか(国際裁判管轄について)という問題があります。

 

2 準拠法について

外国人配偶者との離婚にあたって適用される法律(準拠法)については、「法の適用に関する通則法」に定められています。「法の適用に関する通則法」第27条および第25条によると、以下のとおりです。

(1)夫婦の一方が日本に常居所地を有する日本人であるときは『日本法』
(2)夫婦の本国法が同一であるときは『本国法』
(3)夫婦の共通本国法がないときは『夫婦の共通常居地法』
(4)共通常居地法がないときは『夫婦に最も密接な関連のある地の法律』

なお、「常居所」とは、相当長期間、居住している場所を意味します。

以上より、日本人配偶者が日本に常居所地を有していれば、外国人配偶者がどの国の人でも日本の法律が適用されます。

 

3 日本の裁判所で離婚についての調停や裁判ができるのか

日本人同士の離婚の場合、協議離婚の合意ができなければ日本の裁判所に調停を申し立てることになります。しかし、外国人配偶者が相手の場合は、必ずしも日本の裁判所に申し立てができるわけではありません。

では、どこの裁判所に申し立てをすればよいのかについて、法令上は明確ではありませんが、最高裁判所の判例により一応の基準が確立されています。

最高裁判所昭和39年3月25日判決によると、日本人配偶者が、外国人配偶者を相手方として、日本の裁判所に離婚についての調停や訴訟を提起することができるのは、以下のいずれかの場合になります。

(1)相手方の住所が日本国内にある場合
(2)相手方の住所が日本国内にない場合であっても、

① 相手方から「遺棄」された場合
ここでの「遺棄」とは、婚姻関係にある夫婦間の義務である「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」に対する違反をいいます。
② 相手方が行方不明の場合
③ その他①②に準じる場合

過去の判例では、生活実態や相手方の有責性等の事情を考慮して実質的に判断し、日本に裁判籍を認めているものが多々あります。

 

4 まとめ

離婚は、これまでの婚姻関係を解消するもので、財産分与、慰謝料、養育や面会交流等決めなくてはならないことがたくさんあり、日本人同士であっても精神的な負担は大きいものです。相手が外国人の場合はなおさら不安に感じることも多いのではないでしょうか。

当事務所では、経験豊富な弁護士が丁寧にお話をうかがい、ご不安を解消できるようにアドバイス致します。また、茨城県全域に対応している当事務所では多くの相談事例からノウハウを蓄積しており、安心の解決策をご提案することが可能です。

外国人配偶者との離婚でお悩みの際には、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

【コラム】アスペルガーとADHD5 ADHDを持つ相手と離婚したい

2018-06-27

1 ADHDとは

(1)症状

ADHDとは、不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のことです。人によって現れ方が異なり、多動性衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型のタイプがみられます。

 

(2)原因

ADHDの原因はまだ正確には解明されていませんが、先天的な脳の機能障害によるもので、しつけや育て方の問題ではないという考えが主流になっています。

 

(3)治療

アスペルガー症候群同様、原因を根治するのは難しく、対人関係能力や社会性を身につけるための心理社会的療法と、行動のコントロールをしやすくする薬物療法を組み合わせた治療が行われます。

 

2 配偶者がADHDだったら

配偶者がADHDの場合、本人に悪気はないのですが、約束を守ることができなかったり、会話をしていても話を遮って自分の言いたいことだけを言ってしまったりすることがあります。また、金銭の管理が苦手で、散財してしまうこともあります。他には、衝動が抑えられないことからよく考えずに思ったことをストレートに伝えてしまったり、突然相談もなく高額な買い物をしてしまったりすることもあります。

はじめは配偶者を理解して支えようと思っていても、長い間こういった状況が続くと、心身ともに疲れてしまい、次第に追い詰められてしまうことも少なくありません。

夫婦で支え合えるのが一番ですが、配偶者のためにも自分自身のためにも早めに専門家に相談するようにしましょう。

 

3 ADHDを理由に離婚できるか

(1)協議離婚・調停離婚

協議離婚の場合は、夫婦で話し合い、離婚に合意ができればすぐに手続きをすることが可能です。

協議離婚の合意ができず、なかなか話が進まない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをし、調停委員の関与のもと、夫婦で話し合いをすることになります。調停を通じてお互い合意ができれば離婚することができます。

 

(2)裁判離婚

裁判離婚とは、協議離婚、調停離婚いずれも成立しなかった場合に、訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚するものになります。離婚裁判を起こすには、民法で認められている離婚の理由(「法的離婚事由」)が必要になります。 

 

(3)「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」に該当するか

法定離婚事由の一つに、民法第770条第1項第4号「強度の精神病にかかり回復の見込みがない場合」というものがあります。ここで「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」とは、夫婦生活に必要な協力や扶助といった義務が果たせない状態を指します。

配偶者がADHDであることが、この条項に該当するかどうかですが、アスペルガー症候群の場合同様、ADHDであることだけでは、ここには該当せず離婚の理由とすることは難しいでしょう。

 

(4)「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか

前述のように、ADHDであるということだけでは、民法第770条第1項第4号には該当しない可能性が高いですが、症状やこれまでのエピソード等、様々な要素を検討し、民法第770条第1項第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」により離婚できる可能性があります。

 

4 まとめ

配偶者がADHDで、婚姻生活を続けるのが難しいとお考えの場合は、精神的に追い詰められてしまう前に、できるだけ早く、当事務所にご相談ください。

もし当事者同士で離婚について合意できず、離婚裁判になった場合でも、具体的な1つ1つのエピソードや、障害以外の事情も考慮することにより、離婚が認められる可能性もあります。

茨城県全域に対応している当事務所には、発達障害等にも精通している経験豊富な弁護士が数多く所属しています。お困りのことがあれば、一人で悩まずに、ぜひ当事務所にご連絡ください。

【コラム】アスペルガーとADHD4 アスペルガー症候群の相手と離婚したい

2018-06-26

1 アスペルガー症候群とは

(1)症状

アスペルガー症候群には、(1)社会的に適切に振る舞うことが難しい、(2)円滑なコミュニケーションが難しい、(3)こだわりが強く、柔軟な対応が難しいという3つの症状があります。

 

(2)原因

アスペルガー症候群の原因は解明されていませんが、先天的な脳の機能障害が原因であると考えられています。また、症状や障害の程度も個人差が大きく、原因は一つではなく、様々な原因が絡み合って症状が出ていると考えられます。

 

(3)治療

根治が期待できる画期的な治療方法はありませんが、社会生活がうまくいくことをサポートするような心理療法やストレスケアに効果のある薬物療法を取り入れて治療を進めていきます。

 

2 配偶者がアスペルガー症候群だったら

配偶者がアスペルガー症候群の場合、コミュニケーションを円滑にすることができないため、言葉どおりに物事を受け止めてしまったり、不適切な言葉を使って相手を傷つけてしまったりすることがあります。

また、相手の気持ちを読み取って、理解し寄り添った対応をすることも難しいため、相手としては「自分を理解してくれていない」と感じることもあります。

もちろん、夫婦で支え合って病気と向き合っていけるのが一番ですが、このような状況が長く続くと、支える側も心身が不調になることが多くあります。追い詰められて深刻な状況になる前に離婚をお考えの場合は、早めに専門家に相談するようにしましょう。

 

3 アスペルガー症候群を理由に離婚できるか

(1)協議離婚・調停離婚

協議離婚の場合は、夫婦で話し合い、離婚に合意ができればすぐに手続きをすることが可能です。

協議離婚の合意ができず、なかなか話が進まない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをし、調停委員の関与のもと、夫婦で話し合いをすることになります。調停を通じてお互い合意ができれば離婚することができます。

 

(2)裁判離婚

裁判離婚とは、協議離婚、調停離婚いずれも成立しなかった場合に、訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚するものになります。離婚裁判を起こすには、民法で認められている離婚の理由(「法的離婚事由」)が必要になります。 

 

(3)「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」に該当するか

まず、基本的には、夫婦であればお互いに扶け合いながら夫婦生活を維持する責任と義務がありますので、配偶者が病気になってしまったからといって一方的に離婚を申し立てることはできません。ただし、配偶者が強度の精神病にかかってしまい回復が見込めない場合には、民法第770条第1項第4号による離婚を申し立てることができます。

では、配偶者がアスペルガー症候群であることが、この条項に該当するかどうかですが、アスペルガー症候群であることだけでは、ここには該当せず離婚の理由とすることは難しいと思われます。

 

(4)「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するか

前述のように、アスペルガー症候群であるということだけでは、民法第770条第1項第4号には該当しない可能性が高いですが、症状やこれまでのエピソード等、様々な要素を検討し、民法第770条第1項第5号の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」により離婚できる可能性があります。

 

4 まとめ

以上のとおり、配偶者との離婚についての合意が無い限り、アスペルガー症候群だからといって、直ちに離婚が認められるわけではありません。

そのため、配偶者がアスペルガー症候群であることを理由に離婚を考える場合には、専門家である弁護士に相談し、離婚請求が認められる見込みがあるかどうか、離婚を認めてもらうにはどのようにすればよいかなどの点についてアドバイスをもらうのが良いでしょう。

茨城県全域に対応している当事務所には、経験豊富な弁護士が数多く所属しています。お困りのことがあれば、ぜひ一度当事務所にご連絡ください。

【コラム】アスペルガーとADHD3 夫もしくは妻がADHD?

2018-06-25

1 ADHDとは

ADHDとは、先天性の障害であり、不注意、多動、衝動の症状が見られます。

ADHDの人は、注意力が散漫でミスが多かったり、じっとしているのが苦手でそわそわとした行動をとったり、思ったことをそのまま口にしたりします。また、うまくできない自分を責めたり、ひどく落ち込んだりしてますます悪循環に陥ることもあります。

治療で根本的に治るものでもないため、一番つらいのは本人かもしれませんが、それを支える側としてもつらいと感じることが多いのではないでしょうか。

 

2 子どもの頃の特徴

ADHDの子どもには以下のような特徴がみられます。

 

(1)不注意

  • テスト等でのうっかりミスが多い
  • ものをよく無くす、忘れ物が多い
  • 興味のあることに集中しすぎる
  • 切り替えがうまくできない

 

(2)多動

  • 落ち着いて座っていることができない
  • 集団で活動する際に話を聞くことができない

 

(3)衝動

  • 好きなときに好きなことを話す
  • 思ったとおりにならないと駄々をこねる

 

3 大人になってからの特徴

大人になってからみられる特徴としては以下のようなものがあります。

 

(1)不注意

  • 提出物等の期限を守れない
  • ケアレスミスを何度も繰り返えす
  • ものを無くす

 

(2)多動

  • すぐに気が散る、仕事に集中できない
  • 順序立てて仕事をすることができない
  • 複数の業務がある場合、どこから手を付けてよいかわからなくなる

 

(3)衝動

  • 思ったことをすぐに発言してしまう
  • 他の人が話していても遮って話し始めてしまう
  • 作業中、他に気になることがあるそちらに集中してしまう
  • 怒りがうまく抑えられない
  • 少しのミスでも他のことが手につかなくなるくらい落ち込む

 

4 結婚生活で問題になりがちなこと

(1)不注意

ADHDの人は、注意深く相手の話を聞くことが難しいため、相手の話を十分に聞かずに、自分の意見だけを押し通してしまうことがあります。また、約束した日や記念日を忘れてしまい、相手に悲しい思いをさせてしまうこともあります。

他には、お金の管理が苦手だったり、家事育児を段取り良く行うことが難しかったりします。

 

(2)多動

ADHDの人は、自分の思ったことを早口でまくしたてたり、相手の言うことに耳を傾けなかったりしまう。ゆったり落ち着いて会話を楽しむような場面でも、貧乏ゆすりがやめられなかったり、そわそわと落ち着かない素振りを見せたりします。また、一つの仕事が長続きせず、相手を心配させてしまうこともあります。

 

(3)衝動

ADHDの人は、その場限りの思いつきの発言や提案をして、相手を傷つけてしまうことがあります。また、思ったことを直接的な言葉で伝えて、相手に嫌な思いをさせてしまうこともあります。また衝動が抑えられないため、高額な買い物や契約を独断でしてしまうことがあります。

 

5 ADHDの原因

ADHDの確たる原因はまた解明されておらず、現在も研究や議論がなされていますが、生まれつき脳に何等かの機能障害があることが原因であるとされています。さらに、脳の中でも前頭前野(大脳の機能)のバランスが崩れていることにより、脳のネットワークが乱れているとも考えられています。

また、遺伝的要素や胎児期に受ける環境的悪影響も関係するという考えもあります。

いずれにせよ、以前言われていたように、「親のしつけが悪い」「育て方に問題がある」ということが直接的な原因ではないと考えられています。

 

6 まとめ

ADHDについては、まだわからないことも多いため、まわりから理解されにくく、本人はもちろん、本人を支える側としても辛いことが多いかもしれません。

ADHDは、療育や教育といった心理・社会的アプローチや薬物療法などの医療的なアプローチによって症状を軽減することができます。ですが、その場合であっても、本人も支える側も大変で、時には離婚を考えてしまうことがあるかもしれません。

そのようなときは一人で抱え込まずに、専門家にご相談ください。茨城県全域に対応している当事務所は、経験豊富な弁護士が多数在籍しておりますし、必要に応じて各種専門家と連携をとることも可能です。ぜひ一度ご連絡ください。

【コラム】アスペルガーとADHD2 夫もしくは妻がアスペルガー症候群?

2018-06-08

1 アスペルガー症候群について

アスペルガー症候群とは、脳の前頭葉の下前頭回などの社会的な活動をするための部分に機能障害があるものをいいます。

症状としては「コミュニケーションの問題」「対人関係の障害」「限定された物事への興味やこだわり」の3つがあります。

夫もしくは妻がアスペルガー症候群またはその可能性がある場合、本人はもちろん、支える側にとっても苦労が多く大変な思いをされている方も多いと思います。

 

2 子どもの頃の特徴

アスペルガー症候群の子どもの特徴には以下のようなものがあります。

  • 想像力が乏しい
  • コミュニケーションを取ることが苦手(相手の目を見て話すことができない、会話がかみ合わない、抑揚がない)
  • 運動が苦手
  • 手順にこだわる
  • 相手の気持ちが分からない
  • 特定のものに対して強い関心を示す
  • 数字や描画について独特な才能を持っている場合がある

 

3 大人になってからの特徴

アスペルガー症候群は子どもの間には気づかず、大人になってから気づくこともあります。以下の大人になってからの特徴になります。

 

(1)社会的に適切にふるまうことが難しい

  • 相手との距離感がうまくつかめない
  • 相手の気持ちを察することができず不適切な発言をしてしまう

 

(2)コミュニケーションを円滑にとることが難しい

  • 質問にうまく答えられない
  • 冗談が通じない

 

(3)こだわりが強く、柔軟にものごとを捉えることが難しい

  • 物事の優先順位がつけられない
  • 自分の興味のあることにはのめり込む

 

4 結婚生活で問題になりがちなこと

(1)相手の気持ちを察することが難しい

円満な夫婦生活を送るためには、言葉でのコミュニケーションに限られず、相手の表情を見て感情を汲みながら、相手に配慮してコミュニケーションをとることが必要になります。

相手が発言する際の声のトーンや口調から相手の喜怒哀楽までを察したりすることが、アスペルガー症候群の人には難しかったりします。

 

(2)不適切な表現や言動で相手を傷つけてしまうことがある

アスペルガー症候群の人は、自分の思ったことをその場面や状況に関係なく発してしまうことがあります。

そのため、本人は悪気がなくても相手を傷つけてしまうことがあります。また、傷ついている相手を見ても、どうして相手がそのような気持ちになっているのかが理解できずに悩んでしまうこともあります。

 

(3)言葉どおりに受け取ってしまい夫婦の関係に支障が出る

相手の言葉の裏を理解することが難しいため、なんでも言葉どおりに受け取ってしまい、配慮に欠けた言動や行動に出てしまったり、相手が本当は望んでいないことをしてしまったりすることがあります。

 

5 アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、先天性の脳の機能障害が原因と考えられています。胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性があるとも考えられています。

原因を根本的に治療することは難しいですが、本人の努力と周りの支援、医師による治療によって症状を軽減していくことは可能です。

 

6 まとめ

前述のように、治療により症状を軽減していくことは可能ですが、本人の努力と周りの支援が不可欠になります。

夫婦で支え合って病気と向かい合えることが理想ですが、現実は厳しく、支える側としては疲弊してしまい、離婚を考えることもあるかもしれません。そんなときは一人で悩まずに専門家にご相談ください。

茨城県全域に対応している当事務所は、経験豊富な弁護士が多数在籍しておりますし、必要に応じて各種専門家と連携をとることも可能です。ぜひ一度ご連絡ください。

【コラム】アスペルガーとADHD1 配偶者がアスペルガー症候群?ADHD?

2018-06-07

配偶者がアスペルガー症候群である、またはADHDである、ということで、夫婦間でご苦労を抱えていたり、またはそのような診断を受けてはいないものの、配偶者の様子にどことなく気になる点がある、おかしいと感じる行動がある、と悩んでいたりする方は多いのではないでしょうか。

ここでは、アスペルガー症候群とADHDについて説明いたします。

 

1 アスペルガー症候群とは

自閉症スペクトラムの中にカテゴライズされるアスペルガー症候群とは、先天的な脳の機能障害です。

アスペルガー症候群の人は、職場でのコミュニケーションや人間関係に難しさを感じたり、興味や関心の幅がせまく、特定の対象に強いこだわりを見せたりすることがあります。

また、日常生活がパターン化しやすかったり、五感が非常に敏感(またはその逆)だったりします。

 

(1)具体的な特徴

① チーム・グループでの業務が苦手

アスペルガー症候群の人は、集団の中で行動することが苦手な場合が多いので、職場や町内会等の活動で適切な距離感を持ちながら行動することが難しいことがあります。

チームの中で自分がどう動けばよいかが把握できないまま、自分が良いと思ったことを行動に移してしまい、「空気が読めない」と思われてしまうこともしばしばです。

 

② 伝えたいことが伝わらない

アスペルガー症候群の人は、職場での業務の指示を誤って理解したり、伝えるべきことがうまく伝えらなかったりします。

ビジネスの場では、言われたことを瞬時に理解して返答しなくてはならないような場面もありますが、なかなか理解のスピードが追い付かなかったり、相手の気持ちに沿った返答をすることが難しかったりして苦労することがあります。

 

③ 自己流で物事を進めてしまう

アスペルガー症候群の人は、特定の物事にこだわる傾向があるので、業務上マニュアル通りに進めなくてはならないものであっても、自分が気になるところがあるとそこにだけ注力してしまうことがあります。

 

(2)診断

アスペルガー症候群の診断は、医師が行います。

インターネットでもセルフチェックテスト等を行うことができますが、不安があれば病院を受診するようにしましょう。

医師による問診、これまでの経緯、日常生活で困っていること等の確認後に心理的検査や生理的検査が行われることになります。

 

2 ADHDとは

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は不注意、多動性、衝動性の3つの症状がみられる発達障害のことです。行動へのあらわれ方は人それぞれですが、日常のコミュニケーションに支障をきたすことがあり、職場での業務に問題が生じることもあります。

 

(1)具体的な特徴

① ミスが多い

ADHDの人は、仕事に必要なことを忘れたり、ケアレスミスが多かったりします。

また、期日管理が難しく、提出物が締め切りまでに提出できないこともあります。

② 落ち着きがなく見える

ADHDの人は、指先で机をトントン叩く癖や貧乏ゆすりがやめられないことがあります。

また、会議中であっても集中することができず、そわそわと落ち着かない素振りを見せることがあります。

③ 自分が抑えられない

ADHDの人は、会議中に不用意な発言をしてしまったり、みんなで物事を進めるべき場面でも、自分が良いと判断したことは物事を他人の意見を聞かずに進めてしまったりすることがあります。

 

(2)診断

ADHDかどうかについての診断も、医師が行います。

まずは問診から始まりますので、受診する前に、日常生活で困っていることや悩んでいることなどをまとめておくとよいでしょう。

問診後は、心理的検査や生理的検査が行われることになります。

 

3 まとめ

配偶者がアスペルガー症候群またはADHDである場合やそれらが疑われる場合、症状が出ている本人も苦しいですが、それを支える側もまた苦労が絶えないでしょう。

配偶者の症状が重篤な場合、離婚についても考えることがあるかもしれません。そのようなときは、夫婦の問題だから、と一人で抱えこまずに専門家に相談するようにしましょう。第三者が間に立って話をすることで、解決策が見えてくることもあります。

当事務所は茨城県全域に渡ってサービスを展開しており、経験豊富な弁護士がサポート致します。配偶者がアスペルガー症候群またはADHDで離婚をお考えの場合は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

keyboard_arrow_up

0298756812 LINEで予約 問い合わせ