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離婚後の公的扶助 ④離婚後における生活保護の申請

2018-07-27

1 離婚と生活保護

離婚したものの、慰謝料や財産分与もなく、収入を得ることも難しい場合は、生活に困ってしまいますが、そのような場合生活保護を受けることはできるのでしょうか。

 

2 生活保護とは

生活保護制度とは、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度になります。

生活保護の受給には、以下のような条件が必要になります。

① 働くことができない
② 預貯金がない、換金できるものを持ち合わせていない
③ 親類からの支援が受けられない
④ 生活保護以外の他の法律に基づく手当を全部活用している

生活保護は、現在住んでいる地域の福祉事務所に出向き、申請書、身分証明書、資産収入の申告書を合わせて申請します。

申請書を提出すると、実際の生活環境、資産の有無、就労可能性等が調査され、受給の有無について判断されます。通常は14日以内に、郵送で結果の通知が送られ、生活保護の認定を受けた場合は、毎月保護費が支給されるようになります。

なお、実際の生活保護の基準額は、申請する人の年齢や家族構成、住んでいる地域によって違います。

 

3 扶助の種類

生活保護の扶助には以下の種類があります。日常の様々な場面で金銭での支援が受けられるので、通常生活するうえで困ることはまずないと言えます。

(1)生活扶助
(2)住宅扶助
(3)医療扶助
(4)介護扶助
(5)教育扶助
(6)出産扶助
(7)生業扶助
(8)葬祭扶助

 

4 生活保護のデメリット

上記のように様々な場面で支援が受けられる生活保護ですが、以下のようなデメリットもあります。

(1)車を持つことができない。
(2)生命保険も一部の安価な掛け捨て型以外のものには入れなくなり、解約するとお金が戻ってくるタイプの保険は解約して生活費に充てる必要があります。
(3)支給される住宅扶助の限度額を超える家賃の住居には住むことができません。
(4)就労が可能な状況であれば、仕事を探し続けなくてはなりません。

生活保護を受けている間は、生活状況(経済状況)を定期的に福祉事務所に報告する義務が生じ、必要に応じて担当者が実際に家庭を訪問します。訪問の上、指導を受けた場合は、その内容に従う必要があります。

 

5 まとめ

最低限の生活を送るための支援である生活保護ですが、実際に申請に行っても受給の認定を受けることができなかった、ということもあります。お困りのことがあれば、早めに弁護士に相談しましょう。

離婚後の生活を早々に立て直すためにも、本当に生活保護を必要としている方が困らないようサポートいたします。

当事務所には離婚にまつわる問題に精通した弁護士が多数所属しております。茨城県内で弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご相談ください。

 

離婚後の公的扶助 ③離婚後における公的扶助の利用

2018-07-26

1 離婚後における公的扶助の利用

離婚により生活状況が変わり、離婚後は生活にゆとりがなくなってしまうことがあります。特に、母子家庭になると、経済的に苦しい状態になってしまうことも多くあります。各地方自治体で行われている「公的扶助」にはどのようなものがあるかを見ていきましょう。

 

2 児童扶養手当

児童扶養手当とは、父母の離婚などで、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭(ひとり親)の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される手当になります。

 

(1)支給対象

次の条件に当てはまる、18歳に達した日以後最初の3月31日を迎える前の児童を監護しているひとり親または児童の養育者が支給の対象となります。

① 父母が婚姻を解消した児童
② 父又は母が死亡した児童
③ 父又は母が重度の障害にある児童
④ 父又は母の生死が明らかでない児童
⑤ 父又は母から1年以上遺棄されている児童
⑥ 父又は母が裁判所からの保護命令を受けている児童
⑦ 父又は母が1年以上拘禁されている児童
⑧ 婚姻しないで生まれた児童
⑨ 父・母ともに不明である児童(孤児など)

ただし、上記の条件に該当しても、次のような場合は、受給資格がありません。

① 日本国内に住所がないとき
② 児童が児童福祉施設等に入所しているとき、または里親に委託されているとき
③ 児童が父または母の配偶者(事実婚を含む)に養育されているとき(父または母が重度の障害の場合を除く)

 

(2)支給の制限

(1)の受給資格があっても以下の場合は手当の一部又は全部が停止されることもあります。

① 公的年金等(遺族年金や障害年金、労災による遺族補償等)の受給がある場合
② 児童扶養手当の受給開始(または受給要件発生)から一定の年数が経過した場合
③ 受給資格者及び扶養義務者等の所得が所定の限度額より多い場合

 

2 母子福祉資金・父子福祉資金・寡婦福祉資金

20歳未満の児童を扶養している母子家庭や父子家庭、寡婦の経済的自立を支援するための貸付金制度になります。

 

(1)貸母子福祉資金

【母子福祉資金】

・20歳未満の児童を扶養する母子家庭の母

・父母のいない20歳未満の児童

【父子福祉資金】

・20歳未満の児童を扶養する父子家庭の父

【寡婦福祉資金】

・寡婦とその寡婦に扶養されている20歳以上の子

・配偶者のいない40歳以上の女性で、寡婦以外の方

 

(2)資金の種類 

金額は自治体によって若干異なる場合があります。詳しい内容は各地方自治体のホームページで確認しましょう。

 

3 医療費助成制度

(1)一人親家庭等医療費助成制度

市町村単位で独自に設定している制度で、一人親家庭に対して、世帯の保護者や子どもが病院等で診療を受けたときに健康保険の自己負担分を市が助成する制度です。但し、所得制限があります。

 

(2)こども医療費助成

所得制限により一人親家庭の医療費助成を利用できない場合でも利用可能な制度です。ただし、親に対する医療費助成はありません。

 

4 生活保護

生活保護とは、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。

 

(1)手続きの流れ

① 事前の相談

生活保護制度の利用を希望する場合は、各自治体の担当窓口に相談します。生活保護制度の説明を受け、生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について一緒に検討してもらいます。

 

② 保護の申請

生活保護の申請をすると、以下のような調査が行われます。

・実地調査(家庭訪問等)
・資産調査
・仕送り等援助の可否の調査
・年金等の社会保障給付の調査
・就労の可能性の調査等

③ 保護費の支給

厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入等)を引いた額が保護費として毎月支給されます。

 

5 まとめ

離婚に関係する各種手続きや公的扶助制度についてお困りのことがある場合は、水戸市、日立市、牛久市を中心に茨城県全域に対応している当事務所にぜひ一度ご相談ください。離婚問題に精通している弁護士にご相談いただければ、必要書類の準備や各種手続きも迅速に行うことが可能です。

一人での手続きに不安がある場合は、早めにご相談ください。経験豊富な弁護士がサポート致します。

 

離婚後の公的扶助 ②離婚後における戸籍と姓の変更

2018-07-25

1 離婚後における戸籍と姓の変更

離婚後の姓をどうするか、戸籍をどうするかについては、婚姻により姓を変更した当事者にとっては重要な問題になります。ここでは、離婚後の姓と戸籍についてご説明いたします。

 

2 離婚後の姓について

(1)婚姻後も同じ姓だった人の場合

民法750条により、夫婦は婚姻のとき、夫または妻のどちらかの姓を称することになります。婚姻後も婚姻前と同じ姓だった方は、離婚をしてもそのままの姓を名乗ることになります。

 

(2)婚姻により姓が変わった人の場合

婚姻により姓が変わったは、離婚をすると婚姻前の姓に当然戻ります(復氏)。ただし、離婚後も離婚前の姓を名乗りたい場合は、離婚の日から3ヵ月以内に、「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を夫婦の本籍地または届け出人の所在地の役所に提出することによって離婚前の姓を名乗り続けていくことができます(婚氏続称制度)。なお、この3ヶ月の期間ですが、離婚後の姓は速やかに確定すべきとの観点から延長することはできないと考えられています。ただし、離婚して3ヶ月以上経過してから離婚前の姓を名乗りたいと思ったときには、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立て」(戸籍法第107条第1項)を行うことになります。

家庭裁判所により「氏の変更」が認められるためには、社会生活上で不利益・不便が生じているなどの「やむを得ない事由」がなければならないとされています。

 

3 離婚後の戸籍について

婚姻後も婚姻前と同じ姓を名乗っていた方は、離婚後も戸籍に変動はなく、そのままの戸籍にとどまります。一方、離婚によって旧姓に戻った人は、原則として婚姻前の戸籍に戻ります(復籍)。ただし、次の場合には、新しい戸籍を作ってそちらに入ることになります。

① 婚姻前の戸籍が除籍されている場合
② 婚姻前の姓(氏)に戻った人が新戸籍編製の申し出をする場合
③ 婚姻時の姓(氏)を名乗りたいとして婚氏続称の届け出を行った場合

 

4 子どもの姓と戸籍

(1)子どもの姓について

両親が離婚しても、子どもの姓は変わりません。たとえ、親権者が旧姓に戻った場合であっても、当然に子どもの姓も変わるわけではないのです。

また、親が婚氏続称の届け出をした場合であっても、婚姻中の姓と続称の手続をとった姓は、法律上別の姓とされます。つまり、呼び方は同じであってもその親と子の姓は異なるということになります。

 

(2)子どもの戸籍について

子どもの戸籍については、従前のままであり、自動的に親権者である親の戸籍に移動することはありません。また、姓が異なる場合は、親の戸籍にその子を入れることができませんので、婚姻により姓が変わった人が子どもの親権者になった場合で、自分と同じ戸籍に入れたい場合は、子どもに自分と同じ姓を名乗らせる必要があります。なお、子どもの姓を自分の姓と同じにするには、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可(民法791条)」の申立てをすることになります。

 

(3)子どもの入籍手続

「子の氏の変更許可審判書」を添付して、入籍届を出すことにより、元夫婦の戸籍にいた子どもが、自分の戸籍に異動して同じ姓を名乗ることになります。このとき、自分が親の戸籍に入っている場合は、子どもが同じ戸籍に入れませんので、入籍届で新しい戸籍を作ることになります。

 

5 まとめ

姓や戸籍に関する手続きには期限が設定されいていることがあります。そのため、可能であれば離婚前にどうしていくのかを決めて、離婚後速やかに手続きをする必要があります。手続きをするタイミングや、どういった手続きをする必要があるかについて迷った場合には、早めに弁護士に相談しましょう。

茨城県内で、離婚に精通した弁護士をお探しの場合は、ぜひ当事務所にご連絡ください。どんなご相談でも丁寧にサポート致します。

 

離婚後の公的扶助 ①再婚の留意点

2018-07-24

1 再婚について

再婚をする場合、手続きは初婚の場合と変わりません。再婚するにあたって気を付けるべき点はあるのでしょうか。以下詳しくみてみましょう。

 

2 再婚に関する法律と戸籍

まずは、婚姻適齢、重婚の禁止など「婚姻できる条件」を満たす必要があります。

加えて、女性が再婚する場合は、「再婚禁止期間」に留意する必要があります。この再婚禁止期間は、平成28年6月1日に改正され、この改正によって、女性の再婚禁止期間は大幅に短縮されました。さらに以下の条件さえ満たせば、再婚禁止期間内でも再婚できるようになったのです。

① 離婚が成立した日から100日経った
② 離婚したとき妊娠していなかった証明書の提出
③ 離婚後に出産したという証明書の提出

【参考条文】

第733条

(再婚禁止期間)

女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

 1.女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合

 2.女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)

第746条 第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。

 

3 戸籍の変更

初婚同様、再婚相手と同一の戸籍に入ることになります。これに伴い、①婚姻届の提出と同時に、どちらかを筆頭者にした戸籍が新たに作られ、②相手の戸籍へ移動した時点で、これまで入っていた戸籍からは除籍される、ということになります。

 

4 再婚するための手続き

再婚相手とともに、婚姻届を提出して手続き完了です。入籍後は、住民票や社会保険などの手続きを行っておきましょう。姓が変わった場合には、銀行口座やクレジットカードの名義変更手続きも必要になります。

 

5 どちらかに子どもがいるときの再婚

自分か再婚相手に子どもがいる場合は、再婚前に「子どもの名字や戸籍」のことを決めておく必要があります。再婚すると、自分は再婚相手と同じ苗字になり、同一の戸籍に入ることになりますが、何もしなければ子どもの戸籍はもちろん、苗字も変わりません。子どもの養育や相続ついても後々トラブルにならないようきちんと考えておく必要があります。

 

6 養子縁組・特別養子縁組とは

養子縁組とは、血縁関係がない者同士を、法律上の親子関係とする契約のことを指します。養子縁組には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つの制度があります。

(1)普通養子縁組

血のつながった父母との親子関係を維持したまま、新たに養親とも法律上の親子となる制度です。この場合、養子になる子どもは「普通養子」と呼ばれます。一般的に再婚時に行われる養子縁組はこの普通養子縁組になります。

 

(2)特別養子縁組制度

血のつながった父または母との関係は完全に断ち切り、養親となる方を実親と同じ扱いにするための制度です。特別養子縁組を行うためには、様々な条件が規定されています。

 

7 離婚した元配偶者との再婚

一度離婚をした相手とでも特別な手続きをすることなく再婚できます。

 

8 再婚したことを前の配偶者に知られてしまうことはあるのか

元配偶者は、離婚により他人になっているため、現在の状況を探ることはできません。そのため、再婚したことを知られることはないと言えます。ただし、元配偶者は、実子の戸籍抄本を取ることは可能です。そのため、元配偶者との間に子どもがいる場合は注意が必要です。市区町村役場で、戸籍や住民票の閲覧制限について相談しておくと安心です。

 

9 まとめ

縁あって再婚をされる場合には、心おきなく新しい生活を楽しみたいと思われることでしょう。そのためにも再婚における留意点を理解しておくことはとても重要です。

再婚にあたってはそれほど難しい手続きもありませんが、少しでも不安なことがあればすぐに弁護士に相談しましょう。

離婚、再婚に詳しい弁護士をお探しの場合は、水戸市、日立市、牛久市を中心に茨城県全域に対応している当事務所にぜひ一度ご相談ください。

 

【コラム】年金分割等7 按分割合を0.5以外に定める方法は?

2018-07-20

1 3号分割の場合

3号分割とは、3号被保険者に適用される年金分割方法で、相手の了承なしに当然に分割請求できる年金分割制度です。

3号分割が適用されるのは、2008年4月以降の年金積立分のみで、分割割合は当然に0.5になり、割合を変更することはできません。

なお、第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者の方(20歳以上60歳未満)が対象となります。

(参考)

  • 第1号被保険者:自営業者や学生等
  • 第2号被保険者:厚生年金保険の加入者及び共済組合の加入者

 

2 合意分割の場合

合意分割とは、夫婦が合意によって行う年金分割です。2007年4月から導入されている制度で、当事者同士で合意できない場合には家庭裁判所に調停や審判を申し立てることにより、年金分割することもできます。合意分割する場合は、年金の分割割合は、0.5を上限に当事者が自分達で決めることができます。

年金分割は、離婚後の高齢者の生活を保障するための制度になりますので、按分割合については原則0.5とすべきと考えられており、協議が整わず家庭裁判所で調停、審判、判決によって決められる場合、ほとんどの事例で按分割合は上限の50%(0.5)になります。

ただし、あくまでも0.5を上限に定めるということになりますので、離婚における他の条件との兼ね合いで、当事者が0.5よりも低い割合で合意することは十分に可能です。

なお、そもそもなぜ上限が0.5なのかというと、0.5を超えて年金分割をすることは、社会保障制度に基づく年金を奪ってしまうことになり許されないという考えに基づいています。

たとえ、離婚に有責性があったとしても、賠償は慰謝料や財産分与で行われるべきということになります。

 

3 まとめ

年金分割は手続きによって受け取る金額が変わるため、年金分割制度を正しく理解しておかないと、大きな損失となる可能性があります。

そもそも年金分割制度とはどのような制度なのか、分割できる割合はどれくらいか、どのように手続きをすればよいのかを正確に理解しておく必要があります。

年金分割について弁護士をお探しであれば、水戸市、日立市、牛久市を中心に茨城県全域に対応している当事務所にぜひご相談ください。

当事務所には経験豊富な弁護士が多数在籍しており、迅速・丁寧な対応でご依頼者様に安心していただけるよう心がけています。些細なことでもご相談を承りますので、まずは一度ご連絡ください。

 

【コラム】年金分割等6 清算条項を定めたら

2018-07-19

1 清算条項とは               

離婚の際には、夫婦で話し合って決定した財産分与、慰謝料などの離婚に関する条件を整理してまとめ離婚協議書を作成します。後々のトラブルを避けるため、離婚時に協議した内容を証拠として書面に残しておくのです。

離婚協議書では夫婦の権利関係を確定させるために、「清算条項」を記載します。たとえば、「本件離婚に関して、以上をもってすべて解決したものとし、以後、財産分与、慰謝料など名目の如何を問わず互いに何らの財産上の請求をしない。」というものが清算条項になります。

この清算条項により権利関係が確定すると、その後請求し忘れていた金銭を思い出したとしても、相手方に請求をすることはできなくなります。

 

2 清算条項を定めたら

一度清算条項を定めたら、以降は年金分割の請求もすることができなくなるのでしょうか。

結論から言うと、離婚協議書に清算条項が入っているに過ぎない場合は、合意分割も3号分割も請求することができます。なぜなら、年金分割請求権は、権利の性質上、当事者が自由に処分できない公法上の権利(厚生労働大臣への請求権)なので、清算条項が対象としている債権債務には含まれないと考えられるからです。

なお、合意分割とは、夫婦が合意によって行うことが必要になる年金分割であり、3号分割とは、3号被保険者(専業主婦など)に適用される年金分割方法で、相手の了承なしに当然に分割請求できる年金分割です。

ただ、年金分割請求は、離婚をした日の翌日から2年以内にしなければならないので、離婚後に年金分割請求をする場合には期限にも留意する必要があります。

※関連条文

【厚生年金保険法 第78条の2】

第1号改定者(略)又は第2号改定者(略)は、離婚等(略)をした場合であつて、次の各号のいずれかに該当するときは、厚生労働大臣に対し、当該離婚等について対象期間(略)に係る被保険者期間の標準報酬(略)の改定又は決定を請求することができる。

 

3 まとめ

当事務所は水戸市、牛久市、日立市を中心に茨城県全域にお住まいの皆様から相談をお受けしています。

慰謝料、親権、養育費を含めた離婚問題から遺言・相続に関する問題、借金・損害賠償等金銭に関わる問題まで皆様の暮らしにまつわる法律相談に幅広く対応しております。

年金分割についても、知識と経験豊富な弁護士が丁寧にアドバイス致しますので、ぜひ一度当事務所にご連絡ください。

 

【コラム】年金分割等5 年金分割をしない合意をしてしまったら

2018-07-18

1 年金分割をしない合意をして離婚

離婚を急ぐあまり、離婚時には相手の条件をのんでしまった、ということは比較的よくあるのではないかと思いますが、その条件として年金分割をしないという内容があった場合、後から年金分割を請求することはできないのでしょうか。

年金分割は老後の生活資金を支えるものになるため、できれば請求できたほうが安心です。分割制度ごとにわけて見ていきましょう。

 

2 合意分割の場合

年金を合意分割する場合は、当事者同士で、どのような割合で按分するのか定めることになります(上限0.5)。

按分割合は、原則として当事者の合意により定めますが、どうしても合意ができない場合には、家庭裁判所に調停・審判の申立てをして按分割合を決めることになります。

離婚の際の条件として、『相手方が年金分割請求をしないなら離婚してもよい』、『相手方が年金分割請求をしないなら慰謝料/損害賠償を多めに払う』等の合意をすることがあります。

その場合、単に清算条項(当事者間に債権債務はないとする旨の条項)を入れただけであれば、年金分割請求権は公法上の請求権であるため、それだけで年金分割請求ができなくなるわけではありません。

ただし、「請求すべき按分割合に関する処分の審判もしくは調停の申立てをしない」という条項を入れた場合には、結局、当事者間(裁判所を通じても)で年金分割の按分割合を定めることができず合意分割はできなくなります。

 

3 3号分割の場合

3号分割の場合には、按分割合は0.5と決まっているため、当事者間で按分割合を合意することができません。

そのため、家庭裁判所への申立ても不要になり、たとえ離婚協議書等に家庭裁判所に申立てをしない旨の条項を入れたとしても、当事者の一方は年金分割請求をすることができます。

 

4 まとめ

年金分割については、そもそも年金自体の仕組みが複雑なため、年金の知識が少ない一般の方が対応するのはとても難しいといえます。

離婚を考えた場合には、まず離婚後の生活設計を考える必要があります。しかしながら離婚時の差し迫った事情により、不利な内容で離婚の合意をしてしまうこともあると思います。

離婚時の合意の内容に不安がある場合には、後で取り返しのつかないことになる前に弁護士に相談しましょう。

茨城県で離婚問題や年金分割について詳しい弁護士をお探しであれば、ぜひ当事務所にご相談ください。様々な分野に精通した経験豊富な弁護士が丁寧にサポート致します。

 

【コラム】年金分割等4 年金分割を留保して先に離婚をすることは可能か

2018-07-17

1 年金分割と離婚

年金分割とは、一定の条件を満たした場合、婚姻期間中の夫婦の厚生、又は、共済年金記録を、一方からの請求により分割することができる制度です。

分割の種類は、夫婦間の話し合いにより決定する合意分割と、専業主婦などの3号被保険者に適用される年金分割方法で、相手の了承なしに当然に分割請求できる3号分割があります。

離婚後、高齢者になってからの生活も考え、どのような場合にどんな方法での手続きが必要か等、しっかりとポイントを押さえ、適切なタイミングで年金分割請求をしていく必要があります。

 

2 離婚と同時に年金分割を行う場合

年金分割の請求は、離婚後(離婚の翌日)からしかできませんが、忘れずに適切な手続きを行うためには、事前の準備を行っておくと良いでしょう。具体的には、「年金分割のための情報提供通知書」の入手、按分割合の決定等をしておくと良いでしょう。

 

3 年金分割を留保して年金分割を行う場合

離婚時に年金分割の請求まで済ませてしまうことができれば良いのですが、様々な事情により、離婚のみ先に成立させ、後で年金分割の手続きをとることも可能です。

このような場合、離婚時には、年金分割請求をすること及び上限を0.5とした按分割合についてだけ合意しておくことも可能です。また、年金分割については別途協議の上定めるとの合意をすることも可能です。

なお、離婚協議書を作成した際、精算条項(当事者間に債権債務がない旨を確認する条項)を定めてしまった場合であっても、年金分割請求権は公法上の請求権であり、離婚をする当事者間の債権債務関係ではないため、年金分割事件の申立てや厚生労働大臣に対する請求である年金分割請求をすることは可能になります。

 

4 まとめ

離婚はこれまでの夫婦生活の清算ですが、新しい生活のスタートでもあります。年金分割も後々の生活を維持するめの大切な制度です。

お金の面での不安が少しでも解消できるよう当事務所の弁護士がサポート致します。当事務所に所属している弁護士は、様々な業種・業態の案件を取り扱っており、事務所として対応できる業種・業態、法律の範囲が広くなっております。

それぞれの弁護士が得意とする分野は異なっておりますので、様々な法律に対応することが可能です。離婚問題や年金分割に詳しい弁護士を探されている場合には、是非、当事務所へご連絡ください。

 

【コラム】年金分割等3 年金分割請求はいつまでにすることができるのか

2018-07-13

1 離婚における年金分割は、請求しないともらえない

離婚における年金分割とは、夫婦間の年金額を決められた割合により分割する制度です。

2007年から「合意分割制度」、2008年から「3号分割制度」が始まって10年以上経ちますので、かなり定着してきた制度ですが、詳しい手続きについて浸透しているかというとそうでもないようです。

分割について合意できたからといってもらえるものではなく、請求期間内に適切な手続きをとって初めてもらえるものになりますので注意が必要です。

 

2 離婚時の年金分割の手続きは、いつから可能?

年金分割の手続きは、離婚届けを提出した後でなければできません。とはいえ、スムースに手続きをするためには、事前に十分な準備をしておく必要があります。

事前準備としては、まず第一に額の確認をすることが考えられますが、50歳以上の場合は年金事務所で実際の額を確認することが可能です。

50歳未満の場合は、少し面倒ですが、ねんきん定期便等の数字から計算し、大体の金額を把握することが可能です。

次に、合意分割を行う場合には、離婚前から夫婦で割合について話し合っておく必要があります。

また分割の合意書を準備したり、戸籍謄本の準備をしたり、必要書類に漏れがないかどうか等も確認もしておきましょう。

 

3 離婚時の年金分割はいつまで可能?

離婚届を出した翌日から2年間、年金分割の請求をすることが出来ます。

当事者同士での話し合いがなかなか進まず、年金分割の請求期限が迫ったきた場合は、調停等の手続きを利用すれば、調停の成立翌日から1ヶ月が経過するまで、年金分割の期間が延期されます。

また、年金分割の按分割合を定めるにあたり、当事者が分割の対象となる期間やその期間における当事者それぞれの標準報酬月額・標準賞与額等の情報を正確に把握するために行う情報提供の請求も、年金分割請求と同様に、原則として、離婚が成立した日の翌日から起算して2年以内に行う必要があります。

 

4 まとめ

年金分割の制度は、離婚後の老後資金の不安を解消する一つの手段です。期間内に適切な手続きを済ませ、しっかり受け取れるようにしましょう。請求は離婚後にしかできませんが、準備は早い時期からすることが可能です。わからないこと、不安に思うことがあれば、早めに弁護士に相談しましょう。

茨城県という地域に密着したサービスを展開している当事務所には、経験豊富な弁護士が多数在籍しております。お困りのことがあればぜひ一度当事務所にご相談ください。

【コラム】年金分割等2 年金分割請求の手続きはどうすればよいか

2018-07-12

1 合意分割の手続き

(1)「年金分割のための情報提供」を受ける

合意分割をするためには、「年金分割のための情報提供請求書」に必要書類を添えて年金事務所に情報提供請求をし、「年金分割のための情報通知書」という書類を入手します。年金分割のための情報提供請求に必要な書類は、①年金手帳、国民年金手帳または基礎年金番号通知書②戸籍謄本です。

なお、離婚後に情報提供請求をする場合は、それぞれの現在の戸籍謄本及び離婚時の戸籍謄本が必要になります。

「年金分割のための情報提供請求書」を提出すると「年金分割のための情報通知書」が発行されます。通知書の発行は、早ければ1週間程度遅くとも1ヶ月以内には行われます。

 

(2)按分割合についての合意

情報通知書に記載されている「按分割合の範囲」で、年金記録を分割する割合(按分割合)の合意をします。なお、合意については、以下のいずれかの方法で行う必要があります。

① 裁判所の調停・審判 (訴訟の場合は、判決・和解)
② 公証人役場での公正証書作成
③ 公証人役場での私署証書認証
④ 合意書を夫婦2人が年金事務所に直接持参

 

(3)年金事務所での手続き

合意後は、「標準報酬改定請求書」に必要事項を記載し、必要書類を添付して提出します。期限は、離婚成立から2年以内です(相手が死亡すると死亡から1ヶ月)。

 

(4)改定の通知書受領

「標準報酬改定請求書」を提出して受理されると、「標準報酬改定通知書」が双方に届きます。既に年金受給中の場合は、改定請求の翌月分の年金から額が変更になります。

 

2 3号分割の手続き

(1)3号分割は合意が不要

3号分割は、合意が不要ですので、一人で手続きが可能です。また、割合は2分の1ずつに決まっており、夫婦間で按分割合を決めることはできません。

 

(2)3号分割の手続き

分割を請求する当事者が、離婚後に必要書類を揃えて年金事務所等へ出向き「年金分割の標準報酬改定請求」という手続きを行います。期限は、離婚成立から2年以内です(相手が死亡すると死亡から1ヶ月)。

 

3 まとめ

年金分割について弁護士をお探しであれば、水戸市、日立市、牛久市を中心に茨城県全域に対応している当事務所にぜひ一度ご相談ください。

弁護士にご依頼いただければ、代理人として相手とやり取りをすることも可能ですし、必要書類の準備や各種手続きも迅速に行うことが可能です。

一人での手続きに不安がある場合は、早めにご相談ください。経験豊富な弁護士がサポート致します。

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