質問
私の夫は、長年、家庭を顧みずに愛人と暮らして20年以上になります。
子どももいるので、なんとか我慢していくほかないと考え、これまでは何も言わないようにしてきていました。
ですが、夫が退職金で愛人にマンションを買ってやったと聞いて、これ以上は我慢できなくなりました。今から、その愛人に対して慰謝料を請求することはできるでしょうか。
回答
結論は、同棲関係をいつ知ったか、各不貞行為・損害をどのように捉えるか、婚姻関係が既に破綻していたか、時効の完成猶予・更新があるか等により異なります。『請求時から3年分のみ認められる』と一律に判断することはできません。まず、夫の不倫相手に対する慰謝料請求権は、原則として認められています。この点、最高裁昭和54年3月30日判決は、「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、右配偶者を誘惑などして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある」と判示し、実務は原則として肯定説をとっていると言えます。
次に問題となるのは、夫の不倫相手に対する慰謝料請求権の消滅時効の起算点です。
夫と愛人の不貞行為は、1回限りのものではありません。夫と愛人が同棲し、その同棲関係が20余年にわたっているというのですから、1回的な不法行為ではなく、不法行為そのものが継続的に行われ、損害も継続的に発生する「継続的不法行為」にあたります。
それでは、このような「継続的不法行為」の場合、いつの時点が消滅時効の起算点となるでしょうか。
この点、最高裁平成6年1月20日判決は、「夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。」と判示しました。
不貞行為の継続の場合、妻との別居、愛人との同棲、愛人と夫との間の子どもの誕生といったように、いわば新たな秩序が形成されています。一方で、妻は、夫の愛人との同棲関係を知ったり、愛人との間の子どもの認知の事実を知った時点で、愛人に対する慰謝料請求をすることが妨げられるわけでもありません。
不法行為による損害賠償請求権は、原則として損害及び加害者を知った時から3年、又は不法行為時から20年で時効により消滅します。判例の射程を踏まえ、各損害の起算点を個別に検討する必要があります。
ご質問のケースでは、現在も夫と愛人との同棲関係が続いているのですから、同棲が現在も続いている場合でも、請求できる範囲は、認識時期、行為の継続性、婚姻関係の状況、完成猶予・更新等を確認して個別に判断します。
その他の離婚問題コラムはこちらから
離婚問題について解説した動画を公開中!
離婚問題にお悩みの方はこちらの動画もご参照ください。
リーガルメディアTV|長瀬総合YouTubeチャンネル
初回無料|お問い合わせはお気軽に
